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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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8章  騎士団長の依頼(前編)  05

俺たちは一度監視しているであろう連中の視界から外れる所まで移動し、そこから連中のいる山へと続く森の中に入っていった。


森の中には多少のモンスターがいたが、正直過剰戦力ともいえる俺たちにとっては全く問題にはならない。せいぜい、連中に気付かれないように静かに処理することに気を使ったくらいである。


『千里眼』で位置を確認しながら森の中を進むこと1時間ほどで、連中がいる山のふもとまでたどり着く。


そこから山を登ることしばらくして、テントらしきものが見える場所まで来ることができた。


「気配が3つになっているな」


アメリア団長が声を潜めて言う。


確かに普通の人間だけがテント周辺に残っている。直前までは残りの2人もいたはずで、それが急に消えるというのは不自然だ。秘密があるとすれば……やはり『千里眼』で見えた、木が不自然に密集していた場所だろう。



とりあえず一人を解析。



-----------------------------


名前:バン バスク

種族:人間 男

年齢:32歳

職業:兵士

レベル:34


スキル: 

格闘Lv.5 長剣術Lv.4 短剣術Lv.6 

弓術Lv.3 四大属性魔法(火Lv.2 

水Lv.3 風Lv.3 地Lv.3)

算術Lv.2 毒耐性Lv.3 衝撃耐性Lv.2   

気配察知Lv.4 暗視Lv.4 隠密Lv.4

   

称号: なし

-----------------------------




ハンターだと3級クラスの人間、ということは練度はそこそこに高い。


職業が『兵士』ということは、どこかの国や領地に属する人間だということだろう。


「どうするの?」


「闇魔法を使って無力化してみよう」


メニル嬢に答え、俺は3人が目視できるところまで接近し、『闇属性魔法』+『精神感応』を発動、3人を順次支配下に置く。


3人が動かなくなったのを確認して、テントまで接近する。


眼の光を失って棒立ちになっているのは、いずれも迷彩柄のような装束を身にまとった男だった。


装備や体つきからして、やはり比較的大きな組織に所属して正式に訓練を受けた人間に見える。


テントの中は生活用品が揃えられていて、ここに長期間滞在していることも見て取れた。


俺は3人に装備を解除させテントに入れさせると、リーダー格の男に他の2人をロープで縛らせた。彼の縛り方は一目見てプロのそれであると知れ、そのような技術を磨いてきた男なのだと分かる。


「間違いなく組織、もしくは貴族の工作員だな」


「そうねぇ。予想はしていたけど、随分とキナ臭くなってきたわねえ」

頷き合う2人を見ながら、俺はこの後の行動の優先順位を考えていた。


今必要なのはこのリーダー格兵士への尋問、残り二人の行方の捜索、木が密集した場所の調査だ。


「アメリアさん、メニルさん、済まないが周囲の警戒を優先でお願いしたい。この男に色々聞いてみるが、邪魔が入らないとも限らない」


尋問中にナイフやら毒矢やらが飛んできて口封じされるのはこの手のシーンのお約束である。警戒しておくに越したことはないだろう。


2人が了承してくれたので、俺はリーダー格の男に尋問を始めることにした。


「お前の名前と所属を言え」


「名はバン・バスク、所属は……トリスタン侯爵領……領軍」


テント入り口で警戒していたメニル嬢がピクリと反応する。


「現在の任務は?」


「『闇の(かんなぎ)』と灰魔族の男の護衛……、それと灰魔族の男の指示に従うこと……だ」


「『闇の巫』とは何だ?」


「知らされていない……」


「灰魔族の男とはどのような人間だ?」


「灰魔族は人の精神を操る……種族だ……。『闇の巫』を操っている……」


なるほど、協会で捕まえたグリモとか言う男の同類か。


『灰魔族』が『闇属性魔法』に特化した種族だとグリモ捕縛後に聞いた。


「その二人の目的は?」


「知らされていない……」


「今どこにいる?」


「今は洞窟の中……」


「何者かッ!」


テントの布の向こう側からアメリア団長の鋭い叫び声と金属音、そして静寂。


気配察知に一瞬だけ粘りつくような魔力が感知できたが、その気配はすぐに遠方に離れていった。


「済まない、逃がした。ケイイチロウ殿は大事ないか?」


「ありがとう、こちらは問題ない。やはり口封じかな?」


「そのようだ。ナイフを……毒を塗ったナイフを投擲したようだ。叩き落としたのでこちらは問題ない」


「なによりだ。メニルさんは?」


「こっちも大丈夫よ。追跡しようとしたけどここでは無理ねぇ。逃げに入った灰魔族を追跡するのはほぼ不可能って言われてるし」


灰魔族はグリモの時に感じた通りかなりの曲者ぞろいで、暗躍していることは知られているが、生きて捕縛することがほとんどできないのだという。


「そっちは諦めよう。この場を去ったのなら雇い主のところに戻るだろうし、向こうから何らかの動きが後であるだろう」


俺は尋問中の兵士に向き直った。


「今言った洞窟に案内しろ」


「わかった……」


今はもう一人の、『闇の巫』とやらを確保しよう。






兵士が案内したのは、やはり不自然に木で隠されていた場所だった。


見ると重なった木々の裏側に、山の斜面に開いた洞窟らしきものがある。


そしてそれは、あの荒野で潜った『ダンジョン』に雰囲気が酷似していた。


「これもダンジョンっぽいわねえ」


「ダンジョンだと……!?『厄災』の前兆といわれるものか?」


メニル嬢の言葉にアメリア団長が眉を寄せ険しい顔をする。


「多分ね。ということは、ここにも『厄災』の眷属がいるのかしら?」


「その割に奥にモンスターの気配がないな。とりあえず入ってみるか。付いてきてくれ」


俺が先頭になって洞窟に入る。俺たちがいない間に暗殺されても困るので、兵士も付いてこさせた。


洞窟は一本道で、奥までほぼ直線に続いていた。


途中から石組みの通路に変わり、洞窟と言うより建物の中にいるような雰囲気に変化する。


気配察知に感、奥にあの妙な気配が一体だけでその場にとどまっているようだ。


警戒しながら奥に進んでいくと、ホールのような空間に出た。


通路と変わらない石組みの部屋だが、数本の円柱が規則的に立ち並び、床の中央には大きな円を基本とした文様……魔法陣のようなものが描かれている。


その魔法陣の中心で、一人の女の子が膝を折って何かに祈りを捧げていた。


その女の子の背には黒い鳥のような翼が生えている。有翼人と呼ばれる種族である。




-----------------------------


名前:セラフィ トリスタン

種族:有翼人 女

年齢:13歳

職業:闇の巫

レベル:14


スキル: 

四大属性魔法(火Lv.3 水Lv.3 

風Lv.3 地Lv.3)

算術Lv.3 降魔の法Lv.6

   

称号: 

闇に仕えし者


状態: 洗脳

-----------------------------




姓が『トリスタン』なのは偶然か、それとも兵士が言っていた『トリスタン侯爵』の関係者ということなのか。


職業『闇の巫』は聞いた通りだが、具体的にどのようなものなのかは不明。


スキル『降魔の法』、彼女が『闇の巫』として持っている特殊能力ということだろうが、これも不明。


称号の『闇に仕えし者』は、職業と関係がありそうだが、もし『厄災』と関係があるなら、ネイミリアが言っていた『闇の皇子』とつながる可能性もある。


そして状態のステータスが新たに表示されているが、『洗脳』とは……。



「彼女が『闇の巫』らしいが、洗脳状態にあるようだ」


「うん? どうしてそのようなことが……いや、それは聞くまい。それでどうする?」


アメリア団長が女の子……セラフィを見ながら言う。


実際のところ、セラフィが今何をしているのか全く分からない。


分からない以上、祈りをやめさせることが良いことなのか悪いことなのかも判断がつかない。


しかし状況から見て、どう考えても良からぬことである可能性の方が高いだろう。


というか、前世でのメディア作品知識が、これは何か悪しきものを召喚しているとか、そんな状況なのだと訴えかけている。


「声をかけてみる」


俺は依然として祈りを続けている女の子の側に行き、しゃがみこんでその横顔を覗き込んだ。

瞑目しているまだ幼さの残る顔は非常に整っており、どこか高貴な雰囲気をも漂わせている。


金糸のようなロングヘアを額で左右に分け、あらわになった額にはサークレットの宝珠が輝いていた。


例によってキラキラ感があふれているのを除けば、一見して良家の子女と言った雰囲気……なのだが、なぜか着ている服は黒いハイレグのレオタードにマントという、この年齢の少女に着せるには激しく問題のあるものだった。


確か長男がやっていたゲームにはこんな格好の女の子がいっぱい出てきたような……今は思い出に浸ってる時じゃないな。


「済まない、我々はニールセン子爵配下の者だ。貴女は何者であるのか、ここで何をしているのか教えてもらえないだろうか?」


俺が問いかけてもセラフィは微動だにせず、ぶつぶつと呪文のようなものを唱え続けている。


思い切って肩をゆすってみたが、やはり反応はない。


と、彼女の呪文のトーンが急に上がってきた。恐らく今行っている儀式(?)が、クライマックスに近づいているのであろう。


「洗脳を解くしかないようだ」


俺は2人に伝えると、『闇属性魔法』+『精神感応』を発動した。


『洗脳を解く』と言ったが、やることは結局前にも行った『精神支配での上書き』である。


『俺のモノだ俺に従え』の念を送ること数秒、セラフィは小さな体をビクンと震わせて急に立ち上がった。


が、それと同時に――


「魔法陣が起動してるわっ! そこから離れてケイイチロウさんっ!」


メニル嬢の叫びに応え、俺はセラフィを抱えて魔法陣の外に出る。


振り返ると床の魔法陣が怪しげな光を放ちながら、僅かずつ大きさを広げている。


「嫌な気配だ、一旦引くぞ!」


アメリア団長の言に従い、俺たちは洞窟の出口へと急いだ。

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