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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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25章 → 26章

―― 『逢魔(おうま)の森』 最奥の遺跡


 『逢魔の森』


 強力なモンスターが跋扈(ばっこ)する、いまだ全容の知れぬ暗黒の森。


 その深い森の最奥、人が決して足を踏み入れることのかなわぬ場所に、この世界には似つかわしくない不思議な遺跡があった。


 完璧な球を半分に割ってそのまま地に置いたような、ドーム状の建物である。


 大きさは闘技場を覆うほど、表面は石でもなく、金属でもなく、ただ滑らかな光沢をたたえている。


 その遺跡の内部、とある部屋に、一体の人形が座っていた。


 人形には何本もの管がつながれており、時折その接続部分が淡く発光している。


『――特殊魔素ノ凝縮――兆候ヲ確認――』


 唐突に人形の口から声が漏れた。極めて無機質な声である。


『――『大厄災』ノ顕現――地上到達マデ――日ノ猶予――』


 人形の声に、微かに抑揚が混じる。


『――『大厄災』ニ対スル――唯一ノ手段――伝エル――誰ニ――誰カ――』


 人形が身じろぎした。つながれた管が波のように揺れる。


『――誰カ――誰カ――警告――誰カ――』


 人形の発する声はついに悲痛な色を帯び始めた。


 『何か』を『誰か』に伝えねばならぬという強烈な意志が、人形の口を動かしているかのようであった。


『――誰カ――誰カ――コノ星ヲ――誰カ――』


 人形は言葉を発し続けた。それが己の存在意義と言わんばかりに。


『――誰カ――ココヘ――誰カ――願ウ――』


 一心不乱の言葉はしかし、無機質な壁に阻まれ、誰の耳に届くこともなかった。






―― 城塞都市ロンネスク  とある民家


「皆さん、どうやら女王陛下が動かれたようです」


「あっ、ついにですか!? 師匠はどうするんでしょう」


「サヴォイアで上位貴族になったからには、ケイイチロウさんには断るという選択肢はないと思う。私たちも準備しないと」


「ご主人様が王様に……素敵ですねっ!」


「セラフィさんもシルフィさんも心のご準備を」


「え……っ? あの、どういうことでしょうか?」


「意味がよく……わからないです……?」


「多分、近いうちに師匠が女王陛下と結婚して王様になるんです」


「正確には王配……ということになりますが」


「えっ!? えっ!? それって本当ですか!?」


「うそ……そんな、聞いてなかった」


「ごめんなさいね、確定した情報じゃなかったの。でもこれで私たちのすることもはっきりしたし、あとは進むのみね」


「進む、ですか? でもどこへ?」


「よくわかりません……」


「この間お話した時に女王陛下がおっしゃっていたんです。師匠の正妻は立場上自分になるけど、側室については制限を設けないって。師匠が望むなら身分とかも問題にならないそうです」


「ええっ、そんなお話が……」


「すごい……さすが女王陛下……」


「実際は半分諦めた感じではいらっしゃいましたが。しかしクスノキ様の周りにいらっしゃる方は誰もが国にとって有用な人材だから……ということもあるようです」


「ケイイチロウさんが選んでくれなかったら仕方ないけど……でも最近ケイイチロウさんもやっとこっちの気持に気付いてくれたみたいだし、ね」


「師匠ならきっと全員を幸せにしてくれると思います。その分師匠のお力になれるようにしないといけませんね」


「そうですね、もし選んでもらえるなら……この身を賭してお役に立たなければ」


「わたしもお役に立ちますっ! 専属メイドですし」


「ラトラもきちんと気持を伝えないとダメですよ。メイドではなく、妻になりたいなら」


「妻……うぅ、恥ずかしいです……っ」


「ねえ、わたしたちはどうするのセラフィ?」


「えっ? それは……どうしよう……急に言われても心の整理が……」

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