訓練所要時間2時間余り…
即行4話目です。
もう少ししたら更新ヤバいほど遅くなる(と思う)よ~(笑)
ここは、訓練所のA区間。ここはまだ訓練ロボが出てこない場所だから落ち着いて話せるようにはなっている。
「じゃあ、ここら辺で一通り神術の説明でもしとくかな」
しかし、大地がそれを遮って言う
「ちょっと待ってくれ、俺はあそこにいるロボットを倒したくてたまんねぇんだけど」
こいつは理屈でどうにかできるやつじゃないな。まあでもここでアイツらを攻撃してくれれば神術を嫌でも教えてもらわなきゃいけなくなるから、好都合っちゃあ好都合だな。
「いいぜ、ここからでも攻撃は届くはずだから、相手はあれ以上近づけない。思う存分やればいいよ。」
「それじゃあ遠慮なく!」
大地は魔法を発動する体勢をとる。
スゥゥゥゥ――――――。
と大地の体から魔力が溢れる。
「いくぜ、グランドクラシュ!」
大地の手から波紋状の衝撃派が放たれる。
刹那。
大地が放った衝撃派が地面に到達した瞬間、普通の地面なら跡形もなく消し飛んでそうなぐらいの衝撃が、地面を走った。
ここが対神術用の設計じゃなければ、今頃全壊だろう。
しかし、予想以上の威力だ。これなら神術を(初歩だが)使いこなすのも時間の問題だろう。
爆煙が薄くなっていく。
「へっ、どうだ…」
しかし、大地の期待とは裏腹に、ロボットのほうには全く傷一つ付いてない。
「マジ…かよ。何でだ、今のは俺の中でも結構威力の高い魔法だったはずだぞ。」
「大地、それは仕方ないことだ。みんなも分かっただろう、コイツらには魔法が効かねぇ。倒したけりゃ、神術を使わなきゃいけない。」
ここは神術の訓練所だから、普通の魔法でやられてたんじゃ意味がねぇ。
「でも、最初のほうの敵は、簡単な神術でも粉々になるような敵ばかりだ。」
俺は、掌に、小さな光の玉を作ってみせる。
「こんな風にね」
そして、ゆっくりとロボットがいる方へそれを投げる。
そんな簡単な、そして全く何の苦も無く、ゲームしながらでもできる動作なのに。
それが一体のロボットに当たった瞬間…
ドンッ!!
光の玉は、鈍い音を立てて破裂した。
そして、踏ん張ってても吹き飛ばされそうなくらいの風が俺らを襲う。
そう、これはただの爆風だ。簡単な動作が引き起こした、簡単に説明のつく爆風だ。
そして…。目の前のロボットは跡形もなく、消えていた…。
「とまあ、こんなとこだよ。神術の初歩っていうのは」
初歩でこれだけの破壊力を持っているのに、上級になるとどうなんだって思うのが自然なのだろう。しかし、上級に上がるにつれて神術は、普通では考えられないようなことをできるようにはなるが、殺傷能力はさほど上がらない。というか、神術はもともと自衛のための魔法だから…。
「って、3人とも気絶か…。まあ最初は無理ないか…でも。朝までにはこんなの屁でもねぇくらいにしてやるよ……。」
でも…。こりゃ30分くらい起きねぇか…。
と思った瞬間…。
ポンッ!
と、小さな音を立てて、もうみんな忘れていたであろうフェリスが現れた。
「おっはよー剣斗!」
「ったく、うるせーな。スリープモードはもう終わりか?」
「いや、まだなんだけどなんか外で面白そうなことしてるから起きた」
せっかく静かだったのに…
「あっそ。じゃあ、あまり騒ぐなよ」
「了解―――!」
こいつは、スリープモードと言って、まあ簡単に言うと睡眠時間的なのが決まっていて、その時間内は異次元にいなければならない。そこには、フェリスのようなドラゴンもたくさんいるんだが、こいつが友達を作らないせいで、つまらないからという理由で常時連れ歩かなくてはならない始末だ。
「それにしても、すぐに終わっちゃいそうだなぁ…」
俺は小さく呟いた。
「ん、なんか言った?」
「いいや、なんでも…」
終わるっていうのも、さっきの大地の攻撃を見ると、魔力、戦闘センス、技量、どれをとってもかなりのものだ。だから、案外早くに神術を習得しちゃうんじゃないかと…。
他の2人はどうか知らないが、なぜかそんな気がするんだ。
と、
「い…痛――――。」
ん?
「痛ぇなクソッ!」
大地の声だ、もう目が覚めたらしい。
「よっ、と」
「ふぅー」
他の2人もそろって起きてくる。
ふと、大地が俺に気付いて、
「お、天野。おまえさっきのどうやったんだ?凄すぎだろあれ!俺たち今からあんなの使えるようになるのか?なあ?」
…ノリノリだなおい。
「對馬、少し落ち着かないか」
しかし、ここは闘上が鎮める。
「なんだよ、堅ぇな沙鬼は…」
それにしても、結構仲がいいんだなこの2人。
って、そんなことは関係ないが、ここからが大変なのに……分かってんのか、こいつら…。
それから一時間ほどたった。
色々苦労したけど…。もう最終段階か。
「よし、3人とも。自分が完成させた技を使って、A区間のボス。“タイタン”を倒したら、一通りのことは終わる。さ、準備はいいか?」
と、いい雰囲気になりかけたところで、フェリスが水を差す。
「ねぇ剣斗。こういうのって修行中をもっと盛り上げるんじゃないの?」
余計なことを…。と、思ってるのは俺だけじゃなさそうだな。
「色々と事情があんだよ!」
「ふーん」
ったく、マジで空気読めないやつだ…。ま、この際どうでもいいんだが。
「…気を取り直して」
俺たちは、結構広いホールのような場所に来ていた。
どこか薄暗く、いかにもラスボスって雰囲気の出てる場所だ。
ま、設計したのは俺だが…。少し臨場感を出しすぎて、禍々しい気配が漂ってきてるところがまた妙に薄気味悪い…。
「さ、出てこいタイタン!」
俺はフェリスを召喚した時のように、手を前に突き出して叫んだ。
すると何もない虚空に、光が集まり、強い殺気とともに黒い影が姿を現した。
徐々に見えてきたソレは、この場の禍々しさをより一層強くさせる漆黒のボディに、そこから溢れんばかりのダークオーラを放っている。
そこでようやく水上が声を上げた。
「…俺たち今からこんなのと戦うのかよ……。」
確かに外見だけで感想を聞くと十中八九、恐ろしいってなるだろうが、実際この3人の実力なら、全然倒せるんじゃないかと俺は踏んでいた。
続いて水上の緊張を解くように、闘上が言う
「…こいつは。對馬のドス黒いオーラよりも黒いオーラが出てるな…。」
確かにその通りの考察に俺たちは大地をかばうことができない…。
「ああ沙鬼。だが、茶番はそこら辺にしといたほうがいい。そろそろ戦闘準備が整うぜ、アイツ…。」
大地が言い終えた瞬間―――。
タイタンの目が黄色く眩い光を放った。
来る―――!!
「行くぜ、遅れんなよ!」
先頭を切ったのは大地だ。
「先手必勝!ロックプリズン!」
これは大地が神術の一つ“具現”をアレンジしたものだ。
タイタンの周りに格子状の岩を出現させて、檻にしている。
もともとグラヴィティマスターだったため、自分のエレメントが土や岩を使う魔法に適応している。そのため、自分との相性はばっちりだ。
ひとまずこれでタイタンの足止めはできる。だが抜け出されるのも時間の問題だ。
しかし、その一瞬の隙を使って、闘上は魔法を発動させる体勢を整える。
「影武者…八式!」
タイタンが檻を抜け出した瞬間、今度は八方位から現れた影がタイタンを襲う。
これも神術の一つ“幻覚”だ。
闘上もまた、女性にしては珍しい、ダークファイターだったので幻術の扱いはお手の物みたいだ。
“幻覚”は“具現”と違い、実体はないから物理的ダメージはないが、相手の精神へのダメージや錯乱には向いている。そして、実体がない分、必要魔力は極めて少ない。
ガツッ!
へぇー、結構考えたんだな…。
闘上のやつ、幻覚の中に本物を一つ混ぜてやがる。こりゃタイタンも手に余るな…。
だが……。ダメージは殆ど0に近い。タイタンは、動きこそ遅いが、体力と防御力だけは底なしだ。ちまちまダメージを与えても限がない。
だが、そろそろ水上の準備もできたみたいだ。
「ウォーターロック!!」
あいつのは、神術の“具現”と、自分の得意な水霊術の特性である吸収を組み合わせてできている。タイタンの足を地面に、手を天井に、それぞれ拘束してそこからさらに魔力を吸収する。しかもあの場合は吸収した魔力を直接技の使用分に回してもまだあまりが出るくらいの吸収量だ。これならいくらタイタンが馬鹿みたいに体力があっても放っておいたら力尽きるだろう。
しかし、こいつらはそれじゃ終わらせねぇ…。
「沙鬼!龍斗!」
大地が叫ぶと二人とも分かったと頷く。
そして、3人同時に両手を前に突き出すと
「「「トライアングルデストロイヤー!!」」」
と叫ぶ
その瞬間、3人の間に強烈な光が集まり、一点に集中する…。
その色は、次第に紫色へと変化していき……
一気にタイタン目掛けて発射された。
そして、その光の球がタイタンにぶつかった瞬間、
タイタンは跡形もなく砕け散って…消えた…。
これは、神術の最後の一つ“破壊”だ…。
だが…。
ここまで使いこなせるなんて…。
こいつら、やっぱり普通じゃない。
戦うことに慣れているっていうレベルではない。戦うことに特化している。
そういった感じだ。
「お、お疲れ…。」
俺としたことがかなり動揺している。
「ああ、どうしたんだ?顔色悪いぞ」
大地が俺の顔を覗き込んで言う。
「それなんだけど…、俺は確かにお前らならタイタンぐらい倒せると思っていた。だが、お前らの実力は只者ではないって感じだった。いったい何者なんだ?おまえらは…。」
すると、驚いたような顔をして、水上が答える。
「そうか、天野にはまだ話してなかったな…。俺たちのこと。いいや、今説明する。俺たちは、もともと3人で活動していて…去年も区間戦争に出たんだ。そこで俺たち3人は、チームを組んで行動した。そのときについた俺たちの通り名は、“迅雷の狼牙”これは、俺たちが一瞬のうちに戦場を駆け巡り相手の冠球を砕く様からつけられたものだ。俺たち自身にも二つ名があってな、沙鬼は“幻霧の神鬼”。大地は“岩鉄の魔人”俺は“氷結の水霊”。しかしあまりにも早すぎる攻撃に、その姿を見た者は一人としていなかった。これが、俺たちが伝説とされていながら、普通に生活できている理由さ…。」
これはさすがに驚いた…。
この町に来てすぐに耳にした強者の噂、“迅雷の狼牙”。それがこいつらだったなんて…。
「どうりで…強いわけだ。」
これなら納得がいく。予想よりはるかに早いが、もうここで修行などする必要はない。
「じゃあ、もうマスターできてるんだから、帰るか?」
俺は3人に問いかけた。
「そうだな、俺もう腹が減ってたまんねぇ…。」
鳴るお腹をさすりながら、大地が言った。
「そうだな、私もそろそろ限界だ。」
「俺も。」
と、他の二人も賛成のようだ。
「じゃあ、帰りはすぐだから。んじゃ、行くよ。エスケープ!!」
一瞬、青い光が俺たちを包んで、視界が開けたらもうと扉をくぐっていた。
「さ、到着。」
「早いな…。」
水上が尤もな感想を漏らすが、みんなそんなことはどうでもいい。
早く飯が食いたい。それだけだ。
「じゃあ、すぐ千穂に飯作らせるから、俺の部屋で待ってて。」
「わかった。」
俺は言い残すと、リビングへ向かった。