第1,001話 「感謝します!」
愛読者の皆様!
1,000話達成の際、お祝いや励ましのメッセージを多々頂き、誠にありがとうございました。
深く深く、感謝致します。
これからも頑張って、書いて行きます。
WEB版、書籍版共々、お引き立てを、何卒宜しくお願い致します。
A班の指導を副担当のカサンドラに任せ、ルウが今度はB班へ……
といっても、B班は、たったふたりだけなのではあるが……
ルウが近付くのに気付き、そのふたりの生徒エステル・ルジュヌとルイーズ・ベルチェが、大きく手を振っている。
更に大きく手を振って応えたルウは、ダッシュで一目散に、ふたりの下へ駆け寄った。
息も切らさず、到着したルウに驚きながらも、エステルとルイーズは労わってくれる。
「あはは、忙しくて大変ですね。ルウ先生」
「ほんと、ほんと」
「いやいや、こんなの大した事はない。それよりお前達、準備はOKか?」
「OKでっす」
「バッチリですよ」
エステルとルイーズの目の前、闘技場の芝生の上には、『仮初の人型』が置かれていた。
仮初の人型は……一見、ただの人形である。
しかし魔法女子学園の授業で使うくらいであるから、当然ただの人形などではない。
召喚魔法で呼び出すうち、ごく稀れに出現する不定形の正体不明な人外アンノウン。
その人外、アンノウンを憑依させて動かす、一風変わった魔道具なのである。
エステルとルイーズが所有し、使用する仮初の人型は、ルウが普段使うような木製且つ地味なデザインではない。
何と!
可愛い動物のぬいぐるみで、エステルが狐、ルイーズが兎なのである。
先日いくつかの商会が、学園購買部の要請で参加した『緊急出張販売』にて購入したものであり、エステル達によれば『これ』が今風だという。
ルウを待っていた、エステルとルイーズの表情は明るい。
アンノウンを使った、召喚魔法の習得が順調に行っているのは勿論、公私とも生活が充実しているからだ。
エステルとルイーズは夏季休暇前に、学生寮に入った。
ふたりとも、魔法の勉強に集中するのが第一の目的ではあったが、他にもいろいろ理由があった。
貴族令嬢のエステルには、将来大きな夢がある。
エステルは幼い頃、ルジュヌ家の管理地で災害に困っていた人々を目の当たりにし、以降助けたいと一心に願っていた。
そのうちにエステルは、召喚士が魔法で使役する古代魔法帝国の遺物、巨人の存在を知る。
巨人を使役し、土木工事を行うのが工務省の管轄だと判明した時……
エステルの将来の目標も決まったのだ。
プライベートの『ごたごた』もあって、勉強するのに難儀していたエステルは、ルウとフランの勧めで学生寮へ入ったのだ。
一方、ルイーズはそこまで将来に明確なビジョンがあったわけではない。
ルイーズは、王都の大きな商家ドルチェ家のひとり娘だ。
幼い頃から、いずれは婿を取って家を継ぐようにと言われていた。
毎日、毎週、毎月、毎年……絶え間なく言われて、ルイーズはだんだん嫌気がさしてしまった。
そこで同じ境遇だった商家の娘アンナ・ブシェと意気投合し、絶対に親の言いなりにならないと決意。
何でもいいから、何か将来を託せる夢を探していたのだ。
親友アンナが実家の事件に巻き込まれ、一時ルイーズと疎遠になったせいもあり、アンノウンを召喚した同士、エステルとルイーズは急速に仲良くなったのである。
閑話休題。
時間も押している。
ルウが訓練の開始を促す。
「よっし、じゃあエステルからだ……召喚から、起動までをやってみてくれ」
「はい!」
事前の基礎訓練で、エステルとルイーズの体内魔力は充分に高まっており、精神も集中且つ安定していた。
可愛い唇が柔らかく動くと、エステルの口から、召喚魔法の魔法式が滑らかに唱えられたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから……
エステルとルイーズはスムーズに、アンノウンを召喚し、仮初の人型に憑依させた。
続けて行った、起動と行動指示も問題なかった。
更にもう一回起動と行動指示を行わせ、成功すると、ルウは両手を合わせた。
はっきりとした、『謝罪のポーズ』であった。
不思議に思ったエステルが聞けば、この後は、急ぎC班への授業を行うという。
顔を見合わせたエステルとルイーズは大きく頷く。
了解済みという雰囲気だ。
「さっきも言いましたけど、ルウ先生は、やっぱり忙しくて大変ですね」
「最近は、超が付きますよね、忙しさに」
「ははは、貧乏暇なしさ」
「何ですか、それ」
「うふふふ」
ほんの一瞬ともいえる、ルウの授業ではあるが、エステル達に不満の色は見えない。
「ルウ先生、本当にありがとうございます」
「ありがとうございますっ」
「おいおい、どうした……後が怖いな」
「うふふ、安心して下さい。金糸雀の焼き菓子を奢って下さいなんて言いませんから」
「エステルの言う通りですよっ」
「あはは、そうか」
ルウは嬉しくなる。
エステルもルイーズもルウが春に赴任した時より、ずっと明るく朗らかになったからだ。
何故ならば……
「それより、お礼を言いたいんです! ルウ先生とフランシスカ先生に勧められて、寮に入ったの、大成功でした」
「本当にそうでっす」
「おお、そうか! 寮生活は楽しいか?」
「はい! 通学や勉強が便利になったのは勿論ですし」
「親の干渉がなくなったのも嬉しいんですけど……」
エステルとルイーズは口々に言う。
ルウに時間がないのは分かる。
だが、彼女達にはまだまだ話したい事、伝えたい事があるらしい。
「私達、寮でいろいろな人と知り合えて嬉しいんです」
「ええ、世界が広がりましたっ」
「おお、そうか? シモーヌとは上手くやっているか?」
「はい! 鬼女子……じゃあなかった。シモーヌ先輩には、私達、凄~く可愛がって貰っています」
「さっきエステルが、ルウ先生にたかろうとした金糸雀のお菓子も、しょっちゅうご馳走になっています」
「え? こらぁ! もうルイーズったら。私、ルウ先生に、たかろうとなんてしていないわ」
「あはは、冗談、ほんの冗談よぉ」
仲良さそうにじゃれ合う、エステル達に聞いてみれば……
今迄とは全く違う交流が寮を通じてあるという。
結果、ふたりはシモーヌを始めとした学園内の先輩、そして同輩、後輩達とも知り合い、公私に渡って助け合っているとの事である。
「アンノウンを召喚した、3年生の先輩とも知り合えて、いろいろ貴重なアドバイスを貰っています」
「他の先輩方にも、たくさん悩みを聞いて貰っています。仲が良くなった、違うクラスの2年生とも励まし合うし、1年生の後輩はしっかり面倒見てますよぉ」
「おお、良かった! これからも頑張れよ」
「はい!」
ここで、気を利かせてくれたのが、ルイーズである。
「先生、そろそろC班の人達が、しびれを切らして待っていますよ」
「ありがとう! じゃあ俺は行くけど、訓練を続けていてくれよ」
手を振って、移動しようとしたルウへ、
「ルウ先生! すっごく感謝しますっ!」
「本当に感謝ですよっ、ありがとうございますっ!」
嬉しそうなエステルとルイーズの、晴れやかな笑顔と声が、ルウにたっぷりと送られたのであった。
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