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人殺したちのコンクルージョン  作者: 赤柴紫織子
終わりの一歩前
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八日目・前原籠原の告解 後

「早川が死んだあとはもう気力もなくなってなぁ。あんなに入るの大変だったのに、あっさり辞めた」


「ニートになったわけですね」


 茶化された。

 まあ、そんな感じだったけど。

 幼馴染の移動手段に使われていた程度だったけど。

 もっと言いようがあるだろう。


「お前さ、明日香さ、ちょっとしんみりしてくれないか」


 怒りが湧くというよりもこう、脱力感がする。

 たしかにこいつに比べれば俺は甘っちょろいもいいとこなんだろうが、俺にとっては一生ものだ。


「…そこから、どうして『コレクト』のことを知ったんですか?」


「あ、そう、ですよ。求人、広告みたいな、ノリで、公募していた、わけ、じゃない、でしょう?」


「俺のアパートのポストに入ってた」


「は?」


 まあ、そうなるよな。

 明日香は強制だし、岡崎は騙されたようなもんだし。

 正式に――というのもおかしいが、ちゃんと自らの意思でここに来たのが俺だけというのもなんだかなって思う。


「質素なビラだっだな。――『コレクト』って文字と電話番号しか書いていなかった。それに興味半分でかけてみたら出たのは機械音声で、しかも話したのは日時と場所、本人だと絶対にわかるものを持って来いと。それも五回ぐらいループしたら切れちまった」


「その後、かけ直したりは?」


「した。だけどもう繋がらなくなっていた」


「よく行こうと思いましたね。何があるか分からないっていうのに」


「自暴自棄だったんだよ、その時は。場所を調べてみりゃ確かにそこに建物はある。誰のいたずらだかわかんねえけど騙されてやろうという気持ちになった」


 気晴らしになれば何でもよかった。

 鬱屈とした気持ちを少しでも軽く出来るなら、それで。


「そして、そこで、何を、見たん、ですか?」


「めっちゃガラの悪い人間から気弱そうな人間まで様々な奴らだったよ。言葉を交わしはしなかったが、同じような方法でここに来たのは確かだ。そして何人かはどんなものか分かっていた、と思う」


 最初から分かってた連中というのは主催と裏でつながっていたのだろうか。


「……」


 明日香がせかすような表情をしているので簡潔に言う。


「主催者は顔を見せなかったが、録音なのか遠隔なのか一応声では出席していた。そこで言われたのは『コレクト』のルールと、」


ーー諸君らにはこれを除ける権利がある。

ーー外部で誰かに話しても構わない。それを真のものとは受け入れられないだろうが。

ーーしかし、参加できるのは諸君らだけだ。

ーーふたつに一つ、決めるのは今だけだ。



 ————ただし。

 ————取り消すことはできない。



 一度進んだら後戻りのできない条件。

 帰ったのは何人いただろうか。でも、ほとんどは帰っていなかった気がする。

 まるで引き返せない人間たちを集めたかのような――


「そうだとしたら、これは洒落にならないですよ。『殺人できる人間』を見定めて、『殺人できるような環境』に送り込んだなんて」


 その通りだ。しかもこれは、明日香の例から見て国も絡んでいる。

 俺だってほとんど死んでもいいと思っていた。ずるずると生き延びていただけだ。

 早川の件がなければまず電話すらしない。

 掛けることが、来ることが、参加することが、まるで分かり切っていたように。


「……生き残ったやつに仮に言葉通り賞金があったとして――それで終わりとは思えない…」


「……蠱毒(こどく)?」


 岡崎は小さくつぶやいた。


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