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人殺したちのコンクルージョン  作者: 赤柴紫織子
三華宮高校占領事件
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前夜祭 1

 嫌な夢を見た。

 息は荒く、まだ寒い時期だというのに汗だくで気持ちが悪い。

 知らない人間に斧で指を切られるところで目が覚めた。夢占いでもあまりいい結果がでなさそうな感じ。

 起こしてしまっただろうかと横を見て、京香がいないことに気づく。


「きょうっ…!?」


 一瞬パニックになりかかりすぐに彼女は死んだということを思い出す。

 布団にぐったりと身を沈めて息を整えた。

 片割れがいなくなったことに、未だに実感が持てていない。

いや、分かってはいるのだ。分かってはいるけど心の奥底ではまだ信じられなくて。


 時計を見ると行動予定日の前夜になっていた。

 ゆっくりと起き上がり電気をつける。

 パッケージから取り出され並べられたそれらはどれも無機質で無表情。鈍く蛍光灯の光を反射している。

 包丁、ナイフと名の付くもの、鋏、スコップ、他鋭利な物。

 ざっと合わせて三十本はあるだろうか。

 少ないかもしれないし、多いかもしれない。

 まあ怪しまれないようにして集めていくのはなかなか至難の業だったのだからこの数は及第点だろう。


 一気に包丁を複数本買えば不審に思われる可能性があったのでいろんな店で少しずつ買い揃えていった。おかげで生活費の半分が吹っ飛んだけど。

 事件があった後は容易に刃物を買うことを出来なくなるだろうなと考えたけど私には関係のないことだ。

 そのころにはすべて終わっているんだし。事件も。私も。


 極力音を立てないようにしながらバックの中へと刃物をしまっていく。

 普段のスクールバックではない、大きめのものだ。さすがにこんな量は入らないだろうと考えて新しく買ってきた。

 重さとしてはかなりのものとなる。いざとなったらこれで殴れそうだ。なんて。

 …何も考えずに入れちゃったけど中から刃物が飛び出してきたりはしないよね。

 これを学校に持っていけるか不安になったけど何とかなるだろうと軽く考えてみる。


「ふぅ……」


今日、これからやらなくてはいけないことを頭の中で整理して息を吐いた。

 学校に行って、打合せして、家に帰って――それから。

 失敗とかはないだろう、と思いたい。手加減なんてしないのだから。

 不安要素はあるにはあるが。というか不安要素しか出てこない。

 かぶりを振って思考をリセットする。動く前から悩んでいたらダメだ。

 私の座右の銘は「臨機応変」なんだから行き当たりばったりでいいじゃないか。あれ、それは京香だったっけ。私はなんだったか。

とにかく、今日明日は寝ないとだめだ。

 本番の時に体が動かなくてしたいことが出来なかっただなんて後悔しか残らない。


「おやすみ」


 虚空に向けて小さく呟いてみる。

 だけど、いとおしい幻覚もやさしい幻聴も私には訪れない。

 ただ一人ぼっちだった。


遅くなって申し訳ありません

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