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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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23章 悪神暗躍(前編)  03

「じゃあハンター協会としては、一部ハンターを事が終わるまでロンネスクにとどめておく感じなのか。協会からの指名依頼にするというのは結構思い切ったね」


「普通はそこまでやらないのですが、今回は『厄災』がらみということで支部長も重く考えたみたいです。その上で『魔力視』スキル持ちがいるパーティは別の仕事が依頼される予定です」


夕食の場でサーシリア嬢が教えてくれたハンター協会の対応は、とりあえず想定内の感じではあった。


とはいえ半独立機関であるハンター協会がここまで領主と歩調を合わせるというのはそうあることではないらしい。


首都やロンネスクはそれだけ普段から領主と協会が連携を密にしてきたということだ。


「ここまでできるのは、ケイイチロウさんがロンネスク支部に多大な貢献をしてくれているからでもあるんですよ。副支部長もそこは認めていらっしゃいました」


「そうなの? ああ、魔結晶を大量に持ち込んでいるから、臨時に動かせるお金が増えたってことかな」


「それもありますね。でもそれ以上に、ケイイチロウさんのような力のある方が協会に協力的な態度を取っているのも大きいんですよ。ハンターの中には、協会という組織を敵みたいに思っている方も意外と多いんです。そうじゃないのに……」


「それは……サーシリアさんの立場だと辛い所だよね。俺は両方の考えが分かる立場にいるから理解できるけど、多くはそうではないからね。でもそういうところで俺が役に立ってるならありがたいよ」


「師匠ってそういうところ本当にすごいですよね。あちこち偉い人と仲良くなって物事が円滑に進むようにしたり、先のことを全部見通していたり、一緒にいて驚きます」


ネイミリアまでが俺を褒め始めると、アメリア団長もうんうんと頷く。


「そうだな。ケイイチロウ殿ほどの力を持った人間は、本来なら権力者から厳しく警戒されるはずだ。しかし公爵閣下も女王陛下も、ケイイチロウ殿のことを心から信頼しているように見える。これはひとえにケイイチロウ殿の心掛けの賜物だろう」


「分かります。女王陛下はご主人様のことをすごく信じていらっしゃるって感じます!」


ラトラは基本俺に対する評価が甘々ではあるが、それでも皆に世渡りが上手くいっていると認められるのはホッとするな。


「ありがとう。俺が信用されているのは、皆が俺を信用してくれてるからっていうのもあると思う。どんなに力があっても1人じゃできる事たかが知れてるし、人に信用してもらうのも難しいからね」


と言うと、皆が俺を見る目が優しくなった。


もと日本人としてはこういうことを口に出すのは恥ずかしくはあるけれど、やはり口にしなければ心は通じないのも事実である。


「クスノキ様の周りには本当に多くの人間がいらっしゃいますからね。しかも皆クスノキ様のことを信頼しています。どうかそれをお忘れになりませんよう」


エイミが珍しく自分から口を開く。


確かにこの世界に来てから、随分と多くの人と知り合った気がする。しかも多くはキラキラ超絶美形ばかりなのがすごいんだよな。


前世じゃ見たこともないような美女美少女が次から次へと……というかやっぱり知り合いの男女比が激しくおかしい気がするな。


などと思っていると、皆が俺を見る目が急に何かを訴えかけるような感じになった。


え、今考えたことがバレた? 『精神感応』が間違って発動してたり?


俺が少しドキドキしていると、ネイミリアが真面目な顔をして口を開いた。


「師匠、師匠は『厄災』を全部倒すつもりなんですよね?」


「自分の力でそれができるみたいだからね。他の人でもできるだろうけど、そうなると被害が増えるだろうし」


「『厄災』はあと2体、多分どちらも師匠の力なら簡単に倒せるんだと思うんです。でもその後、師匠はどうするんですか? やっぱり貴族として領主様になるんですか?」


「え? ああ、それは……」


え、なんで急に……と思ったが、確かにそれも大切な話ではある。


どうやらこのまま行くと伯爵位は確定のようだし、伯爵ともなるとかなり広い領地に封じられることになりそうだ。


それだけは避けよう……なんて以前は考えてたけど、これだけ功績を挙げた人間に領地の一つもやらないというのは、逆に女王陛下の評判を落とすことになる。


かといってすべてを捨てて別の土地に逃げる、なんてのは現実的な話ではない。


当然のことながら今までの信用を失う行為であるし、在野の人間になれば良くも悪くもあちこちの勢力から接触があるだろう。


そんなものをあしらいながらの流浪の生活とか自給自足の生活なんて俺はゴメンである。もと日本人としてはできる限り文化的文明的な生活をしたいのだ。そのために今まで動いてきたのであるし。


とすればなるほど、ネイミリアはそろそろ俺に腹をくくれと言っているのかもしれない。


確かに上位貴族となり領地を治めるとなったら、色々考えないといけないことも多い。


もちろん一番重要なのは人材だ。これはどんな世界でも共通だろう。


「師匠?」


「ああごめん。そうだね、女王陛下には伯爵位は内定してると言われてるし、すべてが終わったら領主になるんだと思う。気乗りはしないけどね」


「その時に1人で領地に行くってことはありませんよね? 師匠は色々な人と知り合って、信用も得ているんですし」


ああなるほど、優秀な人材を今からスカウトしておけということか。


天然ボケ気質の魔法マニアだと思っていたけど、まさかそんなことを教わることになろうとは。


「さっきも言った通り一人じゃできることは知れてるからね。もし来てくれる人がいるなら来てもらいたいし、声をかけておくよ。もちろん皆ももしよければ一緒に……なんてね」


うん? なんか皆さん急にまた目つきが変わってませんか。どうもこう、獲物を見つけた猫みたいな感じになってますけど。


「私行きますから。師匠に教わった魔法できっと役に立ちます!」


お、おう? 


「私はもちろんお供します、専属メイドなのでっ!」


ラトラはそうだね。


「あ、私は事務関係ならきっとお役に立ちます。領地経営でも必要ですよね」


確かにサーシリア嬢の事務処理能力は貴重だなあ。でもいいの?


「私は無論ついて行くぞ」


アメリア団長を引き抜いたら公爵閣下に睨まれそうなんですが……。


「私の力はきっとお役に立てるかと。専属メイドですし」


エイミの諜報能力は是非とも欲しい所だけど、陛下がお許しにならないんじゃないかなあ。


あとラトラもそうだけど、専属メイドって本当に何なの?


ともかくいきなり驚きの展開だけど、彼女らがいてくれるならこれ以上心強いことはない。


「みんなありがとう。その時はよろしくお願いするよ」


と流れで答えたが、全員ホッとしたような顔をしているのでよしとしよう。


「多分他にも師匠についていきたい人はいると思いますから、私たちの方で声をかけておきます。いいですよね?」


「え? まあ……うん、いいかな? でも正式には俺の方から頼まないといけないよね」


「事前に話をしておいた方が師匠も話がしやすいと思います」


「確かに……そうだね。じゃあお願いするよ」


魔法関係の話でもないのに、今日のネイミリアは押しが強いな。


まあ俺の知り合いのキラキラな人たちに声をかけるという話なら問題はないだろう。いずれも優秀な人たちだから、むしろ人材としては是非とも来てもらいたいところである。


だけど彼ら彼女らにも事情があるだろうし、ネイミリアが声をかけた時点で渋るなら俺も心の準備ができる。俺としてもありがたい提案ではある。


それより今は『悪神』対策だ。


妙に圧の強いニコニコ顔を見せる皆に少しだけ妙な胸騒ぎを覚えつつ、俺は彼女らにも協力を頼むことにした。

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