第1,018話 「叶わぬ恋に落ちて⑩」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売日が、
7月21日予定となりました!
各書店様で、予約開始されているようです!
書籍版をまだお読みではない方は、新刊が出るまで第1巻~3巻を宜しくお願い致します。
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
女神が施した、仕掛けと罠だらけの、危険な長い長い回廊を抜け……
今、ルウ達の目の前に広がっているのは……
これまで見た神殿の、一番大きな部屋よりも、更に広大な空間だ。
見渡しても、四方の壁が見えない……
見上げれば、天井さえも……
そしてリゼッタが、呪いの魔法により、守護者スフィンクスに化身させられ……
鎮座していた、石畳の清潔だった部屋とは著しく異なっている。
ねとついた粘着質の泥が堆積し、ただれような色をした岩があちこち、無造作に転がっているのだ。
全てが、猛毒と瘴気で満たされた、死の部屋と呼んで差し支えない。
そして、この部屋に……
怖ろしい異形は居た。
そう、誰もが知るヒュドラと呼ばれた巨大な怪物が。
鋼鉄の如く硬い、黒色の鱗に全身が覆われた胴体は、長さ20m、高さは10mはあるだろう。
その胴体からは、太く逞しい首が9つ生えていた。
……首はこれまた、同じ黒色の鱗に覆われた、蛇と言うよりも竜に似た頭部を持っている。
ルウが見ると、真ん中の首が飛び抜けて大きく5mは超えており、他の首の倍はある。
この首こそが英雄さえも殺せず、仕方なく岩を敷いて封じたとされる、不死の首なのだろう。
そして各々の首には、爬虫類独特の冷徹な目を持つ顔が付いていた。
更に顔の半分以上を支配するような大きな口があり、鋭い牙の間から、異様に長く真っ赤な舌がうねうねと踊っている。
ごはあああっ!
真ん中の首が、大きく息を吐いた後、耳をつんざくような声で咆哮した。
すると、他の首達も続いて、
かあああっ!
かあああっ!
かあああっ!
大きく開いた口から、まるで霧のような、黒色をした液体を大量に吐き散らした。
身体も毒、息も毒、体液も含め、全てが毒、これこそがヒュドラの武器なのである。
この毒は解毒が不可能と言われていた。
触るどころか、近付くだけで、大抵の者は倒れてしまうのだ。
ヒュドラは、ゆっくりと全ての首を動かし、ルウ達へ向けた……
そして爬虫類特有の無機質な視線も、一斉に注がれたのである。
『あ、あああ……わ、私達に気付いたようですよ、ルウ様!』
と、噛みながらエレナが言えば、
『あいつ、目が良いんですか? ルウ様』
と、尋ねるリゼッタ。
聞かれたルウは、自分の推測を教えてやる。
『いや、蛇の一族って、視力はそう良くない。多分あいつも、俺達の匂いと体温で、侵入者の存在を察知したんだ』
『え?』
匂いと体温と聞き、エレナは「ぞくぞく」と鳥肌が立った。
無数の蛇に、身体を嗅がれるような錯覚を感じたのだ。
片や、リゼッタは自分の腕に鼻をあてて、「くんくん」と匂いを嗅いでいた。
そして顔を上げると、
『じゃ、じゃあ! 私のせいだ! きっと臭いんですよ、私。数千年の間、ず~っと沐浴していないですから……うう』
と落ち込んでいた、その時。
ポンとリゼッタの頭に手が置かれる。
「さらっ」とした黒髪が僅かに揺れた……
リゼッタは吃驚して小さな悲鳴をあげる。
『あう?』
目を丸くしたリゼッタにルウは優しく微笑む。
『気にするな、リゼッタ。というか、お前からはとても良い香りがしているぞ』
『本当に? よ、良かったぁ!』
ホッとするリゼッタを見て、拗ねたのはエレナである。
小さな嫉妬心が芽生えていた。
『う~、ルウ様、私にもポンってして下さい』
『エレナ、了解だ!』
実はエレナ、ブランデル邸で何回も、頭をポンとして貰っていた。
「頭をポン」は……
元々、ルウがジョゼフィーヌにやったのがきっかけである。
しかしジゼルが追随し、今やルウの妻達は全員が「ポン!」して貰っている。
更にエレナも含め、使用人の女子までが恩恵に預かっているのだ。
ポン!
『うわう!』
エレナが満足そうに眼をつぶったのを確かめると、ルウは頷く。
『よし、じゃあ早速ヒュドラを排除しようか』
戦いの開始を告げたルウは、
ふわっ……と、飛び上がった
飛翔の魔法で……
エレナとリゼッタをそれぞれ腕に乗せたままで……
と、その時。
ぴいいいいん!
大気を裂くような異音がすると、ヒュドラとはまた違う、異質な気配が空間に現れた。
こちらも、ヒュドラに負けぬくらい底知れぬ闇の波動である。
ルウとヒュドラの間に、眩く輝く蒼い光球が出現し、徐々に人型をなりつつあったのだ。
これは……
現世と違う世界から、悪魔など異形が現れる際に良く使う、異界門である。
いつの間にか……
大広間には、荘厳な演奏が大音量で鳴り響いていた。
これはある大悪魔が現れる前兆、『見えない楽団』の演奏なのである
『ルウ様! あ、あれは!』
『あ、悪魔!?』
エレナとリゼッタが指をさした方向には、一見人間族と思しき男がひとり、宙に浮いていた。
色とりどりの豪奢な、まるで王族が着るような凝った趣きの衣装に、全身を包んだ優男が……
ルウは、その男に見覚えがある。
『火界王!』
『はい! ご無沙汰しております、ルウ様』
高貴なる4界王のひとり火界王は、ルウを見て深くお辞儀をすると、にっこり微笑んだのであった。
いつもお読み頂きありがとうございます!
東導の別作品もお願いします。
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※殺伐とした都会に疲れ、幼い頃に離れた故郷へ帰ろうとした青年ケンは謎の死を遂げる。15歳の少年として未知の異世界へ転生したケンは、出会った美しい少女達と辺境の田舎村で心の拠り所を探し続ける。
※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う、
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。
☆『真☆信長に学べ! 俺の異世界生き残りライフ』
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※歴史オタクの気弱な中二病少年が異世界転生して、信長に?
※長らくお待たせしました。
連載再開です。
活動報告でお伝えした通り、大幅加筆修正しまして、第1話から差し替えとなっております。
前作がベースとなってはいますが、内容もある程度変わっております。
申し訳ありませんが、ご了解下さい。
両作品とも、本日6月11日朝に『更新』予定です。
何卒宜しくお願い致します。




