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2章 城塞都市ロンネスク 04

翌日朝一でハンター協会に行くと、昨日の倍くらいのコスプレ集団がたむろしていた。


一見すると荒くれ者の集団にしか見えないようなパーティや、どこぞの騎士団みたいなパーティもあって、見てるだけで飽きない。


男だけのパーティ、女だけのパーティもあるが、多くは男女混合だ。


ちょっと気になるのは女性比率がかなり高いこと、ほぼ半数が女性である。


解析で見てみると前衛は男、後衛は女が多い。


魔法があるから女性でも問題ないということなのかもしれない。


俺は掲示板を少し離れたところから見てみる。


異世界の平均身長は日本よりやや高めという感じだが、俺の今の身体はそれでも長身に入る方なので、人の頭越しに掲示板を見るのに苦はない。


「おお、ゴブリンにオーク、オーガにバジリスク、コカトリスにスケルトンにレイス。やっぱりこうじゃないとな」


すっかりゲーム脳な独り言をこぼしつつ、ハンター6級の新人として適当な獲物を探る。


……と言いたいところだが、どうやらゴブリンとキラーウルフの二択のようだ。


ちなみに、掲示板に下げられたA3用紙ぐらいの大きさの板には、モンスターの種類とドロップアイテム、出現場所などの情報が書かれている。


下位のモンスターはいくらでもいるので基本フリーで狩ってよく、中上位のモンスターは数が少ないので許可制になっているらしい。


超絶美人受付嬢サーシリアの前に男の行列ができていることにひとり納得をしながら、俺は協会を出た。




ゴブリンの狩場は逢魔(おうま)の森の近くにある、別の森の中であった。


というか逢魔の森は3級以上のハンター、もしくは都市直属の採取部隊しか入ってはいけないことになっているらしい。


昨日まではハンターではなかったので3等級魔結晶を出してもおとがめなしだったが、「本当はダメなんですよ(ニッコリ)」とは、ハンター登録後のサーシリア嬢の言である。


ゴブリンの森(俺命名)は都市ロンネスクから馬車で1時間ほどだが、俺は走っていくことにした。




-----------------------------


名前:ケイイチロウ クスノキ

種族:人間 男

年齢:26歳

職業:ハンター 6級

レベル:42


スキル: 

格闘Lv.8 長剣術Lv.9 短剣術Lv.7 投擲Lv.5

六大属性魔法(火Lv.6 水Lv.10 風Lv.10 

地Lv.10 雷Lv.4 光Lv.6)

時空間魔法Lv.8 生命魔法Lv.6 算術Lv.6 

超能力Lv.10 魔力操作Lv.5 魔力圧縮Lv.5 

毒耐性Lv.5 眩惑耐性Lv.5 炎耐性Lv.1  

多言語理解 解析Lv.2 気配察知Lv.8

暗視Lv.6 隠密Lv.6 俊足Lv.2(new)

瞬発力上昇Lv.2(new) 持久力上昇Lv.2(new) 

   

称号: 

天賦の才 異界の魂 ワイバーン殺し 


-----------------------------




うんイージー。


解析で他の人のスキルを見て、取れそうなものは取っておく方針は朝起きた時に決めた。


しかし『俊足』『持久力上昇』はともかく、『瞬発力上昇』は森の戦闘で取れてても良かった気がするが。


スキル取得にはなにか別の条件があるのかもしれない。





さてゴブリンの森であるが、俺のほかにいくつかの若いパーティがおり、次々と入っていくところだった。


俺は10代と思しき彼らとは距離を置いて、離れた場所から森に入っていった。


森は逢魔(おうま)の森に比べると木は少なく、代わりに下生えがやや多い。


邪魔な(やぶ)は剣爪猿の爪で刈り取りながら、森の奥を目指す。


適当に歩いていればゴブリンはいくらでも出てくるらしく、奥に行けば行くほど数が増えるという。


恐らく最奥にはコロニーとかがあるんだろうとは立ち話をした中年ハンターの言だ。


気配察知に感あり。数は6。


「お、来たか」


奥から小学生高学年くらいの体格の、緑の肌をした異形の人型モンスターが現れる。


手には棍棒のようなものを持っており、木の間を縫うようにしてこちらに走ってくる。


「ストーンバレット」


とりあえず強力すぎる超能力は封印して、魔法で対応する。


十分に手加減したストーンバレット、3匹のゴブリンが一瞬で破裂して消えた。


「これでもオーバーキルなのか……」


口にしつつ、目の前に迫る残り3匹を一息で真っ二つにする。


煙になって消えたゴブリンの代わりに1等級の魔結晶が6つ、腐葉土の上に残された。





まああれだ、確かに見た瞬間に逢魔の森のモンスターに比べると格段に弱いのは分かった。


分かった上で様子を見たのだが、これはあまりに弱すぎだろう。


森に入って1時間(この世界では1刻と言うようだ)程経ったが、インベントリには『魔結晶(1等級)×146』の表示。


あとからあとからGのごとく湧いてくるのだが、正直倒すより魔結晶を拾う方が面倒くさい。


「5級に上がるには1等級の魔結晶300個の納品が必要です(ニッコリ)」とのことなので、仕方ないがあと1時間は頑張ろう。


ソロで3等級を取れる新人ハンターがいきなり300個納品してもおかしくはないらしいし(前例はないようだが)。


本当のところ、自分がこんなに強いのはこの身体のおかげであるし、あまりイキがったことはしたくはない。


したくはないのだが、初めに3等級を出してしまった以上、逢魔の森に入れるハンター3級まではさっさと上げておきたい。


「これで300達成か」


考えているうちにノルマ達成である。


俺はさっさと帰ろうとして、ふと、本当の新人はどうやって戦うのか見ておいてもいいかと思いついた。


気配察知の範囲を広げるとそれほど遠くない場所でパーティが戦っているようだ。


隠密スキルを発動させ、そちらに走っていった。





「ああ、やっぱりこんな感じか……」


俺は今、木の上から若いパーティの戦いを見ている。


前衛2人、後衛2人の基本パーティで、前衛が盾と剣でゴブリンと真っ向からやりあい、後衛が魔法で援護をしている。


基本通りの戦い方なのだと思われるのでそれはいいのだが、前衛の攻撃も後衛の魔法も明らかに精度が低く、なかなかゴブリンに致命傷を与えられない。


10分ほどしてようやく5匹のゴブリンを全滅させたが、全員かなり疲れているようだ。


解析を使うとレベルもスキルレベルも低い。しかしこれが普通なんだろう。


嬉しそうにハイタッチを始めた若者たちを後にして、俺は言いようのない負い目を感じずにはいられなかった。





協会に戻ると、時間がまだ早かったせいかホールには人がまばらだった。


俺が『素材買取』窓口に行くと、そこには新人っぽい受付嬢が座っていた。


が、サーシリア嬢がその受付嬢に耳打ちをし、代わりにその席につく。


どうも妙に気を回されたようだが、何か理由があるのだろうか。


「クスノキです。魔結晶の買取をお願いします。ただ、少し量が多いのですが……」


「分かりました、こちらへどうぞ」


カウンターの奥の部屋に案内される。


そこで背負い袋いっぱいになった魔結晶×300を出す。


もちろん直前まではインベントリに入れていたが、袋に詰めかえたのだ。


どうも空間魔法はかなりのレアスキルらしく、しばらくは秘密にしておくことにした。


「これはすごい量ですね」


と言いつつ、サーシリア嬢は淡々と魔結晶をまとめて秤にかけ、300個あることを確認する。


「まさか本当に1日で集めるとは思いませんでした」


「そうですか? 先程受付を代わったのは、少しは予想していたからではありませんか?」


「ふふっ。新人をあまり驚かせるのも問題ありますので」


カマをかけたがサラッと流されてしまった。


この受付嬢は絶対敵に回したらマズい人だ。


長年の会社生活で培った勘がそう告げている。


「ええと、これで5級になれるんでしょうか?」


「ええ。1日で昇級はロンネスク支部では初のことですが、特に問題はありません」


いや、いくらやり手でも受付嬢がその場で判断は下せないだろう。


ということは、すでに上に相談済みということだ。


3等級をソロで、というのは予想以上にデカい話だったのか。


脇が甘いな、俺。

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