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Sweet voice 番外編  作者: 雛苺
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My sweet honey

ノエルさん視点のお話。

オレがそのコを初めて見かけたのは、自分が社長兼デサイナーを勤めるファッションブランド『Honey sweet』の新しい店舗を見に行ったときのこと。


店舗が入っているファッションビルに着いたのが昼時だったため、先に食事を済ませ、店に向かう。


店に着いたとき、買い物を済ませたそのコが丁度店から出て来るところだった。


そのコを見た瞬間、オレは。



恋に、落ちた。



ふわふわの栗色の髪の毛、くりっとした可愛い目、すっと筋の通った形のいい鼻、ぷっくりした唇。


可愛い…可愛すぎる。


すれ違った瞬間、甘い香りがした。彼女の付けている香水だろうか。


ハチミツみたいな、甘い香り。


彼女の名前が知りたくて、急いで店のスタッフに訊いた。


「今、買い物してったお客様の名前、なんていうの?!」


「あ、社長。お疲れさまです~。今のお客様ですか?今のお客様は……」


そう言って、スタッフが顧客名簿を見る。


「桜庭様です。社長がお客様の名前知りたがるなんて、めずらしいですねぇ」


「だってあんな可愛い女のコだし、名前知りたくなるよ」


桜庭さん、か…。


「あ、下の名前は?」


「穂乃花様です」


穂乃花ちゃん、穂乃花ちゃん、穂乃花ちゃん。


よし、覚えた。


「あのコ、よくウチの店来るの?」


「そうですねぇ…。週に一、二回は来てると思いますよ。毎回お買い上げ、っていうわけではないですが、良いお客様です」


あんな可愛いコが来てるなら、もっと前から店を見に来るんだった…。


今更後悔してもしかたないけど、早くに知り合っていれば、今頃は仲良くなってたかもしれない。


「彼氏とか、いるのかな……」


いたらいたでショックだけど。


「どうでしょう?そんなに気になるんだったら、今度さりげなく訊いてみましょうか?」


「いや、いい」


訊くとしたら、人づてにではなく自分で訊くし。


「彼氏、いないといいですねぇ」


ニヤニヤしながら他のスタッフが言う。


「っ…うるさいっ。ほら、ちゃんと仕事するっ」


「「はーいっ」」




それからオレは、売上げや在庫のチェックを済ませ、スタッフにいろいろと指示をし、店を後にした。




◆◇◆◇◆◇




初めて穂乃花ちゃんを見かけた次の週。


オレは、また彼女が来るのではないかと思い、例の店舗に来た。


「……社長、そんなところに隠れてないで、表に出て話しかければいいじゃないですか…」


思った通り彼女は来て、今はスタッフの一人と仲良く話している。そしてオレは、レジの近くにあるバックヤードから、その様子を見た。


「でもまだちょっと恥ずかしいし……」


「何恥ずかしがっているんですか、社長。せっかく桜庭様が来てるのに、話しかけなきゃ来た意味ないですよ?」


それはそうなんだけど。


今オレが出ていけば、スタッフはオレのことを社長と紹介するだろう。でもオレは、彼女に普通のオトコとして接したい。


仲良くなって付き合うことになれば、Honey sweetの社長だってことを話すつもりだけどね。



あ、穂乃花ちゃんが帰っていく。



「桜庭様、帰っちゃいましたよ」


「穂乃花ちゃん、今日も可愛かったなぁ…。ウチの服がよく似合う」


「そうですねぇ…って、社長。結局話しかけませんでしたね」


「まぁ、そのうち、ね」


焦って失敗したくないし。


「そんな悠長なこと言って、他の人に取られても知りませんよ」


「そのときは、振り向いてもらえるように頑張るさ」


まぁ、そんな心配が杞憂に終わるのを、このときのオレはまだ知らない。


店に来る穂乃花ちゃんをバックヤードから見るために、時々店に行くようになったら、スタッフに“ストーカー”ってからかわれた。


自分でも、ちょっとそれっぽいかなとは思ったけど、少しでもいいから、穂乃花ちゃんを見ていたい。


見ていて思ったのは、穂乃花ちゃんが真面目そうないいコだってこと。言葉遣いもちゃんとしてるし。


語尾を伸ばして話す女のコって苦手なんだよね。


あぁ、穂乃花ちゃんが彼女になってくれないかな…。



そんなオレに、チャンスが訪れる。


穂乃花ちゃんがいつもの様に、ウチの店に来た帰り、外では急に土砂降りの雨が降り出した。


彼女は傘を持っていなかったはずだから、きっと今はまだエントランスにいるだろう。そして多分、止むまでこのビルにいるはず。


ちょうどランチタイムだから、彼女をランチに誘おう。その間に雨も止むと思うし。


穂乃花ちゃんと話がしたい。


スタッフに穂乃花ちゃんを誘ってランチに行くことを伝え、エントランスに向かう。


「社長、振られないといいですねぇ」


スタッフが後ろで何やら言っているけど、気にしない。早く行かないと、穂乃花ちゃんがビル内を移動してしまうかもしれないから。



エントランスに着くと、彼女はまだ、そこにいた。



オレは後ろから近づき、さりげなく彼女の隣に立つ。


ふわりと、甘い香りがした。以前すれ違ったときと同じ、ハチミツのような甘い香り。まるで、穂乃花ちゃん自身がハチミツで出来ているんじゃないかと思ってしまう。


もう少し、この状況を堪能していたいけど、話しかけないことには進展しない。


オレは、なるべく不自然にならない様に話しかける。



「雨、止まないねぇ」



­­­­­­────そして、彼女が振り向いた。





ノエルさん、実は穂乃花ちゃんの名前知ってました。でも、本編であえて訊いてます。本人にも直接訊きたかったんでしょう(^^;

本編の連載当初から考えていたお話なので、書き上げることができて良かったです。

お読み頂き、有難うございます。

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