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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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15章 → 16章

――  トリスタン侯爵領 領主館 とある私室


ロンネスクから遥か西、緩やかな山脈に囲まれた広大な平野部にトリスタン侯爵領はあった。


侯爵領は肥沃な大地と資源に恵まれた鉱山地帯を持つ、サヴォイア女王国でも屈指の経済規模を誇る領地である。


その中央部、小高い丘になったところに、砦のようにも見える無骨な館が頑強な城壁に囲まれて鎮座していた。


トリスタン侯爵領領主館――


主の武断的な性格を反映するようなその館の一室に、黒い翼を背に持つ少女が立っていた。


少女の名はセラフィ。トリスタン侯爵の娘の一人である。


長い金髪を左右に分け額を見せているせいもあろうか、まだあどけなく見える少女の顔には今、焦りと不安の表情が浮かんでいた。


「シルフィ、今言ったことは本当なの?」


彼女が声をかけた相手は、椅子に座るもう一人の少女だった。


髪型が多少違うものの、セラフィと瓜二つの顔をした少女である。


背には同じく黒い翼が折りたたまれている。


シルフィと呼ばれたその少女は、セラフィの言葉にコクンと頷いた。


「あの(ほこら)はかなりの瘴気(しょうき)が溜まっているとお父様は言っていたはず。もしかしたら本体の一部が眠っているかもと……。そこに行けと本当に言われたの?」


「……うん。10日後には出発するって……」


顔に不安を浮かべているセラフィに対して、シルフィは人形のように無表情だ。


その瞳には感情どころか意志の光すらないように見える。


「そんな……。これ以上強い瘴気を呼びだしたら私たちの身体がもたないのに……」


「……大丈夫だから、お前なら耐えられるって言ってたから……」


「シルフィ……」


セラフィは目の前の少女の頬に触れた。


白磁のようなその頬は、やはり白磁のように固まったまま。


目をつぶりしばらく動きを止めていたセラフィは、不意に何かを決意したかのように瞳を上げた。


「クスノキ様なら、もしかしたら……」


セラフィは身をひるがえすと、確かな足取りでその部屋を後にした。

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