表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

*エピローグ

 僕の高校の後夜祭では花火が打ちあがる。それを好きな人と一緒に見て、花火の間中に告白をしたら、その恋は実るって言うんだけど――それが、ナイトと一緒だったなら、どうなるんだろう?


「そうだなぁ……一生の愛でも誓おうかな」

「い、一生?! そんなの激重だよ!」


 ただの学校の言い伝えで一生分の愛を誓われても、重すぎて言い伝えの方がひしゃげてしまいそうだ。

 それなのに、僕のナイト――ニジくんは、嬉しそうに僕と指先を絡めるように手を繋ぎ、嬉しそうにグランドの端で花火が始まるのを待っている。

 さっき校舎裏で好きだなって言ってしまったけれど、僕が思っているよりもニジくんは僕のこと好きすぎるようだ。


(まあ、5歳の頃からばぁばに頼まれてナイトを買って出ているんだから、その時点で激重に好きだよね)


 冷静に考えてはみたものの、改まった感じでそう言われると、どう返していいかわからない。何を言えば、ニジくんの想いにちゃんと答えられるんだろう。それくらいの気持ちなのか、なんて呆れられないだろうか? 何せ、一度大嫌い、なんて言ってしまっているし。

 いまさらに自分お言動を悔やんでいたら、ドン! と大きな音がして辺りが色鮮やかに明るくなる。どうやら花火が始まったようだ。

 顔をあげると、暗くなった秋空に大輪の花が次々と開いていく。胸が澄んでいくようにきれいで、つい、見入ってしまう。

 そのとき不意に、「瑠衣」と呼ばれて振り返ると、ニジくんがすごい至近距離にいて――キスをされていた。さっき校舎裏でしたのより、舌が挿し込まれるような少し大人のキスで、口の中をなぞられてとてもドキドキする。

 たっぷりと味わうようにニジくんとキスをしていたら、いつの間にか抱き寄せられていて、逃げられなくなっていた。


「……ニジ、くん?」

「――やっと、手に入れたよ、瑠衣。もう俺のものだ」


 花火の灯りに縁どられたきれいな微笑みは、ぞくりとするほど美しい。だけどそれがすべて僕のものでもあると思うと、たまらなく嬉しくて興奮を覚える。もっと、もっと僕だけしか知らない姿をこの先も見せてくれたらいいのに、と。


「ニジくんも、僕のものだよ」


 そう囁き返すと、ニジくんはうっとりと嬉しそうに虹の目をして微笑む。花火の下で、もう一度僕らは少しだけ大人のキスを交わした。

(終)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ