*エピローグ
僕の高校の後夜祭では花火が打ちあがる。それを好きな人と一緒に見て、花火の間中に告白をしたら、その恋は実るって言うんだけど――それが、ナイトと一緒だったなら、どうなるんだろう?
「そうだなぁ……一生の愛でも誓おうかな」
「い、一生?! そんなの激重だよ!」
ただの学校の言い伝えで一生分の愛を誓われても、重すぎて言い伝えの方がひしゃげてしまいそうだ。
それなのに、僕のナイト――ニジくんは、嬉しそうに僕と指先を絡めるように手を繋ぎ、嬉しそうにグランドの端で花火が始まるのを待っている。
さっき校舎裏で好きだなって言ってしまったけれど、僕が思っているよりもニジくんは僕のこと好きすぎるようだ。
(まあ、5歳の頃からばぁばに頼まれてナイトを買って出ているんだから、その時点で激重に好きだよね)
冷静に考えてはみたものの、改まった感じでそう言われると、どう返していいかわからない。何を言えば、ニジくんの想いにちゃんと答えられるんだろう。それくらいの気持ちなのか、なんて呆れられないだろうか? 何せ、一度大嫌い、なんて言ってしまっているし。
いまさらに自分お言動を悔やんでいたら、ドン! と大きな音がして辺りが色鮮やかに明るくなる。どうやら花火が始まったようだ。
顔をあげると、暗くなった秋空に大輪の花が次々と開いていく。胸が澄んでいくようにきれいで、つい、見入ってしまう。
そのとき不意に、「瑠衣」と呼ばれて振り返ると、ニジくんがすごい至近距離にいて――キスをされていた。さっき校舎裏でしたのより、舌が挿し込まれるような少し大人のキスで、口の中をなぞられてとてもドキドキする。
たっぷりと味わうようにニジくんとキスをしていたら、いつの間にか抱き寄せられていて、逃げられなくなっていた。
「……ニジ、くん?」
「――やっと、手に入れたよ、瑠衣。もう俺のものだ」
花火の灯りに縁どられたきれいな微笑みは、ぞくりとするほど美しい。だけどそれがすべて僕のものでもあると思うと、たまらなく嬉しくて興奮を覚える。もっと、もっと僕だけしか知らない姿をこの先も見せてくれたらいいのに、と。
「ニジくんも、僕のものだよ」
そう囁き返すと、ニジくんはうっとりと嬉しそうに虹の目をして微笑む。花火の下で、もう一度僕らは少しだけ大人のキスを交わした。
(終)