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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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7章 王門八極  02

次の日は、ネイミリアの雷魔法習得のために、ロンネスクから走って2時間ほどの荒れ地に来ていた。


赤茶けた広大な大地の上に、家ほどの大きさの岩が数十も横たわる、非常に奇妙な……はっきり言えば、ロールプレイングゲームのフィールドのような土地である。


昨日訓練の帰りに協会に寄り、サーシリア嬢に相談をしたところ勧められたのがこの狩場であったのだが……高レベルのモンスターが出る上に距離が遠いため、現在調査の手が及んでいないということで、「ついでに調査もお願いします(ニッコリ)」と頼まれてしまった。


さすがやり手の美人受付嬢である。


さて、この地に出現するモンスターは、ロックリザードやロックタートル、各種ゴーレムといった物理防御力が高い物が多いらしい。


魔法も上手く使わないと効果が少ないという、なかなか厄介な狩場である。


『気配察知』には、近い所に結構な反応がある。


「まずは周囲のモンスターを排除しよう。それからネイミリアの雷魔法を試そうか」


「分かりました。表面が硬いモンスターが多いようなので、私は貫通力の高い魔法を使ってみます」


「ふむ……、俺は付与魔法を試してみるかな」


『付与魔法』というのは、剣や槍、矢などに魔法的効果を追加する魔法……らしい。


副支部長の『光神牙』はその強力版らしいし、アメリア団長が遺跡で槍に炎をまとわせていたのも付与魔法だったようだ。


「師匠の付与魔法……それも楽しみですね!」


魔法マニア少女のネイミリアがキラキラした目でこっちを見てくる。


そんなに期待されても困るが……多分またインチキ能力でトンデモ付与魔法ができそうな気はする。


刀剣類に付与というと、ファンタジー的には火や風といった属性を付与するのが一般的なのだろうが、自分としてイメージしやすいのは実は空想科学的な方である。


「高周波ブレードとか、赤熱斧とか、光線剣とかそのあたりか。赤熱は火属性、光線は光で何とかなりそうだけど、高周波って振動だから地震つながりで地属性? 絶対違うな……」


とかぶつぶつ言いながら試行錯誤を繰り返すこと10分程……刀身が真っ赤に輝き、振ると謎の高音を発するオーガエンペラーの大剣が完成した。


複数の属性魔法を無理矢理念動力で固めるという力技で完成した一品である。


「これでとりあえず試すか。ネイミリア、行こう」


「はいっ」


まずはこちらに歩いてくる身長3メートル程のロックゴーレムの群れに向かっていった。




情報通り、見るからに防御力の高そうなモンスターばかりだったが、ネイミリアの『焦熱焔槍(しょうねつえんそう)』(炎を凝縮した槍を発生する魔法)『穿孔水牙(せんこうすいが)』(近距離で高圧の水流によって切断する魔法)といった魔法は、それらを容易(たやす)く霧に変えていった。


確かに彼女の魔力と魔法関係のスキルレベルは相当に高まっているようだ。


一方俺の方は、赤く輝く大剣でロックタートルの甲羅とかミスリルゴーレムとかをスパスパ切り裂いていった。


……いやなんか本当にスパスパ斬れるのが本当に恐ろしいんですが。


岩はともかくミスリルの塊が豆腐みたいに斬れるって、これはもはや防御力無視の攻撃なのではないだろうか。


戦闘を開始して20分ほどで、周囲のモンスターは完全にいなくなった。


実は回収した魔結晶には5等級6等級がいくつか含まれていたので、この狩場に異常が発生しているのは間違いなさそうだ。


が、調査より先にネイミリアの魔法を見ることにする。


「師匠、もう一度雷魔法を見せてください。イメージを固めたいので」


「分かった。ネイミリアがイメージを掴めるまで何度でも見せるよ」


俺は間隔を空けて「ライトニング」を繰り返し放つ。


それをじっと見ていたネイミリアだが、何度目かの後に(うなず)いて俺を止めた。


「ありがとうございます。多分つかめたと思います」


「そうか。期待してる」


「はいっ」


頷くと、ネイミリアはクリスタルロッドを前に突き出して構える。


ロッドの向こうに視線を据え、魔力を高め、圧縮。


ロッド先端の水晶が鋭く光り――


「ライトニングッ!」


ズドンッ!


腹に響く衝撃音と共に、ロッドの先端から閃光と共に雷撃がほとばしり、遠くの岩に突き刺さった。


独特の鼻を突くような香りが漂い、今の現象が確かに起こったことを嗅覚からも伝えていた。


「やった、やりました師匠っ!! あ……っ」


飛び跳ねたネイミリアは、しかし着地とともに膝から崩れ落ちる。


が、もちろんその前に俺が抱きとめた。


「あ、すみません師匠……っ! 力が急に抜けて……」


「魔力を一気に失ったんだろう。やはり雷魔法はかなりの魔力を使うようだね」


「はい、そうみたいです。あっ、支えていただいてありがとうございます」


「どういたしまして。それにしてもおめでとうネイミリア、遂に習得したな」


「はい、やりました……、うぅ、嬉しいです……っ」


俺にしがみついた状態で、ネイミリアは感極まったように泣き出してしまった。


エルフにとっては雷魔法はかなり長い間研究されてきた魔法のようだし、その感動も当然なのかもしれない。


インチキ能力所持者ゆえにそれに共感できないのがどうにも寂しい。


遂には俺の胸に顔を押し付けて泣き始めるネイミリア。


落ち着かせるためにその背中をポンポン叩いてやっていると……


「ねえねえアナタっ、今の魔法はナニっ!? まさか雷の魔法なのっ!? もう一回見せてっ! ねえねえお願いっ!」


いきなり横から女性に声をかけられた。

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