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迷惑なコート【漫才】

作者: アラパン

漫才の台本を書いてみました。よろしければ暇つぶしに読んでください。

A:B:はいどうもー、〇〇〇ですー。


(挨拶省略)


A:寒くなりましたね。


B:そうね、めっきりね、寒いね。


A:そうすると皆さん、着込むでしょ、上着とかコートとか。


B:そうね、寒いからね、着るよね、寒い寒い言って。


A:そのコートでさ、シュルシュルがいるでしょ?


B:え?


A:シュルシュルがいるじゃない。


B:え?ちょっと待って、シュルシュルって何?新しいコートのジャンル?ブランド?俺知らないんだけど。


A:え?ホント?知らない人いるんだ。

 いや全然昔からの、スタンダードなコートよ。スタンダードコート(発音の良い英語で)。


B:発音良いな、いや、いいから早く教えて。


A:(不服そうな表情で)みんな着てるって。シュルシュル言う生地の、柔らか〜い材質のコート。たいがいフードが付いてて、たいがいフードにフワフワしたのが付いてるんだけど、そういうのがいるでしょ。


B:あぁ、はいはい、なんとなくわかるよ、あのシャカシャカいう材質のね、コート、うん、結構アレかな、年配の人とか着てるやつかな、茶色とか、グレーとか。「いる」っていうか、「ある」だけどね、コートだから。


A:シュルシュル。


B:え?


A:シュルシュル。


B:え?何?


A:シャカシャカじゃなくてシュルシュル。


B:なんだよ、いいよ、俺がシャカシャカって言ったの訂正してんの?なんのこだわり?いいよ。で?


A:名前、間違えないで。


B:名前だったの?よくわかんないけど。で、それが何?


A:困るよね。


B:困る?


A:うん、すごい困る。


B:困らないでしょ、あったかいだけで。むしろ助かる。


A:(大声で)いやいやいやいいや、困るでしょー。みんな困ってる。大迷惑。


B:なにが?みんな(客席の方を見ながら)?困ってる?何?わかんない、ごめん教えて。


A:ホント?嘘でしょ?(大声で)あんな迷惑なヤツ、見たことない。最大級の迷惑。お前の顔くらい迷惑。


B:顔関係ないだろ。いいよ、面倒くさいよ、教えろよ。


A:(不本意という表情で)シュルシュルストン!


B:え?


A:シュルシュルストン!(何かが落ちるジェスチャー付きで)


B:ん?


A:シュルシュルストン!(さらにわかりやすく、置いていたコートが床に落ちるジェスチャー付きで)


B:あぁ〜、はいはいはい、コートがね、こう、椅子とかに置いておくと滑って落ちちゃうね。居酒屋の椅子とかね、鞄の上とかだと、こうシュル…


A:シュルシュルストン!(涙声で)


B:え?何?泣いてんの?急に?


A:(床に落ちたコートの方を見ながら、低い声で)誰にも気付かれず、


B:どした?


A:(続けて低い声で)冷たい床の上で、


B:なんだ?


A:時には油にまみれ、


B:続くのか?


A:時には踏みつけられ、


B:うん?床に落ちたコートの話?


A:引きずり回され…(泣き崩れる)


B:ごめんごめんごめん、悪かった悪かった。泣かないで。何なになに?どした?(抱き抱える)


A:うん、ありがとう。でも…、もう優しくしないで…


B:ん、ん?


A:雨の日も、風の日も、


B:あれ?まだ続くのかな?続くんだろうね。


A:極寒の吹雪の日も、灼熱の日照りの日も、


B:コートの話でしょ?暑い日も、って言った?


A:あんなに優しかったあなたが、


B:コートの話じゃないのかも。


A:今はもう他人。私のことなんて見向きもしない。

 「暑苦しいいんだよ。」なんて言って脱いで。ひどい。


B:やっぱりコートの話かな、擬人化してるけど。


A:「お前なんか、這いつくばって地べたとでもキスしてろ。」って言いたいんでしょ?ひどい、ひどいよ…(むせび泣く)


B:いやいやいや、ちょっと滑り落ちちゃっただけでしょ、ちょっと脱いで置いておいただけだし。

 帰る時また着るよ。外寒いから。


A:ホント?(明るい顔で)


B:ホントホント。寒い寒いって。あー、あったかいーって言って。


A:でも…


B:でも?


A:また脱ぐんでしょ?


B:ん?ま、脱ぐっちゃ脱ぐ…


A:いいえ!(大声で)


B:わっ!何!?


A:それどころか、明日は別の人と出掛けるんだわ!


B:ん、まあね、日によって違う上着に替えてね、毎日同じって訳には…


A:わたしが!(大声で)


B:何!今度は何よ。


A:堕ちた女だからでしょ。


B:堕ちたって何、堕落するって意味の堕ちるみたいに言わないで。

 落下しただけでしょ。


 (少しをとって)

 つか、女ってなんなの。さっきからちょいちょい女みたいな…


A:ひぃ〜〜〜〜〜!!

 汚らしいものでも見るような目で見ないで!

 冷たい、蛇のようないやらしい目!

 

B:や、そういうんじゃ…


A:これがシュルシュル。


B:え?


A:すごく困ったコート、シュルシュル。


B:大迷惑だな、ずっと堕ちてろ、もういいよ。


A:B:ありがとうございましたー。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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