表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1009/1391

第1,009話 「叶わぬ恋に落ちて①」

愛読者の皆様!


『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売が決定致しました!

詳細は決まり次第お報せ致します。


書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。

皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。

※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。

 週末……

 

 ルウは今、広々とした大空を凄まじい速度で飛んでいた。

 遥か南の地を目指して……


 まもなく、日付が金曜日から土曜日に変わる深夜……

 上空は、今にも降るような星がいっぱいである……


 傍らには、小柄な女性がひとり居た。

 風になびく、栗色の美しい髪は肩まで伸び、鳶色の綺麗な瞳がキラキラと光っている。

 ルウからしっかり手を繋がれ、とても嬉しそうな笑顔を見せていた。

 現在はブランデル邸の使用人を務める南の国の妖精(ニンフ)木霊(エーコー)の……エレナである。


 かつてエレナは、南の大神の妻である、『貴婦人』という名の女神によって、悲惨にも自身の声を奪われた上、異界に幽閉されてしまった。

 「喋って、妻を引き留めておけ」という、大神から命令された言い付けを、素直に守ったが為に……

 『夫の浮気』を幇助したという、とんでもない言い掛かりを、女神からつけられて……


 幽閉されたばかりか、恋にも破れ、気が遠くなるような永い時を過ごしていた孤独なエレナを……

 ロドニアへの旅の途中、ルウは救い出したのだ。

 ※第577~第589話参照


 その時、エレナは誓った。

 自分と同じ境遇に陥った、不幸な者達をひとりでも多く救おうと。

 

 だが南の国の妖精(ニンフ)の彼女には、戦う力がない。

 単独では、南の神の強大な呪いには対抗出来ない。

 その為、ルウへ助力を懇願し、快諾して貰った。


 今夜は、フラン達に了解を貰い、ルウと『ふたりきり』である……

 いつもは影のようになって同行するモーラルも、エレナの気持ちを汲んで不在である。

 尤も、いつでも出張れるよう、屋敷にスタンバイはしているが……


 ヴァレンタイン王国を出て、もうどれくらいの距離を飛んだだろうか?

 今ふたりは、エレナの故郷である、南の国へ向かっている。

 まだまだ、目的地は先だ。


 しかし、何故飛翔魔法なのか?

 王国から、南の国へ行くには、時間が掛かり過ぎる筈だ。


 実は……

 「途中までルウと飛びたい」と、エレナがせがんだのである。


 そんなわけで、ルウとエレナは飛翔しながら、念話で話をしていた。


『悪かったな、エレナ。いろいろあって、約束を果たすのが遅くなった。今夜は第一歩だ』


 笑顔を見せるルウに対し、エレナは申し訳なさそうな顔をする。


『いえ! とんでもありません。お忙しい中、ルウ様にも奥様達にも無理をお願いして……』


『いやいや、それより、エレナ、危険だぞ。来るのは俺ひとりで良かったのに』


 ルウは、エレナを気遣っていた。

 

 何故なら、エレナを救い出した時と、同様の可能性が高い。

 滅んだ女神の残した、怨念ともいえる魂の残滓が存在する確率が高く、相当な危険を伴うからだ。


『いえ、この件をお願いした時から……決めています。もしルウ様に何かあれば奥様達に顔向け出来ません。このエレナ、微力なれど、命を懸けて盾になるつもりです』


 エレナの覚悟は、生半可ではない。

 万が一、ルウに危険が及ぶのであれば、自分が犠牲になっても当然だと考えているのだ。


 しかしルウは、首を振る。


『おいおい、お前の気持ちは凄く嬉しいけど……長い間、異界に閉じ込められて、ようやく解放されたんだ。そんな無茶はするな』

 

 逆にルウから気遣われ、エレナは驚く。


『え?』


『お前には、今度こそ幸せに暮らして欲しいんだ。わざわざ危険を冒す事はない』


『…………』


『俺は大丈夫だ。だから次回以降は、場所だけ教えてくれれば良い』


『…………』


『ん? どうした?』 


『実は今……凄く嬉しいんです……手、繋いでるし』


『手を繋ぐのが?』


『だって、だって! これってまるで、デートみたいじゃないですかぁ!』


『…………』


『私! き、聞きましたよっ、フランシスカ奥様に! ルウ様が、初めて助けて差し上げた後に、一緒に空を飛んだって!』


『ははは、そうだったな』


『私……分かるんです! フランシスカ奥様のお気持ちが!』


『そうか……』


『はい! 危ない所を助けて貰って! どんなに! どんなに! 嬉しかった事か』


『…………』


『私も同じです! ルウ様に、皆様に助けて頂いた時、本当に嬉しかった』


 ルウは慈愛を籠めた表情で、黙ったまま、エレナの手を「きゅっ」と握った。


 エレナは……自分を助けてくれた、優しく強い男と恋をしたいのだ。

 出来るだけ、ふたりきりで、一緒に居たいのだ。

 再び彼女が落ちた、『絶対に叶わぬ恋』と知りながら……


 おうむ返しの声のみで存在する事を、相手に気味悪がられながら……

 「自分の美しさだけしか愛せない!」という少年ナルキッソスを、エレナは一途に恋した……

 

 だが……

 ナルキッソスの呆気ない死により、想いが無残に散ったエレナ。

 彼女の切なさが、孤独がルウには、しっかり伝わっていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 1時間後……


 ここは一面見渡す限りの、砂、砂、砂……いわゆる砂漠である。

 当然人家も、灯りもない場所の筈だ。


 しかし……

 「ぽうっ」と淡い灯りがゆっくりと移動していた。

 ルウとエレナである。


 まともに飛翔しても時間が相当かかってしまう。

 その為に途中から、ルウが転移魔法を使い、この砂漠まで一気に跳んだのだ……


 ふたりとも夜目がきくから、本当は灯りなど不要なのだが……

 エレナの気持ちを汲み、ルウが魔法灯を点けたのである。


『ロマンチックですねぇ』


『そうだな……』


 しかしルウとエレナは、デートをする為に、わざわざこの砂漠へ来たのではない。

 本来の目的、ゆえである。


『そろそろか?』


『はい! もうそろそろです!』


 現世の、この砂漠のこの時間に、ある異界が接するタイミングがある。

 ルウ達の目的地は……その異界なのである。


『……ここです、ルウ様』


『了解!』


 エレナが指示した場所に立ち止まると……

 ルウは、指を「パチン」と鳴らしたのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます!

東導の別作品もお願いします。


☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』

新パート『アンテナショップとお祭り編』連載中!


https://ncode.syosetu.com/n4411ea/


※殺伐とした都会に疲れ、幼い頃に離れた故郷へ帰ろうとした青年ケンは謎の死を遂げる。15歳の少年として未知の異世界へ転生したケンは、出会った美しい少女達と辺境の田舎村で心の拠り所を探し続ける。


※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う

ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。


☆『隠れ勇者と押しかけエルフ』

 連載再開!

※最強の隠れ勇者と呪われたダークエルフの姫の『恋と冒険の物語』です。


https://ncode.syosetu.com/n2876dv/


両作品とも本日5月11日朝更新予定です。

何卒宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ