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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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3章 都市騎士団 02

しばらく魔法についてあれやこれやと話をしたり、魔法の訓練をしたりして、腹が減ってきたので森の中で食事をとることにした。


宿屋で用意してくれた弁当を食べたが、明らかに量が足りない。


インベントリを検索すると、『ワイバーンの肉 ×1』の表示が目についた。


「ワイバーンの肉って食べられる?」


「食べられますよ。昔里に飛んできたワイバーンを大叔父上が落とした時、みんなで食べました」


あ、副支部長ワイバーンを落とせるんだ。


意外とワイバーンって大した事ない気がしてきた。


「結構被害が出たので大変でした。エルフの戦士が総出で戦ったので、肉が行き渡らなくてケンカになってましたね」


なんかエルフのイメージが崩れる情報がもたらされた気がするが……まあいいか。


インベントリからワイバーンの肉を取り出し、食べる分だけナイフで切り取る。


地魔法で作った石の板の上に乗せて、ロンネスクで買っておいた塩と香辛料をふり、火魔法で石を熱して肉を焼く。


この辺りは異世界に来た直後のサバイバル(かなり緩め)の経験が生きている。


「いい匂いだな、これは美味そうだ」


しっかり焼けたのを確認して、ネイミリアと分け合って食べる。


鳥肉と豚肉が半々に混じったような味。淡泊だが臭みが少なくて、異世界肉の中では一番美味いかもしれない。


「おいひいれふ」


いや、キラキラ超絶美少女エルフが肉を頬張って食べるのはダメじゃないかな。


それでも可愛いのはとてもズルい気がする。




「ところで、師匠がワイバーンを落としたのって10日くらい前じゃありませんでしたか?」


ワイバーン焼肉二回戦の後、ネイミリアがふと気付いたように言った。


「確かにそれくらいかな」


「それなのに、肉は新鮮な感じがしましたが……実はこっそりまた狩ったんですか?」


「そんなわけないだろう。これはあの時のワイバーンだよ」


「それではなぜ新鮮なままなんですか?」


「それは……あっ……」


と俺が言葉に詰まったら、何かを察したのかネイミリアはズイッと顔を近づけた。


「師匠、何かあるんですね?」


「いや、実は肉とか腐らないように、空間魔法に時間が止まる機能があればいいなと思って……」


「思って?」


「気付いたら、『時空間魔法』になってた」


「はぁっ!?」


「いや、俺もよく分からないんだ。勝手になってたんだよ本当に」


「はぁ、師匠の言うことは時々本当に意味が分かりません」


「済まないね……」


ネイミリアがすこし()ねたような顔で腕を組む。


『空間魔法』は後天的に身に付けることができないという『常識』らしいので、それがさらに『時空間魔法』に変化したなんていうのは理解の範囲のはるか外にあるのだろう。


「そういえば師匠呼びに変えたのは何か意味があるの?」


「あっ、お嫌でしたか!?」


「いや別に、問題はないけど」


『クスノキ様』呼びよりはまだ心穏やかかもしれない。サーシリア嬢も気にしていたみたいだし、『師匠』呼びの方が対外的にもまだマシだろう。


「では引き続き師匠と呼ばせていただきます。それでですね師匠、できればこの間の『水龍螺旋衝(らせんしょう)』をもう一度……あっ、これは……」


ネイミリアが急に言葉を止め、眉を寄せ真剣な顔をする。


気配察知にいきなり大型モンスターの気配が飛び込んできたのだ。


しかも複数。さらに言えば、そのモンスターと接触をしている多数の気配……恐らく人間の気配もある。


魔法や剣戟(けんげき)の音、獣声などが森の木々の間を抜けてくる。


人とモンスターが戦っているのは間違いない。


「一応見に行ってみるか」


「そうですね。3級のハンターさんだと手に余るモンスターかもしれません」


ハンターの暗黙のルールとして狩りに横槍を入れるのは禁止ではあるのだが、気配からして察知されたモンスターはかなり強力な個体である。


念のために見ておいてもいいだろう、大丈夫なようなら手を出さなければいいだけであるし。


2人で森の間を疾駆していくと……どうやら我々の杞憂であったようで、戦いの場についた時にはすでに戦闘は終わっていた。


そこにいたのは数名のハンター ――出で立ちからみて2級以上――と、統一されたデザインの鎧に身を包んだ戦士たちの一団であった。


20名程いる、銀灰色の鎧をつけた戦士たちは、恐らく副支部長の話に出ていた『都市騎士団』ではないだろうか。


極めて統制された動きといい、練度の高さを思わせる集団であった。


「何者か?」


当然こちらの気配も事前に察知されていたのであろう。騎士のひとり、茶髪のイケメンが鋭く声を発した。


「私はクスノキ、こちらはネイミリア、どちらもハンターです。規模の大きい戦いの気配を察知したので様子をうかがいに参りました」


俺はハンターカードをちらりと見せて答えた。4級の部分は言い訳が面倒なので指で隠すのを忘れない。


「相分かった、しばし待たれよ」


イケメン騎士殿はそう言うと、近くにいた部隊長と思われる女騎士の下に向かった。


「……たまたま近くにいたハンターということですが、そのまま行かせて構わないでしょうか?」


「ふむ、それは構わないが――」


俺は何かを答えている女騎士を見て、答えを待たずに帰りたい気分になっていた。


なぜなら、他とはデザインの違う蒼銀の鎧に身を包んだ、燃えるように赤い髪をポニーテールにしているその女騎士は、遠目に見ただけで分かるほどの超絶美人であり、さらに……あの『メインキャラ的キラキラオーラ』を全身にまとっていたからだ。




「貴殿ら、付近で特殊なモンスターの気配を感じたことはないか? この辺りで大きな音がしていたはずなのだが?」


キラキラ超絶美人騎士団長(イケメン騎士が『団長』と呼んでいた)は、近くで見るとかなりの長身だった。170㎝は超えているだろうか。


精緻(せいち)な装飾がされた蒼銀の鎧もまぶしいが、美少女エルフと合わせて2人分のキラキラオーラに囲まれて俺は目を開けているのがつらい。


「いえ、特に感じたことはありませんが……、その音というのはどのようなものですか?」


「腹に響くような衝撃音だ。落雷の音に近い」


「ああ、それは……」


昼前にネイミリアに見せた雷魔法、「ライトニングバースト(俺命名)」の音だろう。


「恐らく私が使った魔法の音でしょう。音だけは派手な魔法でして、お騒がせして申し訳ありません」


「ふむ、そうであったか……」


美人騎士団長は切れ長の目を細め、俺を値踏みするように眺めた。


歳は20代中盤だろうか。正直、女性の年齢を見分ける自信はないので確信は持てないが。


「ところで貴殿はロンネスクから来たのだろう? 何か変わったことはなかったか? 噂などでもいい」


「私はハンターなのでその界隈(かいわい)の事しかわかりませんが、2日前にオーク狩りの谷でモンスターの氾濫が発生しました。昨日解決しましたが」


「む、それは(まこと)か? 規模は分かるか?」


「かなり大規模だったと聞いていますが、詳細は協会のほうに聞いていただいたほうがよろしいかと思います」


「分かった、協力感謝する。ああ、ハンターなら知っているとは思うが、この森にワイバーンを一撃で撃破する未確認のモンスターが出現した可能性がある。気を付けてほしい」


ネイミリアさん、「あ……っ」とか言うのはおやめになってください。


切れ者っぽい女騎士殿が怪訝(けげん)な顔をされていますよ。


「……分かりました。今日はもう狩りを終えたので、ロンネスクに戻ることにいたします」


俺は一礼をするとネイミリアを促し、その場を後にした。


遠くで、「街の方で事案が発生していたようだ。今回の調査はここまでにする。他の隊も引き上げさせろ」という女騎士団長の声が聞こえた。

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