第1,007話 「マノンの超不機嫌③」
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詳細は決まり次第お報せ致します。
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ルウの担当する専門科目、魔道具研究B組の授業が続いている。
生徒各自の、進捗と効率を考えたルウの方針で……
A、B、Cの各班に分かれた生徒達はそれぞれの課題に取り掛かる。
B班は鑑定魔法の習得の訓練で魔法式の詠唱中心、C班は呼吸法など基礎を徹底的に反復するのだ。
そしてA班は、鑑定魔法を習得済みの者達である。
既に、魔法鑑定士の資格保持者が半分以上を占めていた。
中でも、飛びぬけた成績と言えるのは、ランクBの資格を持つマノン・カルリエである。
ランクBといえば、副担当のアドリーヌと同じ等級であり、違うのは経験だけといえよう。
現在……
A班の生徒達は、更にいくつかのグループに分かれていた。
ルウから、特にそう指示されたわけではない。
単に、それぞれ仲良しグループというだけだ。
……という事で、マノンの『仲良しグループ』には、オレリー、ジョゼフィーヌ、リーリャの3人が加わった都合4人の集団であった。
今回、生徒達がルウから与えられた課題は、魔法鑑定士として『自分の得意分野』を決める事……
そしてお互いの情報を交換する事である。
いきなり「得意分野を決めろ」と言っても……
生徒達は、魔法の経験も、商品知識も浅い。
自身がどのような商品を中心に、どう鑑定して良いのか、決めかねている者が殆どなのだ。
かと言って、教師から『強制』するのも宜しくはない。
そこでルウは生徒達で話し合う事を勧めた。
マノンのように「既に決めている」者と情報を交換し、共有する事で、自分の道が見える場合があるからだ。
ルウの意図を理解しているのか、それとも性格からなのか……
やはり、一番最初に話し始めるのはマノンだ。
「皆さん、以前にお話したかもしれませんが、私の好きな品物は宝石なのです」
マノンの好きな品物は、宝石……
すかさず、オレリーが質問する。
何故、マノンが宝石を好きなのか、根本的な部分を知りたいと思ったらしい。
「宜しければ、理由を教えて下さいますか、マノンさん」
オレリーの言葉を聞いたマノンは、少しだけ眉間に皺を寄せた。
そんな質問は、「意外だ」という表情である。
「理由? そんなの言わなくても分かりませんか、オレリーさん」
まるで「常識だ!」というように、マノンはきっぱり質問で返した。
「え?」
驚くオレリーを見たマノンは「ほう」と息を吐いた。
「と……言いたいところですが、私の好敵手であるオレリーさん達ならば、特別に教えてさしあげましょう」
どうやら……マノンは理由を教えてくれるようだ。
オレリーは、「ホッ」としてこれまた息を吐いた。
別にへりくだる必要はないのだが、オレリーは元々腰が低い。
「お、お願いします」
まるで師に教えを乞うオレリーの態度に、マノンは満足したようだ。
「分かりました。理由はいくつかあります」
「いくつか?」
「はい! 最大の理由は女子だからです」
「え? 女子……だから?」
女子……だから?
簡単過ぎる答えを聞き、戸惑うオレリーへ、マノンは首を傾げる。
「はぁ? オレリーさん……何を、不思議そうな顔をされているのです?」
「え?」
「全然変じゃありませんわ。貴女も含め、私達、女子の中で宝石が嫌いな人など居るのですか?」
宝石が嫌いな女子……
確かにブランデルの屋敷でも、学園にも見当たらない……
オレリーは納得して、頷く。
「………まあ、確かに」
「そうでしょう? 恋と宝石とお菓子は私達には絶対の必需品なのですよ」
「…………」
何だか、凄い理屈になって来たが、反論しても無駄のような気がして……
オレリーは、敢えて黙っていた。
マノンは、基本的に『せっかち』でもある。
無言のオレリーが、完全に同意したと見て、話を進めて行く。
「ですわね。じゃあ、次! 宝石は美しく神秘的です」
「美しく神秘的……それも確かに納得ですわ」
「ええ、リーリャも完全に同意します」
今度はジョゼフィーヌとリーリャが大きく頷いた。
マノンも満足げな笑みを浮かべ、更に理由を上げる。
「次です! 宝石は、魔法使いと相性が良い品物だからですわ」
「相性………それも、確かに……ですね」
古代から、宝石と魔法使いの関係は深く、数多の物語に登場する。
「マノンが宝石を好きな理由は、こんなところだろうか?」
そろそろ終わりかなと、オレリー達は思ったが……
だが……
マノンの話はまだまだ続いている。
「次! これは現実的な話です」
「げ、現実的?」
「そうです! 皆さんはもう魔法鑑定士ですから、当然ご存知でしょうが、鑑定は希少価値がある物、価値が高い物に比例して、作業料金も高くなります。宝石もピンからキリまでありますが、総じて値段が高めですから、宝石の鑑定中心に仕事をすれば、効率的に高い報酬を得る事が出来るのです」
何という事だろう。
貴族令嬢のマノンは、鑑定で得る、現実的な収入の面までも考えていた。
オレリーは、さすがに驚いてしまったのである。




