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第1,012話 「叶わぬ恋に落ちて④」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売が決定致しました!

詳細は決まり次第お報せ致します。


書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 不死身の骸骨戦士スパルトイをあっさり退け……

 ルウと木霊エーコーのエレナ、ふたりが歩いて行くと、長い長い回廊に出た。


 目の前の回廊は、ただ長いだけではない……

 天井までは10mほどの高さがあるが、道幅はといえば左右2mほどしかなく極端に狭い……

 また四方は、強固な石壁となっていた。


 これだけ狭いと……

 何かあった時、対処する為、とっさの身動きが出来ないだろう。

 敵の襲撃は勿論、何か罠があったら、まともにダメージを喰らいかねない……


 多分、この回廊には侵入者を阻む仕掛けがある。

 たくさんの罠も……

 そう確信出来る。


 そう考えるエレナの心には、大きな不安が黒雲のように湧き上がった。

 ルウひとりならともかく、戦う力のない自分がいるせいで、ひどい足手まといになっていないかと危惧してしまうのだ。


『ど、どうします? ルウ様』


『…………』


 エレナが呼び掛けたが、ルウの返事はない。

 少し考えているようだ。


『…………』


 こうなると、エレナも無言となる。

 ルウの言葉を待つ為だ。


『よし!』


 だが、そんなに待つ事はなかった。

 ルウが短く声を発したのである。

 そして、


『エレナ』


『はい!』


『じっとして動かず、俺に身体を任せてくれ』


『はい~?』


 エレナは、全く話が見えない。

 驚いて、ただ声を出すような返事を戻してしまった。


 そんなエレナをルウは、


『良いか? じっとしていろよ』


 と念を押すように言い、「さっ」と抱きあげてしまった


「きゃ!」


 思わず肉声で、悲鳴をあげたエレナ。

 顔が、あっという間に火照るのが分かる。

 これは……これは……女子憧れのお姫様抱っこなのだから。


 エレナは、聞こえるくらい思いっきり息を吐くと……

 すかさず念話に切り替え、「一体どういう事なのか?」と、

 あるじへ向かい、問い掛ける。


『ル、ルウ様!』


 エレナが、ルウの名を呼ぶ……

 ただそれだけで、ルウは何を聞かれているのか、分かったようだ。


『残念ながら、俺はまだラミアの、彼女の魂の魔力波オーラを察知出来ていない』


『…………』


『だが……まずは、この回廊を、このまま抜けて行けと、教えてくれている』


『え? 誰が?』


 と、言い掛けて、エレナは言葉を呑み込んだ。


 ルウに教えたのが『誰』なのか、すぐに分かったのである。

 先程、ルウは火の精霊魔法を使った。

 という事は……この異界には、ルウに対し4大精霊の加護がある。

 いずれかの精霊が先回りしていて、ルウへ囁いたのだろう。


『エレナ、一応言っておこう。この回廊には、魔法の仕掛けや罠が鬼のようにあるんだと』


『え?』


『だから俺は魔法障壁を使う。そして浮遊の魔法も使う』


 エレナには……

 ルウの言う意味は、またすぐに分かった。

 魔法障壁を使うのは、ルウごとエレナを守る為。

 浮遊の魔法を使うのは、回廊の床に仕掛けられた、罠を反応させない為。


 だが……具体的に何をするのかは、明白である。

 エレナは、更に真っ赤になった。


『…………』 


『お前を必ず守る。だから、このまま行くぞ』


 そう、ルウはこのまま行くのだ。

 エレナを、絶対守る為に。

 しっかり抱いたままで。

 『お姫様抱っこ』をしたままで……


 エレナは、当然断らない。

 噛みながらも、大きく返事をする。


『は、はい!』


 このまま抱かれて……行く。

 叶わぬ恋をした時に……何度も、何度も夢見ていた……

 愛する相手に優しく抱かれたい! 守って貰いたい!

 その夢が……今、ついに実現する。


 ルウの法衣ローブをしっかり掴みながら、エレナは再び頷いたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 エレナはもう、夢見心地であった。

 ルウにしっかり『抱っこ』して貰いながら……

 「時間よ、止まれ!」と念じていた。


 そんな状態でいられたのは、ルウの魔法障壁が超が付くほど強力だったからだ。

 精霊が告げた通り……

 女神は、夥しい魔法の仕掛けや、罠を仕掛けていた。

 ルウが言った通り……

 罠の方は、主に床に仕掛けられていた為、殆どが役に立たなかった。


 何とか……スパルトイを退けた侵入者が……

 戦いに疲れ果てて動きが鈍い所を!

 という、意図なのであろう。


 だが、ルウ達には無力であった。

 罠は前述の通り、そして魔法の仕掛けによる攻撃も……

 ルウは魔法障壁は勿論、無効化まで使い、全て遮断してしまったのだ。


 でも、そんな事よりも……

 エレナは、ただただ幸せだった。

 この幸せが、永久に続いて欲しかった。


 しかし物事には始まりがあり、終わりがある。

 

 ……『夢が叶った時間』にも終わりが来た。

 ずっと浮いていたルウの足が、「とん」と神殿の床を踏みしめたのである。

 同時に、当然だが、ルウから到着を報せる言葉が掛けられる。


『さあ、着いたぞ』


『…………』


 しかし、エレナは目を閉じたまま、「ぎゅっ」とルウの法衣を掴んだままであった。

 

『よし、じゃあこのまま行こう』

 

 何故なのか、ルウは「降りるように」とは言わなかった。


『…………』


 エレナは返事をしない。

 否、出来なかったのだ……葛藤がエレナの心を満たしていたのである。

 「いけない! このままでは!」という心の声が叫んでいた。

 「お前は、目的をはき違えているのか!」と、責める声も聞こえて来る。


 この異界へ来たのは、あくまでも……

 女神に虐げられ、挙句の果てに永劫の時の中、幽閉されたラミアを救う為だ。


 その為に……

 ルウに危険を冒して貰い、出張っているのだ。

 

 このままでは……

 私が抱っこされたままでは、ルウ様が満足に戦えない……


 そう思うのだが……

 エレナの身体は、心に全く従わなかった。


 ルウは、そのまま「すたすた」歩いて行く。

 注意は、当然払っている。

 幸い、敵襲も罠もないようだ。


『む!』

『あ!』


 ふたりは、ほぼ同時に声を発した。


 通路の奥に広々とした空間が広がっている。

 またも、大きな『広間』があるらしい。

 神殿を造った女神には、『癖』があるのだろう。 

 多分、次の広間にも『守護者ガーディアン』が配置されている筈だ。


『…………』


 立ち止まったルウは、またも考えているようである。

 エレナは、さすがに目を開け、ルウに問う。


『ルウ様、このままじゃあ、ご迷惑です……私……降ります』


『……いや、構わない。このまま行こう』


『え?』


 守護者が居れば、間違いなく戦いになるというのに……

 驚くエレナを、相変わらず抱っこしたまま、ルウは進んで行く。

 そしてふたりは、とうとう大広間へ到着した。


 そしてやはりというか、大広間の奥には、巨大な守護者が待っていた……


「この! 愚か者どもが!」

 

 守護者は……

 エレナを抱いたルウを鋭く一瞥し、吠えるような大声で叫んだのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!

東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』

新パート『アンテナショップとお祭り編』連載中!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※殺伐とした都会に疲れ、幼い頃に離れた故郷へ帰ろうとした青年ケンは謎の死を遂げる。15歳の少年として未知の異世界へ転生したケンは、出会った美しい少女達と辺境の田舎村で心の拠り所を探し続ける。


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』


※最強の隠れ勇者と、呪われたダークエルフの姫の『恋と冒険の物語』です。


https://ncode.syosetu.com/n2876dv/


両作品とも、本日5月21日朝に『更新』予定です。

何卒宜しくお願い致します。

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