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人殺したちのコンクルージョン  作者: 赤柴紫織子
終わりの一歩前
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八日目・岡崎美波の事情 1

※サブタイで岡崎といってますが語り部は前原です。ややこしくてすいません

 どうにかこうにか時間をかけて来た川は今度は死体が浮いていないようで、それだけは良かったが。

 今はもう夕暮れが近くて薄暗いから見えないだけかもしれないが。朝になって発見してしまったらいやだ。

 相変わらず川は苦手だ。


「……しかし」


 笑うしかない状況になってきたな、というのが感想だった。

 怒るにしても泣くにしても自業自得なのだ。

 なぜなら俺は望んでここに来たのだから。ならば、このルールに、この姿の見えない敵に対し当り散らすのは間違えている。

 明日香だって人を殺したという罪があり、そのための罰としてここに島流しされた。文句をいうのは間違いってもんだろう。

 岡崎は――岡崎、本当に災難だな。兄貴に嵌められてここに突っ込まれただけだもん。


「え、なんですか。その、憐みの、目、は」


 俺の視線に気づいた岡崎があとずさりした。

 どうして体を隠すように腕をクロスさせているんだ。そんな目で見ているつもりは一切ないんだが。


「いや…大変だなって」


「え…? 話が、わからな、い、です」


 助けを求めるように岡崎は明日香を見たが、当の本人はうつらうつら舟をこいでいた。

 血液も栄養も心の安定も足りないのだろう。彼女は父親の一件から風船が抜けたように見るからに弱っていっている。


「主語がなかったな。お前のことだよ」


「僕が?」


「この島来て怪我してしかもヤバいやつがいるときた。フッツーに生きていりゃあこんなことなかったんだろうと思っただけだ」


「あー…」


 岡崎は若干流れのはやい川に足を浸して思案顔になる。

 包帯ぐるぐる巻きで真面目な顔ってギャグだと思ったが話の腰を折るほど空気が読めないわけではないので黙る。


「『フッツーに生きて』、いたと、しても、幸せ、だったかは、分かり、かね、ますが」


「なんだそりゃ」


「両親が…死んでいまして、ですね。ちょっと、院生で、あることも、それなり、に、きつかった、んですけど。特に、お金とか、生活、とか」


「……死んだ理由わけを聞いても?」


 少々不躾な質問だと思ったが口から滑り出していた。

 両親が死んだといったとき目が泳いでいたのだ。のっぴきならない理由で死んだんだろうとは想像できたが。

 気分を害させたかとヒヤリとしたが岡崎はゆっくり首を縦に振った。


「いいですよ。もう、これを、秘密に、するのは、壊れて、しまい、そうだから」


 ギリ。ギリギリ。


「秘密……?」


「僕だって、いずれ、あいつに、殺されて、ました、し」


 ギリギリ。


「岡崎」


「僕が、邪魔、だったんだ。あいつは、だから、僕を、ここに」


「あいつって、まさか。おまえの――」


 ギリギリ。ギリギリギリギリ。


 すぐには返事が返ってこなかった。

 その間に聞こえてくる耳障りな音は何だろうと考え、ようやくその出自に気がつく。

 岡崎の歯ぎしりだ。


「…? どうしたんですか…?」


 異様な空気に起きたのか、目を擦りつつ明日香が訪ねてくる。

 俺の困惑顔を見て何かを察したらしい。岡崎のほうに視線を向けた。

 ブルータスはきょとんとした瞳で俺と岡崎を見比べている。


「あのクソ野郎が」


 おとなしい印象を持っていた彼の口から出たのは、誰かへの暴言。


 そういえば三、四日前に言っていた。たったそれだけの時間なのにずいぶんと遠くに感じられるが。

 岡崎は、クリアした暁には自由が欲しいといった。

 『一度だけ人を殺してもいい自由』。法律で守られた日本で、殺人を犯す自由を。

 その相手は確か、ミソラ。こいつの双子の兄弟。


「両親の、犯人は、いまだ、見つかって、いません。だけど、僕、知っているんです」


 ギリギリギリギリ。


「―――岡崎美空、そいつが、父さんと、母さんを、殺したんだ」

※四、五日前…「五日目・双子のry」

そのあとも彼が語り部の時いろいろ考えてますがすべて内言語なので他の二人は知りません

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