俺、莫迦ですけど何かっ!?
期待してくれていた数少ない人たちに謝罪!!
遅れてスマンと!!
学校の宿題終わるまで親にPC取られてたもんで…。
まぁ、ここらは前と同じぐらいのペースになると…。
で、とりあえず駅前に集合したわけだが…。
服装が…。ね…。
大地ら3人は前と同じ感じだ。(剣斗の中にいたからよく覚えてねぇが)
でも…。
千丈はいつも通り、反則並みのカッコ良さ…。
「眩しっ。」
と、思わず呟きそうに…って呟いちゃったじゃん!
幸い皆気付いてなかったみたいだが…。
ま、それはいいとしてだ…。
あれは何だ、あれは。
「ニートかよっ!」
と、またしても思わず呟いてしまった…。
しかしこれは水上に聞こえていたらしい。
一瞬身構えたが、水上も同意してくれたのか、神妙な面持ちで頷く…。
とまあ、水上でも思うくらいだ。
あれはホントにオタクかニートレベルの服装だぜ…。
簡単に説明すれば…。
上:なんかの萌えキャラっぽいのが小さく印刷された白シャツ一枚。(寒そっ!)
下:紺色の襤褸っちい半ズボン。(冬なのにな…)
背:荷物が入っているであろう緑色のショルダーバック。(何故か、丸めたポスターのような物が飛び出て…)
とまあ、童貞を貫いて魔法使いになりそうな格好なのである。
千丈と二人で5分間待っていたと考えると笑えてくる…。
千丈は気の毒だが。
でも、揃ったし
「じゃ、行くか!」
皆「おう」と足を動かし始める。
駅から俺の家までは10分で着くのだが、この高層ビルの林立する都市内では十分に人気のない場所に建っている。
正直言うと、いきなり街の真ん中に家が現れたら騒ぎになるからそこにしたのだ…。
と、皆無言で歩いたから、5分弱で着いてしまった。
千丈と佐藤は着くなり
「デカいね…。」
「すっげー豪邸だ!」
などと、大地らの時と同じようなことを言っていた。
「じゃ、入ろうぜ。結構冷えてきただろ、千穂になんか温かいもん出させるから。」
俺が促すと、皆は玄関に向かった。
しばらくすると、千穂が顔をだした。
「お帰りお兄ちゃん…って、タカ兄ちゃん!?」
剣斗じゃなかったのでびっくりしたのだろう。
「ああ、久しぶりだな千穂。」
と、特に変わりのない挨拶を済ませて、皆を玄関へ入れる。
最初に入ってきた、大地ら3人には前に会っているので、
「どうも…。」
と、軽く挨拶をするだけだったが…。
佐藤が入ってきて、一瞬引いたがやはり
「初めまして…。千穂っていいます。」
ぐらいの反応だ…。
しかし、問題は次だ。
千丈が入ってきた…。
その瞬間、千穂の表情が一度固まって、その後すぐにパッと明るくなった。
「あ…あの、千丈サンですか…?」
と、恐る恐る訊く千穂に対し、千丈も笑顔で
「そうだよ、よく分かったね。初めまして、千穂ちゃん。」
とな…。
俺が女だったら間違いなくズキュンだよ、あの笑顔は…。
すると一気に千穂はテンションMAXになって、
「あ、あのっ!ぁあたし、千丈サンの大ファンなんですっ!」
と、兄の前にもかかわらず、声を裏返しながら力説する。
千丈もまた、
「そうなんだ、それは光栄だな。千穂ちゃんみたいな可愛い娘がファンだなんて。」
と、笑顔で心にもないのかあるのかよう分からんことをスラリと言い放つ。
しかし、それで千穂は一気にやられたらしく、顔が紅くなって俯いたまま、
「あっ!ありがとうございますっ……。」
と、何故かお礼をいてダッシュでリビングに逃げ帰ってしまった。
とっさに「何か温かいもの出してくれ!」とだけ言うのは忘れなかったが…。
「さ、俺たちも行こうぜ。」
俺が促すと、千丈だけは少々くぐもった声音だったが、全員容認してついてきた。
(ガチャ、ギィー)
さあ、一息つける――――。
と思った矢先、俺の視界は余計な者の影をとらえていた。
「っ――――。」
絶句。
本当に絶句した。
何?コレは新しいドッキリか?
まあ、そんなわけねぇか…。
「ゆ、唯…、何でここに…?」
俺は目の前の美少女、唯に恐る恐る尋ねる。
すると、唯もこちらの姿を認識して、一瞬目を丸くしたもののすぐに不敵な笑みを浮かべて
「悪い?」
とだけ言って、プイとまたそっぽを向いてしまった。
しかし、俺は懲りずに問う。
「悪かねぇ…こともないが、そうじゃなくて!何でだって聞いてんだけど…。」
またも無視されかけたが、今度は俺の後ろの客人に気付いたらしく、
「しょ、しょうがないじゃんっ!こんどここのガッコーにテンニューするんだからっ!」
と、急に焦った様子で答える。
まあ、これが唯の特徴でもある。
家族や俺ら以外の前では妙に緊張するらしく、日本語すら覚束無くなってしまう。
まあ、俺はアイツ等のおかげで無視されなかったのが現状なんだけど…。
「あー、そっか。確か任務のメンバーに入ってたなー。」
などと、いろいろ思いに耽っていると、後ろで小競り合いが始まった。
「なぁ、あの子スゲー可愛くね?」
と、大地が佐藤を突きながら言う。
佐藤も同意するのかなぁ?と思っていると、
「ダメだ!あんな美少女が現実にいてはいけない!」
などと、わけのわからんことを言い出した。
それに負けじと大地も
「ふっ、どうせ2次元がどうとか言い出すんでしょ?2次元なんて、空想に過ぎないんじゃないか?」
これは、魔法使いになることを覚悟した者にとっちゃあ嫌味にしか聞こえないだろう。
「黙れ!じゃあお前、3次元の女をどう攻略するってんだ!?」
おっと、これは大地にとっては大ダメージのはず。なんせアイツモテねぇっぽいし…。
「くっ―――――。」
なるほど、俺の予想は的中。
やっぱり大地にそんな自信はなかった。
それに付け込んで佐藤はいやらしい笑みを浮かべながら、
「そうだろう、そうだろう。所詮モテないお前なんか、3次元で無駄なあがきをしているにすぎんのだ!」
と、高笑いしている。
が、そこへキラーマシン闘上がやってくる。
「っ―――。」
俺も思わず目をつぶってしまった。
恐る恐る目を開けると、大地と佐藤は……。
地面にめり込んでいた。
「「はぁ――――。」」
俺と千丈の溜息が重なる。
俺たちはお互いに顔を見合わせてから、そのまま3人は放っておいて話を続けることにした。
「で?メンバーに入ってるのは分かった。だが…。何故に俺の家!?」
そこ重要だ。
しかし唯は
「い、いいでしょ!?ガッコーもおなじなんだし。それにここはチーちゃんのいえでもある!もんだいなかろう。」
相変わらずの調子で、俺が言わんとしていることを全く分かってないような返答をする。
だから、
「そうじゃない。そ、その…、そういう気はないとはいえ年頃の男女が同棲ってのはどうかと思っただけだ…。」
なぜわからんか…。
「ばかっ!お、おまえいつもあたしのことそんないやらしいめでみてたのか、このヘンタイ!!」
と、何か一方的にけ貶された…。
「あーもう!分かったよ、好きにしろ。」
もうどうでもいいや。
同棲っても、千穂もいるんだしな。
俺の言葉を聞いて、一気に唯の表情が和らぐ。
「ホントか!?ありがとー、タカ!」
っ―――――。
ほんと、いつもこうなら普通に可愛いのにな…。
と、変な方向に行きかけた俺の思考を元に戻す声が聞こえた。
「なぁ、任務の話はいいのか?」
と、水上。
そこで俺も気が付いて、全員に声をかける。
「皆、そろそろ本題に入るから、適当に座ってくれ!」
俺が言うと、皆は椅子に座り始めた。
すると、ちょうどよくコーヒーを持った千穂も来て、やっと全員集合だ。
なんか改めてみると凄ぇメンツだよな…。
でも、メンバーこれなんだから仕方ないよねぇ。
「じゃ、今回の任務なんだが、皆知っての通り魔王の子の世話だ…。」
「はあ!?」
と、そこで唯が素っ頓狂な声を上げる。
「何だ、唯は正宗から何も聞いてねぇのか?」
「え?あ、あぁそうだけど…。」
あのジジィ…仕事適当過ぎんだろ…。
「ん、まあいいか。唯、今回の任務は“あの”魔王の子供の世話だぞ。」
最後は抑揚を抑えて言う。
しかし、たったそれだけなのだが、唯の顔が見る見るうちに歪んでいった。
「な、なんであたしがあんなクソニートのこどものせわなんか!!」
声を荒げて抗議する唯だったが、そんな滅茶苦茶な理由で、任務を放り出すことなんて出来やしない。
しかし、“こっち”の唯だと、少々話が進まなくなる恐れがあった。
だから俺は、ある秘策を使うことにした。
「千穂、アレってまだうちにあるよなぁ…。ちょっと頼んでもいいか?」
と、俺は唯のほうをちらちら見ながら、千穂に役を頼む。
すると、一瞬首を傾げていた千穂は納得したのか、ドアを開けて部屋を出る。
その間
「千穂ちゃん、どうかしたのか?」
と、闘上に訊かれたが、
「まぁ問題ない。」
と制す。
しばらくした後、やっと千穂が戻ってきた。
「あったか?」
と、俺が問うと、千穂は
「あったけど…。」
と、表情を曇らせた。
まあ、当然っちゃあ当然の反応だ。
なんせ、ずっと“あの”状態になっちまうんだから…。
「少々やり辛いのはわかるが、頼む。」
千穂は、しばらく考えたのち、
「じゃ、今度アイス奢りね?」
「了解。」
ま、アイスで釣られるあたり、千穂もまだまだ子供だなぁと思う。
年1つしか変わらんのだがな。
「じゃ、唯ねぇ、ちょっとだけSモードで…。」
そういいながら持ってきた紅い髪飾りで、唯の髪を二つに結わえる千穂を、みんなは不思議そうな目で見つめる。
(シュッ)
と、最後の一括りを終えた瞬間、急に唯の雰囲気が変わった。
他のみんなも気付いたらしく、少し困惑気味だったのだが、
「唯は、あの髪飾りを付けると、人格変わる…というかもとに戻る。」
俺が説明してもなお、訳わからんという顔をしていたが、これ以上は埒が明かないので、話を進めよう…としたが、
「ツインテールもイイっ!」
という、大地の声に押されて、俺の声は皆にとどかなかったっぽい。
まぁ、大地もよくやるよな…。
分かってるだろうに、この後どうなるかなんて。
フッと、闘上の体が揺れる。
その瞬間、その場の唯、大地、闘上以外は、両手で目と耳を塞ぐ。
一秒もしないうちに、
「―――ぅぐっ!」
と、大地の短い悲鳴に続いて、
「うぅ…。」
という、気怠そうな唯の声。
かなりグロいものを目にしたのだろう。
唯は胃のあたりを摩っている。
「大地クンは?」
と、千丈の、てか皆の疑問。
すると唯は、無言でぽっかり穴の開いた壁を指差す。
「なるほど、めり込むだけでは飽き足らず、とうとう貫通させたというわけか…。」
と、どうでもいい解説を入れる佐藤はほっといて、
「なぁ…どうやったらあんな穴開くわけ?」
そう俺が問うと、闘上に変わって水上が説明を始めた。
「あれは、闘上の100の拷問魔法のうちの1つで、“ブラックウォール”。標的を問答無用で壁の向こう側の闇へと突き飛ばす技。」
拷問魔法って…。
てか、あと99残ってんのかよ!
大地には後でご愁傷様と告げなければ…。
しかしここで、場を凍りつかせる一言が。
「黙りなさい、この愚民ども。今すぐわたくしの前に跪座するというのなら、特別に許してさしあげますわ。」
とな。
まあ、俺と千穂はわかってたんだが、さすがに皆は驚いたみたいだ。
驚きすぎてホントに跪いている。
しかしそのせいで俺は容赦なくとばっちりを喰らう。
「そこの存在感がフナムシ程度の襤褸雑巾もさっさと平伏しなさい!!」
なっ。
「おい、まず世界中のフナムシに謝れ。そして襤褸雑巾ではない!」
とまぁ、全力でツッコミを入れながらふと思う。
なぜ俺だけ?
千穂は?
と。
だがしかし、その謎はすぐ解ける。
そう、千穂はその場にいなかった。
というか離脱してた。
そして、片手で“スマン”というポーズを作ってから物陰に隠れる。
「あ゛ぁぁぁぁもう!元に戻れぇぇぇええ!!」
吠えた。
もちろん俺だ。
「あれ?タカ?」
もちろん、それと同時に髪留めは奪取した。
「あたしがどうかした?」
と、唯。
「何でもねぇよ。みんな、もう大丈夫だ。」
俺が声をかけると、皆一斉に直立する。
見事なものだ、シンクロなんかやってたら間違いなく金賞。
まあ、そんなことはどうでもいい。
「それより、ホントのホントに本題に入るぞ?」
嗚呼、長かった…。
今までのとは打って変わって、戻ってきた千穂も含めて皆はいい顔をしている。
さぁて、何から話そうかなぁ…。
今回の作戦で重要なことは…。
何かねぇかな…。
えっと…。
「なんもねぇ…。」
思わず呟いた。
静かになったその部屋には、十分行き渡るほどの音量だ。
皆は「は?」という顔をしている。
とくに唯なんか、かなり怪訝な顔だ…。
と、そこで千穂が、
「ねぇ、お兄ちゃん。あれは?昇龍島への入場許可。」
あ、そうだった。
またまた、めどくさそうなのが来やがったなクソッ。
「ん、そうだったな。まぁ、俺と千穂と唯はいいとして…。問題は残りだな。個性特異体質者の匂いがプンプンする。」
個性特異体質者というのは、平たく言えばその人の特徴。
でも、誰もが持ってるわけではない。
このほとんどが先天性のもので、親からの遺伝が多く関係しているといわれている。
特徴と言っても、普通並みのじゃなくて、特に突出した個性。と言ったところだろうか。
これを持っていれば、それぞれ特融の力や知識が身に付き、それに沿った人格となるのだから皮肉なものだ。
未来が決められている。というのがほとんどなこの能力は、メリットもあればデメリットもあるってわけで、なかなか複雑なところなんだ。
メリットとしては、人権と同じ扱いで、個性特異体質者の個性を脅かすようなことをした場合犯罪者扱いとなる。
また、国から援助が出るため、自由な生活を送れるというのもあり、それによって結婚したいという人が出てきたり、自分の子供が遺伝してくれたらいいな、などの考えを持つ人が集まってくるため、将来に不安はない。(ほんの一部は例外だが。)
デメリットとしては、進む道にはレールが引かれてあり、そこから外れることは不可能ということ。
あと、小さい頃などはいじめ。大人になってからも、なにかと色眼鏡で見られたり、迫害を受けたりする。
といったところだろう。
ま、少なくとも俺や千穂、唯は、それを不幸だとは思わないようにしている。
なんせ、親が自分にくれたもの、親の形見のようだから、それは誇りだし、自慢できるものだと前向きに考えている。
そのおかげもあって、昔からまったく問題なく社会に溶け込めてる。
ほかの人がどうかは知らないけど
「じゃ、この中で個性特異体質者は挙手して。」
俺が言い放つと、一気に全員の手が挙がった。
「――――マジかよ。」
まぁ、予想はしてたけどね…。
こいつら、個性的なやつばっかだし、訳わかんねぇときあるし。
「じゃあ、ちなみに“何の”かは言えるか?」
全員頷く。
「ん、なら大地から時計回り。」
大地は、少し間を開けてから口を開いた。
「俺は…、“不死身の体”の個性特異体質者だ。」
不死身…、ねぇ…。
「ちなみに捕食は?」
ああ、捕食というのは、その力ごとに発生する欲求のことで、それを満たさなければ最悪死に至る。
「定期的ではなく突発的に、常人なら死ぬ程度のダメージを受けること。」
なるほど、それで闘上の出番ってわけか…。
「次、水上。」
「俺は、“優等生”だ。」
あ?あぁ、いきなり何言いだしたのかと…。
「捕食は?」
「学校の定期考査で1位を取り続けること…。」
うわぁ…。
これはキツイな…。
「ご愁傷様。次、闘上。」
「あぁ、私は“勘解由長官”だ。」
勘解由長官…?
なんだよそれ。
「なぁ、勘解由長官ってなんだ?」
と、大地が俺の代わりに言ってくれた。
「遣唐大使、菅原道真が得た官位の一つです。」
と、千丈が早い反応を示す。
「その通り。ちなみに捕食は、真っ白い紙に何か書き込まれているのを見ると、それを消したくなる。」
はぁ…?
「なんで?」
俺が問うと、闘上はさらに続けた。
「知らない?894(はくし)に戻せ遣唐使。」
おいおい…。
「そんなふざけたのってありか…?」
ふざけすぎだろ。
てか、ネタじゃんこれ。
何?先祖が菅原道真…とか?
「ふざけてなどいない。私の先祖が、菅原道真だったというだけだ。」
やっぱりそうなのかよっ!
「まぁ、いいとしようか。で、次………佐藤……………。」
もうわかってるって、どうせオタクとかなんだろ?
「俺は、“英雄”だ!!」
……………。
は?
英雄って…こいつが?
莫迦じゃねこいつ。
でも…嘘ついてるようには見えねぇな。
「ちなみに詳細を訊くと?」
すると、ムカつく程清々しい顔で佐藤が答える。
「そりゃもちろん、“救う”のさ。」
救うねぇ…。
俺の読みが正しければ、コイツこの次の科白で壁にめり込む。
「で、何を?」
「もちろん…2次元の美少―――――っぐぁ!!」
なびいてもいない髪をかき分けながら、さらっと自爆した佐藤は、只今絶賛めり込み中。
「次、千丈。」
ま、ここも分かりやすいかな。
アイドルとか。あ、イケメンってのもあったな…。
「僕は、“M者”です。」
ん、何かしっくりこねぇ…。
もっとこう…、何かあんだろ!!
「てか、お前Mだったの?」
なんか、意外っちゃ意外だな。
「えぇ、そうらしいです。」
ふぅん。
「で、捕食は?」
えっと…。何か聞きたくねぇ…。
と、俺は気付いてとっさに“千穂”の耳を塞いだ。
「週1回、女性に木刀で殴られること…。僕この力いらないんですけど…。」
やっぱ可哀想なやついるじゃん…。
「そ、そうか。それは気の毒だったな…。嗚呼、でも気に病むことないぞ、俺はそんなの気にしないし…。」
俺にできる最高のフォローだった。
「ありがとう、天野クン。」
でも、全員が個性特異体質者だったら、楽っちゃあ楽だし…。
「ん、じゃあ全員のカルテを、昇龍島の門番に届けといてくれフェリス…ってあれ?」
そういえば、名を呼んだはいいが、俺が出てきてから一回も見てない気がするんだが…。
すると、唯も気になったのか、
「そういえば、フェリちゃんみてないなぁ…。」
と、小首をかしげている。
「じゃ、召喚んでみるか。」
そう言って俺は、右手を前に突き出しながら、
「召喚獣顕現……青鱗双尾龍!!」
すると、目の前の虚空に淡い光が出現した。
それから間もなくフェリスの姿が。
「何?あ、鷹志じゃん、どうしたの?用ないなら帰りたいんだけど…。」
え?
「おいおいフェリス、どうしたんだよ中はつまらないんじゃ…。」
するとフェリスは、
「だって、友達ができたんだもん!」
友達ねぇ…。
「って、友達!?」
俺だけでなく、唯と千穂も驚いているようだ。
「なんでそんなに驚くのよ!別にいいでしょ、友達ができたって!!」
甲高い声でわめき散らしたあと、フェリスは勝ち誇った様子でふんぞり返って、
「なんなら、呼んできてあげようか?」
と、まぁ俺たちはまだ半信半疑なわけだから、証拠があれば腑に落ちるだろう。
「じゃ、頼む。」
フェリスが消えてから数十秒、すぐにそいつは現れた。
「「っ!?」」
全員息をのんだ。
そりゃそうだろ、ただでさえ天井の高いこの家の部屋で、窮屈そうに首を曲げている白龍がいたからだ。
「おい、フェリスこいつは?」
「だから、私の友達!!」
…。
デカすぎだろ、しかしまぁオスとは…。
「なぁフェリス、こいつ契約者は?」
そう、肝心なのは契約者。
契約者さえいなければ、すぐにでもこの強そうなのを仲間にできる。
「契約者はいない、我もできれば貴方を契約者に迎えたいのだが。」
かわりに答えたのはデカい白龍。
「そうか、なら俺はかまわないぞ。」
それから、両者同意のもとで契約が交わされ、アイツは仲間に加わった。
「じゃ、よろしくな、あ、え~と…。」
「スプラウスだ、ラウスでかまわない。」
スプラウスね…。
「じゃ、改めてよろしく、ラウス!」
「よろしく、契約者。」
とまぁ、フェリスのおかげでラウスを仲間にできたんだが…。
「なぁラウス、どうやってフェリスと知り合ったんだ?」
気になったんで俺が訊くと、
「フェリスと知り合ったきっかけか…。我はこの図体だから皆に怖がられ、避けられてきた。でも、フェリスだけは、我に声をかけてくれた。何の躊躇もなく、ただ純粋に。だから我は、フェリスの力になれるなら何でもしようと思った。フェリスの契約者を手伝うことでも、力になれるならそれでいいと思ったんだ。」
嗚呼…。
ここは本当なら泣ける話なんだろうが…。
フェリスが話しかけたのは、ただ単に莫迦だからラウスが強いとか分からなかったんだと…。
ま、ここはそっとしといてやろう。
と、しかしまぁ俺たちがこんな会話を交わしている間、永遠と“非”現実的なことを見せられてきた皆は脱力しきっていた。
さすがに可哀想だったから、
「皆、作戦の話はここまでにして、飯にしようぜ。」
そう言うと、皆は頷いた。
が、そこで大地が、
「そういや、天野の個性ってどんなのなんだ?」
俺の個性…か。
あんまり人に言いたくないんだけど…。
「仕方ない…。」
俺は小さく呟くと、割り切って言ってみる。
「えっと、俺の個性は、“神”と“勇者”と…それから………。」
うぅ…。やっぱ言い辛ぇ…。
「ん?」
と、疑問に満ちた顔の大地…。
しゃあなしだな、こりゃ。
「“莫迦”だ。」
「「は?」」
唯、千穂、フェリス以外の声がシンクロする。
しばしの沈黙があり一帯に変な空気が流れ始めたころ、大地が不意に訊いてきた。
「“莫迦”ってそれ…、お前の個性か?」
ん、まぁそうなるんだが…。
「あ、ちなみに捕食は、“神”が1か月に一度、世界の因果を変えること。“勇者”は年1回魔王を退治すること。まぁこれはゲームでOKだから、全く問題なくて…。で、最後…。“莫迦”なんだが…これは、1日10回同じやつに告ること…。」
俺だって悲しい能力者なんだよ…。
「これまでに何度あらぬ噂を立てられたか…。」
て、こんな重い話をしてもなんにもならん。
それよりさっきから俺の正面の唯のパンチラが酷いので、正直早く解散したかった。
「ん、まぁその問題は解決済みだしさ、早く飯にしようぜ。」