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人殺したちのコンクルージョン  作者: 赤柴紫織子
終わりに踏み込んだ後
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九日目・作戦 ■

 例え小柄な犬だとしても埋めるには時間も道具も体力も足りない。

 まあ、埋葬なんて人間の感覚だしな。ほかの生物の餌となるのが自然界だろう。


 だがそのまま放置と言うのも気が咎めたのでブルータス他二匹を落ち葉で隠した。

 長い長い黙とうをした後に明日香が小さく息を吐く。

 結局、彼女は泣かなかった。

余裕がないというよりどうしていいか分からないのだろう。感情の発露が不器用すぎるのだ、こいつは。



 比較的歩きやすそうな道を当てもなく歩く。

 島の比較的外側を歩いているつもりだが逃げたりなんだりで思ったより別の方向に進んでいるような気もする。でもウォーキングラリーやっているわけじゃないしな。

点々と参加者らしき死体がいくつか転がっており、月が明るいとはいえ夜道で辺りが見づらくありたまに岡崎が踏んづけては悲鳴を上げていた。明日香も踏んでいると思うがリアクションはない。

 ふと、足元で懸命についてくる影がもういないことに気付き今更ながらに気分がどんよりと落ち込む。

 もういないんだな、あいつ。


「……休憩するか」


 明日香が息切れを起こしていたので有無を言わせず座らせる。

 彼女が一体何デシリットル失ったのか見当もつかない。

 感染は気を付けているが、失血で死んでもそろそろおかしくないんじゃなかろうか。輸血するにしても手塚治虫のブッダみたいなことできねえしな…。


「あの犬のこと、考えてました」


 狂犬のことか。


「あれ、同じような感じでしたよね。斧持ってた人と」


「そうか? …ああ、攻撃されてもノーダメだったり」


 厄介だよなあれ。

 別の誰かが倒してくれないだろうか。


「犬でもあの有様でしたから、人間だと数倍まずいですよね」


「確かにそうだな……」


 数倍どころか数十倍だ。

 痛みでひるまないし、一撃必殺で急所を狙わないと逆にこっちが襲われる可能性がある。

 正攻法じゃまず無理だな、今の状況を考えると。


「仮にやりあうなら罠でも張って動き封じ込めてから攻撃しないと危ないな」


「じゃあ、待ち、ぶせ、ですか…?」


「あらかじめどこに現れるか分かっているならいいですけど、今の段階じゃ運ですよね。出会った時に罠をかけるんじゃ遅すぎますし」


 うーん、と全員で首を捻る。


「やっぱりおじさんが囮になってこう、呼び寄せるしか…」


「首絞めるぞお前」


 なんで毎回俺をチョイスするんだこいつ。

 待てよ、罠といえば初日あたりに見かけた気がする。あそこらへんに行くことが出来ればいいんだが。問題はここどこだっていう。


「とりあえず、」


 明日香は立ち上がろうとして、そのまま後ろにぶっ倒れた。


「おい大丈夫か…」


「……」


 動かない。

 倒れた姿勢のままピクリともしなかった。

 息はしている。


「まさか後頭部打って気絶したか…?」


「血が、足りなくて、失神、じゃ、ない、ですか…?」


 デジャヴを感じる。

 気絶にしろ失神にしろ…生き残れんのか、こいつ。


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