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4.Apr.17 ロンバルディアの諸侯。ミラーノ。

張謙(ちょうけん)注釈:


本来この「文治十六年 4.」の条の「経文(きょうもん)」、つまり「春秋(しゅんじゅう)」という編年体史書の内容として表題に記入しているものは、「Apr.17 皇帝は、ロンバルディアの諸侯をミラーノに征伐する。教皇は、皇帝を破門した上、ロンバルディアは教皇を支持する為。」と書くべき。なお、本文として作者の(編者:逸文アリ)の詳しい描写は、経文に対して「伝文(でんもん)」と呼ぶ。


帝が諸侯を攻撃することが征という、蛮夷(ばんい)を攻撃することが伐という。「征伐」と呼べるのは、ロンバルディア諸侯は帝国外のアルプス山の部族を傭兵として取り入れて、反逆を起こすことためだ。この件の理由について記述するのは、帝にも大義がないと非難している。


そしてこの《春秋》に載せる戦は、大義名分があるもののみ。上の者については、君主であろう、教皇であろう、もしくは作者(逸文)の(逸文)ろう、その是非を明示しないまま、地点のみを書くのであれば、それは批判だ。


このような細いところで記述の方式を変えて(逸文)への態度を示すのが、「春秋の筆法しゅんじゅうのひっぽう」というもの、もしくは「書法(しょほう)」ということだ。

ストーリアの城下町は、三つの川が合わさる扇状地の上に広がっている。


 毎日通っていた城はそのデルタの要にあたる丘の頂に建てられていた。石灰岩を積み上げた円筒の塔が四隅に聳え、塔と塔の間を厚い城壁が繋いでいる。ビザンツ風の半円アーチが城門を飾り、門扉の上には双頭の鷲の紋章が色褪せながらも朝日を浴びて光る。城壁の内側にはロマネスク様式の小聖堂と殿下の居館があり、その石の回廊には、かつて帝国の工匠が彫ったという、大理石のローマの神々の浮彫りが今も残っていた。中央部には一面だけの青銅の鏡があって、私がよく身だしなみに使っていたものだ。城の周囲では、デルタ特有の地形を活かして、城下町に面する西側だけは召使川の流れを人工水路で束ね、深い本丸の堀としている。


もう一つのやや低い城は吊橋で本城と繋がり、東南方面にある城下町や東方面の平原を監視している。それが二の丸、すなわち兵営だ。毎週二日、騎兵として剣術を鍛えるため、この兵営に入って、マルコが訓練している兵や、四月から入ったジェノヴァやロンバルディアの傭兵と対抗訓練を行う。狭い場所では思うようにいかないが、断じて馬上戦闘に慣れないわけではない。


 城のことを後にして、そもそも丘を下ると、城下町は一変する。石造りは大聖堂と数軒の商館だけで、大半の建物は木造だ。暮らしの場としては不便だが、商人たちの商談の場としては申し分ない。毎日通っている町道の周りに白い漆喰で塗り固めた壁に、黒く燻した太い梁が格子のように走る。苔が生える屋根、天日が見えない小路、二階が一階より張り出しているのは雨を凌ぐためだが、おかげで通りは昼でも薄暗く、向かい合う家の住人が窓から手を伸ばせば握手できるほど狭い。通りの中央には浅い溝が掘られ、生活の排水がゆるゆると川に向かって流れていく。雨の翌日は泥濘、晴れが続けば砂埃。この国でまともな靴を履いている者は、商人か騎士くらいのものだ。この季節になると草木の花粉が飛んで、くしゃみに悩まされる者があちこちに見られる。そんなつまらない日々が過ぎていく。


 私が寝泊まりしている山崎屋は、そんな城下町のちょうど真ん中、召使川に面した通りにある。壁は漆喰が所々剥がれて梁が覗いている。それでも前の住人が残した蝋燭台と小さな書き物机があって、夜に本を読むには不自由しなかった。ただ昼になると起きないわけにはいかない。近くの精錬場から響く槌音と怒声が容赦なく、眠りたい私も眠れない職人もともに疲れ果ててしまう。


 朝は鐘の音で始まる。モザイク絵がある中央大聖堂の鐘が六時を告げると、エステル修道院の修道女たちの朝課の歌声がかすかに届く。その声を合図に、城下町の一日が動き出す。パン屋が石窯に火を入れ、肉屋が軒先に羊を吊るし、鍛冶屋の金槌が甲高く響き始める。召使川の桟橋にはジェノヴァの小型帆船が停泊しており、水夫たちが荷を降ろしている。源川のほうからは木材を運ぶ筏が流れてきて、筏師の怒声と川鵜の鳴き声が入り混じる。


 市場は三叉橋のたもとに開かれる。アルメニア人の絨毯売り、トッキシ人の香辛料商、ルーシの毛皮職人、ヴェネツィアのガラス屋、地元の農婦が並べた鶏卵と乾燥豆。十を超える言語が飛び交い、値切りの声が重なり合って、一つの巨大な喧噪を作り上げる。この国は税が安いだけが取柄だから、商人はどこからでも集まってくる。そしてどこへでも去っていく。彼らが残すものは何か。毎年六千万枚もの銀貨がここに流れ込み、そしてどこへ消えていくのだろう。


 昼を過ぎると町はいくらか静かになる。商人は商館に引き揚げ、職人は仕事に戻り、農民は畑へ帰る。大聖堂の鐘が三時を打つと、修道院から午後の祈祷の鐘が応じる。夕刻には晩祷の鐘が城壁に響き渡り、夜間外出禁止令の前に酒場が賑わう。蝋燭と油灯の灯りが窓々に点り、暗い通りに琥珀色の光が零れて、人々の影が揺れる。


一日の終わりもまた聖堂の鐘が告げる。晩祷が終わって一刻ほど経つと、夜間外出禁止令が発令され、町は再び不安な静寂に包まれる。それはまた、私が密かに城下を抜け出す合図でもある。


 月の光を除けば、闇ばかりの夜は深い。城壁の外は黒い森と草原が広がり、狼の遠吠えが時折聞こえる。城門は日没後に閉じられ、巡回の衛兵の足音だけが石畳に響く。満月の夜には召使川が銀色に光り、城の塔の輪郭が水面に映る。私は密かに巡回の経路を避けて、城から離れた川の畔で水を浴びる。その時こそ、短く結い上げた髪をほどいて、自分の体を清流に洗って、ありのままの自分を見つめる。


 そのたびに私は、はるか遠く殿下の書斎の窓に灯る一つだけの明かりを見上げて、あのお方は夜も眠らないのだろうかと思う。


 そして平民になっても、腐った果物を売りつける悪徳商人や、鴨肉の重さを誤魔化す肉屋と日々やり合い、厳しい毎日を過ごすことになる。もし税務官への復職が実現出来れば、全員捕まる。

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