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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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15章 勇者パーティ(後編) 02

3刻(3時間)ほど休息を取った俺とエイミは再びダンジョンの探索を開始した。


探索と言っても部屋に出てくるドラゴンの群れをひたすら虐殺しながら進んでいくだけである。


10部屋ほど攻略しただろうか、それまでの部屋とは明らかに様子の違う、奥に祭壇のある部屋にたどり着いた。


入り口から祭壇までは白い石柱が並んでおり、いかにもそこまで進めと言わんばかりに通路を形作っている。


「モンスターがいないのが不気味ですね」


「そうだな。あの祭壇に近づいたら急に現れるとか、そういう仕掛けなのかもしれない」


とはいえそう分かっていても祭壇に近づかない訳にもいかなかった。


何しろ他に通路や扉がないのだ。ボスを倒さないと終わらないイベントなのだろうと諦めるしかない。


ゆっくりと歩を進めていくと、豪華な装飾の入った白い祭壇の上に、銀色に輝く祭具が(まつ)られているのが分かる。


形状から言うと弓だろうか。どう見ても実用性のなさそうな、いかにもゲーム的装飾の施された弓である。


祭壇まであと半分、というところで予想通り黒い霧が急に床から吹き出してくる。


その霧が一か所に集まると、六本の腕を持つ人型のモンスターの姿を形作った。


上半身が銀の毛皮に覆われ、頭部には犬の仮面をつけている。見ようによっては神々しささえ感じるモンスターである。


身長は俺より頭一つ分高いくらい。こういう人型のボスが巨大なボスより手強いというのはメディア作品ではよくあることだ。




-----------------------------


聖弓の守護者 



スキル:

気配察知 剛力 剛体 

不動 縮地 魔法耐性

物理耐性 回復

敏捷性上昇 破魔

    


ドロップアイテム:

魔結晶9等級

守護者の剣

守護者の斧

守護者の短槍


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9等級は『厄災』の眷属を超える強さ。6本の腕に持っている武器がそのままドロップアイテムになるようだ。『破魔』は言葉通りなら魔物相手の攻撃スキルだろうが一応注意しておこう。


しかし『聖弓の守護者』という名前を見る限り、祭壇にある弓が『聖弓』ということなのだろう。つまりここは『聖弓』というアイテムを手に入れるためのイベントダンジョンなのか。


「下がっていてくれ、9等級らしい」


「……わかりました」


エイミはそのまま後ろに下がり、遠くの石柱の陰に隠れた。


俺が大剣を構えると、向こうも俺を相手と定めたのか、半身を切って6本の腕に持つ武器を構える。


「エターナルフレイム」


少しズルいが先制は魔法を使ってみた。投射系の魔法は祭壇や『聖弓』に当たる可能性があるので範囲系の魔法である。


『守護者』に足元から炎の柱が噴き出す……その瞬間犬の仮面が鋭く発光し、炎となるべき魔力が一瞬で霧散した。


なるほどあれが『破魔』、つまり『魔法』を『破る』スキルか。魔法無効のボスはずいぶんと久しぶりだ。


要注意案件が解消されたので、俺は『縮地』を使って一気に間合いを詰めた。付与魔法はすでに大剣に施し済みである。


『守護者』は複数の武器を攻撃と防御にわけて構え、俺の攻撃を迎え撃つ。普通の使い手であったならそれだけで攻めあぐねたことだろう。


しかしインチキ付与魔法は、触れるそばから『守護者』の武器を斬り落とす。


慌てたように『縮地』で距離をとる『守護者』、さすがにこの付与魔法は想定外なようだ。


離れた『守護者』の犬の仮面が口を開く。


飛び道具だと直感した俺は、『守護者』の正面から縮地で移動。


直後に『守護者』の口から放たれた無数の光弾が、その先の壁をボロボロに破壊する。


なるほど超強力なショットガンというわけか。魔法無効といい、完全に接近戦専門のモンスターだ。


『守護者』は距離を取り、再度口を開く。


接近戦型モンスターが中距離戦を挑んでくるあたり、よほど俺の付与魔法を警戒しているようだ。


しかし中距離が一番使いやすいんだよな、『瞬間移動』の超能力は。


『守護者』が口から光弾を射出する寸前、俺は『瞬間移動』を発動。


放たれた無数の光弾が石柱の一本を粉砕する。


その様子を『守護者』の背中側から見つつ、反動で動けない『守護者』を後から袈裟斬りに。


『守護者』の身体は何の抵抗もなく両断され、黒い霧へと変わっていった。





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聖弓ソルグランテ



神界の職人ソルグランテが女神に依頼され作ったと言われる弓


邪な力を持ったもの、特にドラゴンに対して絶大な力を発揮する


使い手の魔力を矢に変えて射出するが、選ばれた使い手にしか扱えない


役目を終えると、自然とあるべき場所に戻る


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祭壇の上にあった弓はやはり『聖弓』であった。


『解析』してみると対『邪龍』用武器であることが嫌でも分かる説明がなされている。


偶然転送された場所でイージーに手に入れていいものではないと思うのだが……いや、言うほどイージーではないな。『守護者』だけでも相当な難関だ。


「クスノキ様、その弓は……?」


俺の手の中で銀色に輝く弓を見つめながらエイミが聞いてくる。


「『聖弓ソルグランテ』だそうだ。どうやら『邪龍』を倒すのに必要な武器らしい。持ち帰って女王陛下に献上しよう」


「そのような知識、いったいどこで……いえ、何でもありません。それより祭壇の反対側に扉があるようです」


「そこから外に出られるといいな」


「我々が入ってきた扉より大きなものなので、もしかしたらそちらの方が表の扉なのかもしれません」


「俺たちは裏口から来たってことか?」


なるほど、この『聖弓』を『使い手』とやらが手に入れた後なら、あのドラゴンの群れも難なく突破できるのだろう。


彼らが強力なアイテムを手に入れた後の『噛ませ』のドラゴンたちだったとすれば、あのクソゲー的難易度も納得いかなくもない。


などとゲーム脳を全開にしながら、俺は『聖弓』を試しに魔力を込めて引いてみた。しかしその弦はピクリとも動かない。試しにエイミにも引かせてみたがダメだった。


俺の剛力スキルでも動かないとなると、これは説明にあったように『選ばれた使い手』を探すしかなさそうだ。


しかしボナハ青年の悪意によって飛ばされた先で超重要アイテムを手に入れるとは思わなかった。これがゲームだったら脚本家の正気を疑うシナリオだな。



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