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(前条の続き。)公は、ロンバルディアとジェノヴァへ手紙を送る。

「三川。」殿下はこちらに背を向けたまま、冷ややかな声を投げた。


ティルーンが扉を閉めるのを見届けてから、私は扉際に立ったまま気を緩めずに待った。「殿下。武器・装備の棚卸しと帳簿の確認でしょうか。」


「それだけではない。――籠城に備えた物資の確認もしなさい。木炭から順に、」私は心の中で数え始めた。「樹脂、木材。精錬鉄、銑鉄(せんてつ)。硫黄。葡萄酒、リンゴの木。小麦。塩漬け肉。干草、豆。石臼(いしうす)、かまど、天幕(てんまく)。刀、剣、槍、(ほこ)投槍(なげやり)騎槍(ランス)、盾、弓、矢、馬、驢馬(ろば)、牛、羊、豚、鶏、革鎧、鉄甲、全身鉄甲――それらの数量を。」


私はそのうちいくつか帳簿で把握している数をすぐに答えた。「殿下、城内の木炭は現在四千ポンドほど、乾燥樹脂が二樽、木材はおよそ五年木が百本分の蓄え、精錬鉄と銑鉄(せんてつ)合わせて千百ポンド、硫黄が八十ポンド、葡萄酒七百樽、城内のリンゴの木が七十本、小麦が二万三千(こく)、塩漬け肉が七千ポンド、牧草地が十三町歩(ちょうぶ)ほど、乾燥豆が七千四百ポンドでございます。貨幣は銀が二千万枚、金が千二百枚。殿下の御治世のもと、復活祭には来客の接待と宿場の補充費用として四十万銀貨が出ますが、復活祭までにさらに四百万枚ほど収納できる見込みです。」


殿下はわずかに安堵した様子で笑みを漏らし、続けた。「武器・装備については、石臼(いしうす)とかまどで五百人ほどが野営できる量、天幕(てんまく)も詰めれば同程度は収容できる。刀剣合わせて七百本、槍と(ほこ)は百本に満たず、投槍(なげやり)が三千本以上、騎槍(きそう)が四百本、(かし)の木盾が五百、鉄縁(てつぶち)の盾が三百、弓が百張り、矢が七千本、馬と驢馬(ろば)がそれぞれ二百頭、宿場から随時徴発できる分もある。家畜は比較的充足しているが、有事の際は城内の果樹だけでは賄いきれない。塩漬け肉はまだ十分にある。半身鎧(はんみよろい)が各種合わせて八百着、全身鉄甲と革鎧はそれぞれ五十着ずつ、馬鎧(うまよろい)が二十着余り。兜は非常に充足しており、三千人以上を武装させても問題ない。」


さすがは殿下だ。こういった無味乾燥な数字をこれほど把握されているとは。平時には使わないものまで私にはとても記憶できない。


「光、聞きなさい。私が希望するのはおよそ千五百名の兵士の募兵です。――左の書き物台に座って記録してください、」私はすぐに左の書き物台に腰を下ろし、青銅ペンに墨を含ませた。


「とにかく若くて頑強な兵士を。少なくても構わない。一人あたりの年俸は千銀貨を超えないこと、終身雇用も可――」


私は驚きを隠せなかった。「殿下、その条件では高すぎます――」


「話の腰を折らないように、三川閣下。――良い兵士には経験は要らない、マルコが鍛えてくれる。その中で重騎兵を百名前後、弓兵を百名ほど、残りは歩兵と投槍(なげやり)兵として方陣に組み込む訓練を施す。」殿下は一息に言い切り、「三川、今の武器・装備と必要物資を照合して、何が不足しているか見積もりなさい。」


私は今しがた書き留めた内容を頭の中で素早く見直し、重要な兵器にいくつか印をつけ、三十秒ほどで答えた。


「まず最も急を要するのはローマへの銑鉄と硫黄の買い付――」「精錬鉄を直接買えばよい、鍛冶場の負担を減らすために。」「では精錬鉄二千ポンドと硫黄三百ポンドの買い付け、およそ九万銀貨の見込みです。ローマは帝国領内ですので為替手形で送金できます。鉄は兵器と甲冑に、硫黄は消毒・燻蒸に使います。次に、ラテン王国から全身甲と馬鎧(うまよろい)をそれぞれ二百着。一着あたり七千銀貨として合わせて二百八十万銀貨です。必要であればあちらの近衛に袖の下を渡して長(ほこ)を手に入れることもできますが――」「不要です。」「承知しました。小アジアには市場が多いので、小アジア商館のハタクに商船団を取りまとめてもらい、馬用の乾燥豆を大量に運んでもらうことができます。最後に、城内の市民・侍女・衛兵に伐木または炭焼きをさせれば矢の材料や燃料として急いで揃えられます。こちらはほとんど費用がかかりません。合計しても二百九十万銀貨に満たない計算です。」一口に言い切ると、事の輪郭がかなりはっきりしてきた気がした。


「よろしい、明日命令を出しなさい。半時間でこれほど煩雑な手配をきちんとまとめるとは、あなたでなければ。」思わず微笑みが浮かんだ。日頃から帳簿を真剣に見てきた努力と数字を記憶する才覚が殿下の御認めを得た。それは本当に得難いことだ。


退室しようとしたところで、殿下に呼び止められた。


「もう一つ。マルコにジェノヴァとロンバルディアへ傭兵の依頼状を書かせたが、費用が非常に高くついた。あちらでは五人一小隊の兵士が一ヶ月で五千銀貨以上かかる。ロンバルディア戟兵(ほこへい)とジェノヴァ弩兵(どへい)をそれぞれ四十小隊、一年分雇うよう手配させた。その支払いを早急に届ける手配をしなさい。信書はすでに発出してある。」


「一ヶ月五千銀貨――両国合わせて四百八十万!?」私は仰天して倒れそうになった。殿下の声が珍しく真剣みを帯びた。


「どうあっても先方へ届けなければならない、しかもできる限り早く。帝国領内であれば為替手形で処理できるが、ロンバルディアもジェノヴァも帝国の外だ。外国への支払いは現銀を直接運ぶしかない。その現銀が本国の領内を通る際に、馬賊が――妨害に出てくるのではないかと懸念している。ラテン王国への甲冑代二百八十万もそれに加わる。」


「農村の民兵に沿道の警護をさせるわけにはいきませんか。」


殿下はため息をついた。「ご存じのはずでしょう、この辺りの農民は自分の村が襲われた時にしか結束して動かない。運んでいるものが何かを知れば、馬賊より先に農民が手を出しかねない。」


私の心拍が上がり、緊張が走った。


「とはいえ衛兵を派遣しても、外国宛ての現銀七百六十万以上を守り切れる数はない。歩兵の訓練が整うまで一、二ヶ月はかかる。傭兵が到着してからでは遅すぎます。」


「あなたと私の考えは一致している。だから、できる限り早く馬賊を片付けてほしい。」


「私が、ですか?」思わず腰が抜けそうになったが、殿下の口調は本気だった。そのとき頭の中に一つ妙案が浮かんだ。私は殿下に声を潜めて耳打ちした。殿下が声を立てて笑った。「確かにあなたらしい考えだ、私が期待していた通りの名案です。復活祭の当日にお願いしますよ。」


私は喜びを抑えきれず、すぐに引き受けた。


「マルコが衛兵の一部を率いて手伝いをする。当日に彼と方策を詰めればよい。」


「了解しました。――財貨の件のほかに、募兵の件も今すぐヴェローナに手伝ってもらって告示を起草します。明日城内各所と城門の出入口に貼り出します。」


殿下はうなずき、退出を促した。私は椅子の背後の殿下に深く一礼して、秘書官室に戻った。マルコと二人の侍女に計画を打ち明けると、マルコは思わず笑い声をあげた。クレータとヴェローナは対照的に真剣な顔で私を見つめていた。


「貴方様、命を賭けるだけでなく、運まで賭けておいでです。」クレータが眉をひそめ、私の目をまっすぐに見た。


「ヴェローナも良い計画とは思えません。――本当に馬賊と戦うおつもりですか?」ヴェローナが私の手をぎゅっと握り、自分の存在を確かめさせるように言った。


「ヴェローナ、世の中には試してみなければならないことがある。騎士として、自分の腕を試し、自分と国の命運を決める機会が得られるのは、幸運なことだよ。」私は笑いながらヴェローナの頭に手を置いた。


「ヴェローナが言いたいのはそういうことじゃなくて。でも決めてしまったなら……」ヴェローナは不満そうに首を振った。


「必ず無事に帰ってくる。心配しないで!」私はヴェローナを抱きしめようとしたが、どう考えても抱えられない。マルコに目を向けると、マルコは笑いながらうなずいた。「復活祭には十分間に合います。」


礼を言い、倉庫から銀貨を受け取る許可証をマルコに書いて渡し、マルコとクレータを下がらせた。続いてヴェローナと一緒に告示を書き上げた。


「閣下……」書き物が終わり油灯を消して廊下に出て扉を閉めたとき、ヴェローナが突然私の手を掴んだ。月明かりの下、その目に涙が光っていた。「閣下、もしできるなら、なるべく穏やかなやり方を選んでください。」

「私だってそう思っている。」妙案が気に入って浮かれてはいたが、ハイデと彼女の子どものことを思うと、やはり血を流すやり方は避けようと心に決めた。


ヴェローナはうなずき、私の手を離して走り去った。


疲れ果てた体を引きずって廊下に立ち、青銅の鏡で身だしなみを確かめた。いつも通り血色のない顔と華奢な体。ただ口をきゅっと結べない、柔らかくたるんだ唇だけが弱気を滲み出している。私は腰に手を当て、右の踵に重心を移してため息をついた。立ち去ろうとしてふと気づくと、今夜は満月だった。斜めに仰いだ空に目をやると、月光がまるで白銀を撒いたように、人の気配のない中庭を照らしていた。木々さえも殊更に冷たく見える。心に重いものを抱えているからこそ、この一面の月光の孤独と凄惨さが身に沁みるのかもしれない。


私は首を振り、居室へ戻って眠りについた。ますます、わからない、自分のこと、周りのこと。ただやって、戦いに勝つのみ。

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