第1,004話 「ステファニーの独立宣言③」
愛読者の皆様!
『魔法女子学園の助っ人教師』第4巻の発売が決定致しました!
詳細は決まり次第お報せ致します。
書籍版をまだお読みではない方は、第1巻~3巻を宜しくお願い致します。
皆様が応援して下されば、更にまた『次』へと進む事が出来ます。
※店頭にない場合は恐縮ですが、書店様にお問合せ下さい。
「え? わ、私が学生寮にっ!?」
なんやかんや紆余曲折あって、ようやく聞けたルウのアドバイスは……
ステファニーにとっては、全くの『予想外』であった。
「ああ、お前にとっては、いろいろプラスになると思う」
「私が学生寮に入る事がプラスに……なりますか?」
ステファニーは、目を丸くし、口をポカンと開けてしまった。
全然、ピンと来ない……
魔法女子学園の『学生寮』など、今迄に縁もゆかりもないのだから。
そもそも、どんな人達が、住んでいるかも知らない。
唯一知っているのは、あの『鬼女子』だけであった。
……先日のオープンキャンパスの際に、妹のアニエスと一晩だけ泊まった。
その時に、初めて足を踏み入れたのである。
確か、いかにもうるさそうな、寮長のおばさんが居た……
名前は「ちらっ」と聞いたけど、どうでも良かったから、もうとっくに忘れてしまった。
そしてあの超怖そうな学生寮長シモーヌ・カンテへ恐る恐る挨拶をしたのは覚えていた。
学園内で恐怖の『鬼女子』と渾名されるシモーヌを見た瞬間、
ああ苦手だぁ! と感じ、アニエスと共にずっと与えられた部屋へ籠っていた。
『あんな場所』が……この私、ステファニー・ブレヴァルの役に立つのだろうか?
そんな疑問が浮かんで来る。
首を傾げ、迷うステファニーに対し、ルウが微笑む。
「もしピンと来ないのなら、俺から具体的にあげようか、理由を」
ルウ先生から?
具体的な理由を?
それ聞きたいっ!
教えてっ!
教えてっ!
ルウの考えが全く見えないステファニーは、飛びつかんばかりにせがむ。
実際、またも思いっきり身を乗り出していた。
「は、はいっ! お願いしますっ」
「じゃあ、言うぞ。まずはお前が勉強する環境の変化だ。昼と夜の時間が有効に使える、学園の施設も図書館を含めて大いに利用しやすくなる。寮へ入れば、利便性が抜群に向上するって事だな」
「た、確かに!」
言われてみれば……頷ける。
今朝は、無理やり早起きして登校した。
ルウの授業以外は眠くて仕方がなかった。
マノンの意見に賛同して、オレリー達と朝の打合せをしたいからだが、寮から行けばもっと寝ていられるい筈だ。
「次に人間関係だ」
「人間関係?」
こちらも、最初はピンと来ない。
ブレヴァル家の持つ人脈だけで、充分ではないかと思うが……
しかしルウは、ステファニーの考えを見抜いたようにゆっくりと首を振る。
「怒らないで聞いて欲しいが……今のお前は、学園で広い交友関係を持っているとはいえない。2年B組の級友とマノン、ポレット、そしてオレリー達を含めた、俺の嫁くらいだ」
言われてみれば……これも納得だ。
学園内だけでいえば……ブレヴァル家の人脈は万能ではない。
「いえ、怒ったりなんかしません。それも……確かに納得ですから」
「あと……これも言いにくいし、お前が育って来た環境を考えれば仕方がないと言えるが……」
「い、いえ、仰って下さい。ぜひルウ先生のアドバイスをっ!」
「分かった。ならば冷静に聞いて欲しい。お前は、考え方も価値観も含め、ブレヴァルの家に頼り過ぎている。だから暫くは実家と離れて暮らしてみたら良いと思ったんだ」
「実家と離れて……」
「ああ、学生寮は完全な他人の家のメシとまで行かない、だが、友人とはいえ全くの他人に囲まれた生活だ」
「成る程……」
ルウの言う事は、いちいち納得出来る事ばかりだ。
ステファニーはもう、頷くばかりであった。
更にルウは、もっと深い部分まで考えていた。
それは、
「見知らぬ学園の先輩、同輩、後輩に囲まれて暮らせば、独立心も刺激され、お前は逞しくなれる。加えて、アニエスに対しても堂々と振舞える」
「ア、アニエス?」
いきなり妹の名までが出て……
ステファニーは驚いた。
学生寮に入る事が、あの『妹』対策になるとは……
そんなステファニーの疑問にも、ルウは答えてくれた。
「ああ、あの子も普段はあんな物言いだが、姉のお前を凄く頼っている。少しくらい寂しがらせてやれ。離れて暮らせば、お前のありがたみが良く分かる筈だ」
「私の……ありがたみ……」
「まあ、ここですぐに決めなくても良い。枢機卿とお父上に相談すると良い。俺からと言えばお祖父様は多分OKしてくれる。お父上には、俺じゃなく理事長が薦めてくれたと言えば良いさ」
「あ、ああ……そこまで……ルウ先生」
ステファニーは絶句してしまった。
ルウはやはり自分の事をしっかり考えてくれていた。
言葉に出来ない、大きな喜びが込み上げて来る。
「先生! 私、入寮を本気で考えてみますっ」
「ああ、お前も知っていると思うが、一応シモーヌにも話を通してある。力になってくれる筈だ」
「え? あの鬼女子……じゃない! シ、シモーヌ先輩に?」
「おお、もしかしたら入寮するかも、という感じで伝えてある。見かけは怖いが、懐に飛び込めば優しい甘党の先輩だ」
え?
あの怖そうな、鬼女子が優しい?
シモーヌ先輩が甘党!?
に、似合わないっ!
ステファニーは超が付くぐらい怖そうな3年生の先輩と、甘いものとはイメージが合わなかったが……
ルウの言う事である。
多分、間違いはないだろう。
「うん! もし入寮の日が決まれば、その日こそ、お前が家の呪縛から解放され、心身共、独立する日になるのかもしれないな」
「私が……独立、する……は、はいっ! そうですね! そうかもしれませんっ! すぐお祖父様とお父様に相談しますっ!」
ルウの『本題』が自分の期待通りではなく、落ち込んでいたステファニーは……
もうすっかり立ち直り、晴れやかな笑顔を浮かべていたのであった。
いつもお読み頂きありがとうございます!
東導の別作品もお願いします。
新作も投下しました!
※新作です!
☆『超イケメン魔王と相討ちになった、おっさん勇者は天界で二度目の転生を果たす!』
https://ncode.syosetu.com/n8164er/
本日4月23日朝、更新予定です。
一気に読めます《プロローグ&21話です》
不器用社畜⇒最強勇者⇒モテ神様? おっさんの華麗なる転職!
社畜だった41歳の『おっさんリーマン』が異世界で勇者になり、更に天界で神様になってしまうお話です。
※こちらは新パートのプロット考案中です。
☆『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』連載中!
※只今、新パートプロット考案中です。書き上げ次第、更新する予定です。
https://ncode.syosetu.com/n4411ea/
※『魔法女子学園の助っ人教師』とは微妙に違う
ヴァレンタイン王国における、のんびりスローライフな田舎ワールドです。




