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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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11章 魔王軍四天王  05

女悪魔といったが、そう判断したのは、頭には捻じれた角が、背中には蝙蝠(こうもり)のような羽が生えていたからだ。恐らく後ろに回れば尻尾もありそうである。


褐色の肌に、左右で縛られた濃い紫の髪、吊り気味の目には縦長の瞳孔を持つ赤銅色の瞳が輝いている。顔立ち自体は非常に整っているが、どちらかと言うと人外感が先に立つ。


豊満なボディを黒いボンテージファッション風の防具で押さえつけているその出で立ちは、いかにも『悪の女幹部』みたいなイメージである。


だがしかし……俺にとって問題となるのはそこではなかった。俺を困惑させるのは彼女のまとうオーラ、「アタシ今は敵だけど、実は仲間になるかもね……」と強く主張するキラキラオーラであった。




-----------------------------------


名前:バルバネラ

種族:凍土の民 女

年齢:19歳

職業:召喚師

レベル:72

スキル:

格闘Lv.12 鞭術Lv.14 

投擲Lv.6

四大属性魔法(火Lv.21

 水Lv.21 風Lv.23 地Lv.21)

付与魔法Lv.8 算術Lv.4 

魔力操作Lv.18 魔力回復Lv.19 

状態異常耐性Lv.6 魔法耐性Lv.7

魔素収集Lv.23 召喚Lv.27

気配察知Lv.10 縮地Lv.5 

暗視Lv.14 隠密Lv.12 俊足Lv.8

剛力Lv.13 剛体Lv.12 不動Lv.8 

瞬発力上昇Lv.6 持久力上昇Lv.5 

称号: 魔王軍 四天王

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キラキラオーラ持ちとはいえ今はどう見ても味方とは思えないので、遠慮なくステータスを見てしまった。


予想通り『魔王』の関係者なのには笑うしかないが、ステータス自体はなかなかに笑えないレベルである。


職業が『召喚師』であり、『魔素収集』『召喚』というスキルがあるので、『魔素』とやらを集めてモンスターか何かを召喚するという、そんなキャラ……人物なのだろう。


事実、今彼女の頭上の空間には怪しげな黒い穴が開いており、そこに黒い霧が吸い込まれていっている。


そしてその黒い霧の元は何かというと、それはこの場に集まってきているモンスターたちだった。


集まってきたアンデッドモンスターが、彼女……バルバネラの近くまで来ると、形を失い黒い霧に変わっていくのだ。


とすれば、『魔素』があの黒い霧を指しているのは間違いないだろう。


「師匠、あの人はいったい何者なんでしょうか。かなり強い感じがします……」


ネイミリアがロッドを構えながら言う。『魔王軍四天王』の強者感を感じ取ったのか、緊張の色が濃い。


「どうも『魔王』の配下らしい。ステータス的には俺以外だとちょっと相手をするのは大変かもしれない」


「『魔王』の配下には『四天王』と呼ばれる強者がいるという伝承があります。その一人でしょうか?」


ささやくように言うのはカレンナル。やはり刀を油断なく構えている。


「クスノキさん、どうするの?」


「俺が話をしてみよう」


やはり盾とメイスを構えるリナシャに答え、俺は一歩前に出た。


「我々はロンネスクの者だ。この地へはモンスターの討伐に来ている。この場に異変があって調査に来たところ貴方がいた。貴方は何者なのか、お答え願えるだろうか」


「……うっさい、消えろ」


バルバネラがしなやかな動きで右手をこちらに向ける。


放たれた魔法は極太の『ファイアランス』5本。それぞれが俺たち一人一人を正確に狙っているあたり、魔法の腕はスキルレベル通りのようだ。


俺がそれを『ウォーターレイ』ですべて相殺すると、バルバネラが片眉を歪めた。


「もう一度言う。我々は無用の争いを好まない。貴方は何者なのかお答え願いたい」


「……ウザ。さっさと消えろ」


バルバネラが『スパイラルアローレイン』を発動。無数の螺旋(らせん)を描く炎の矢が高速で飛翔する。


俺は同じく『ウォーターレイ』を『並列処理』で同時発動。すべての矢を迎撃する。


「チッ……」と舌打ちするバルバネラの唇から、鋭い牙が(のぞ)いた。


「……アンタ、ふざけてるね。余裕を見せてるワケ? この魔王軍四天王バルバネラを相手にその態度……」


はい自己紹介いただきました。


「やはり魔王軍四天王……!?」


ソリーンが思わず漏らした言葉を聞いて、バルバネラはハッと気付いたような顔をした。


「……つい喋っちまったか。まあいい、もとから逃がすつもりはないし。悪いけどね……」


バルバネラの頭上にある穴が徐々に広がり始めた。


「魔法はそっちも得意みたいだから、こっちも得意な技でいかせてもらう……」


なるほど、『召喚師』らしく強力なモンスターを召喚するつもりらしい。


阻止するか……と一瞬考えたが、どう見ても強制イベントなので無駄なことはせず見守ることにした。


直径10メートルほどまで広がった穴から、ヌルリと巨大な三つの犬の首が現れた。


そいつは周囲に睨みをきかすと、一気に穴の中から飛び出てくる。


全高だけで5メートルはあろうかと言う、三つ首の地獄の番犬。




-----------------------------------

ケルベロス(成体)


スキル:

剛力 剛体 

ブレス(炎) 

気配察知 

瞬発力上昇

隠密 咆哮

再生 回復


ドロップアイテム:

魔結晶8等級

ケルベロスの牙

ケルベロスの首輪

ケルベロスの毛皮

-----------------------------------




「ケルベロス……!?」


カレンナルのかすれた声をリナシャが耳聡く拾う。


「知ってるの、カレンナル?」


「はい……。私の故郷を壊滅寸前まで追い込んだモンスターと聞いています。三つ首の巨大な犬……間違いないでしょう」


その言葉を聞いて、バルバネラがクスリと笑った。


「……ふふん、やっぱ知ってるか。ま、有名なモンスターだからね。ち・な・み・に、一匹じゃないから」


その言葉に呼応するように、穴から更に二匹のケルベロスが飛び出し、地響きとともに着地した。


3匹で9つになる猛犬の頭は、低い唸り声をあげてこちらを威嚇する。


「ここは濃い魔素が大量にあるからね……。召喚を試すにはちょうどいい場所なんだよ……」


バルバネラの頭上の黒い穴が急速にしぼみ、ふさがっていく。とりあえずこれ以上は出てこないようだ。


しかしケルベロスか……昔やったゲームだと仲間になったりもしたんだが、感情の無い目を見る限り目の前の奴は無理そうだ。


「クスノキ様、さすがにアンデッドではないとなると、私たちでは……」


ソリーンが震える声で言う。俺は平静に見えるよう装って……実際慌ててはいなかったが……「大丈夫」と言っておいた。



「済まない、一つ確認なんだが、このモンスターは君の大切なパートナーとかなのか?」


俺は戦う前にバルバネラに確認した。倒してしまってから「実は彼女の大切な仲間でした」とかいって、妙なフラグが立つのを警戒したのだ。


「……ヘンな事を聞くね。これは召喚……呼びだして使役してるだけ。別にアタシとは何の関係もない……」


「分かった、ありがとう」


「……ホントにヘンな奴。まあいいや、さっさと消えて」


どこから取り出したのか、バルバネラが鞭を一打ちすると、3匹のケルベロスは一斉に地を蹴った。


「ヘルズサイクロン」


『ヘルズサイクロン』は災害級の大規模風魔法である。


そのまま放てば俺たちを巻き込んで周囲一体を更地にするのだが、それを念動力で収束、範囲を狭めてやれば――


ギャンッ!


きれいな円筒形を形作る、まさに上り龍のごとき旋風に為すすべなく巻き上げられ、憐れケルベロスは悲鳴と共に全身を細切れにされながら消滅した。


ドロップアイテムが空からぼとぼとと落ちてくるのを固まりながら見つめる聖女二人と神官騎士。


「これは『風龍獄旋風(ごくせんぷう)』!さすが師匠です!」


「あ、やっぱりこれがそうなるのか」


こんな時でもお約束を忘れないネイミリアに感心しつつ、俺はバルバネラに向き直った。


「は!? え!? なに!? なにが起こった……の!? ケルベロスが一撃……!? 3匹いたのに……!?」


これ以上ない程にうろたえているダウナー系女悪魔。


8等級のモンスター3匹といえば下手すると城塞都市をまるごと落とせるレベルの戦力だし、こうなるのは仕方ない。


というか、そんな戦力を召喚できる彼女は、本来ならかなり有能な人物のはずである。


バルバネラの今にも四天王キャラが崩壊しそうな姿を見て、俺は結構な罪悪感を覚えてしまった。ホントに悪いね、インチキ野郎で。


放心状態にある彼女に近づき、レジェンダリーオーガの大剣を首に当てる。


「さて、済みませんが少し話をお聞かせ願います」


「……ひ……っ!」


バルバネラはその場にへたり込み、恐怖に引きつった顔で俺を見上げた。

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