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月並みな人生を歩んでいたおっさんがゲーム的な異世界に飛ばされて思慮深く生きつつやっぱり無双したりする話  作者: 次佐 駆人


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14章 勇者パーティ(前編) 09

ボナハ青年は再起動までしばらくかかりそうだったので、お付きの武官2人と「二日後の朝ダンジョン調査の準備をして城門前に集合」という打ち合わせをして、俺は協会を後にした。


日が暮れた頃に家に戻るとそこには意外な客がいた。真紅のポニーテールをなびかせた長身美女、私服姿のアメリア団長である。


「ケイイチロウ殿すまないな。お邪魔をしている」


「ええ、ようこそわが家へ。何か急用でも?」


そう言うと、アメリア団長は少しばつの悪そうな顔をした。


「いやなに、例の男がロンネスクに来たと聞いてな。家に押しかけられるのも面倒だと思って、申し訳ないがこちらに一旦かくまってもらおうと思ったのだ」


「ああなるほど、それは賢明な判断だと思うよ。さっき会ってきたけど、かなりストレス溜めてるだろうから」


「何かあったのか?」


「支部長にかなり顔を潰されてたからね。容赦なくて驚いた」


俺が少し苦い顔をして見せると、アメリア団長はフッと笑った。


「確かにアシネー女史は大嫌いだろうな、ああいう男は」


「師匠、その男の人っていうのは、私たちと一緒に行くっていう人ですか?」


俺とアメリア団長のやりとりを聞いていたネイミリアが不思議そうに聞いてきた。


「そうだ。次の調査に3人加わるからそのつもりでいてくれ。ラトラとエイミもな」


「はいご主人様」「……はい」


台所でお茶の用意をしている2人が答える。彼女らは家ではメイド服を着ているのだが、アメリア団長がそれを見てちょっと変な顔をしている。


「師匠とアメリアさんはその人と知り合いなんですよね、今の感じだと。どういう人なんですか? あまり良い人には聞こえなかったんですけど」


「以前俺とアメリア団長がニールセン子爵領に行ったことがあっただろう? あの時にちょっとトラブルがあってね」


「それってどんな?」


「う~ん、それは……」


ボナハ青年の話をするには、必ずアメリア・メニル姉妹との偽の婚約話をしないとならないんだよな。実はまだ婚約の話は家ではしてなかったりするのだが、こうなった以上話さない訳にもいかないだろう。きっとなぜ黙っていたのかとなじられるんだろうな……。


「ケイイチロウ殿、貴殿の家族になら話すのは構わないと思うが」


「アメリア団長がそう言うなら。ただ話すのはサーシリアさんが来てからにしよう。彼女も知っておいた方がいいからね」


「分かりました。そろそろ帰ってくる時間ですよね」


ネイミリアがそう言うと、ラトラとエイミがお茶を運んできた。


いかにも見習いメイドっぽいその様子を見て、アメリア団長が俺に白い眼を向ける。


「しかしケイイチロウ殿は恩賜(おんし)の儀と昇段のために首都に行ったのだと思っていたのだがな。このような見目のよい少女を連れ帰り、あまつさえ給仕までさせているとは思わなかった」


「いやいや、この娘たちがメイドをやっているのは一種の職業訓練でね。俺が頼んだわけでも命令したわけでもないから」


「ほう。勇者にメイドをさせるのが訓練だと?」


「ラトラは勇者としての色々が終わったら、俺の下で働きたいって言ってるんだよ」


「勇者として名を馳せたら引く手あまただと思うが」


「あっ、アメリア様、それは私が強く望んでいるんですっ。ご主人様には命を救っていただいたのでっ」


見かねたのかラトラが助け舟を出してくれた。弱いご主人様(仮)ですまないね。基本男は女には勝てないんだよ。


「ふむ。助けた女性すべてを自分の手元に引き入れたら、それだけで屋敷がいっぱいになりそうだな、貴殿の場合」


「あっ、それは私も思いました。師匠はもっと気を付けた方がいいと思います」


えっ、なんでそこでいきなり反応するのネイミリアさん? だいたいそんなことする気はまったくないからね?


「エルフの里でだっていっぱい助けたことになってるんですよ。みんな師匠のこと狙っ……感謝してるんですから」


「わ、分かったから。気を付けるようにするから」


自分でも何が分かったのかよく分からないが、とにかく女性に注意しろということなら今までずっとしていることなので大丈夫なはずだ。


俺を心配するようにアビスが膝に乗ってきたので、俺はいつものペーストを食べさせてやる。夢中で手にしがみつく黒い子猫を見ていると胃が急速に回復していく。これで美味しく夕飯が食べられそうだ。


アビスがピクリと反応、サーシリア嬢が帰ってきたらしい。


「ただいま。あっラトラちゃんありがとう。うん、今日はちょっと疲れちゃった。あ、アメリアさんこんばんは。今日はこれからケイイチロウさんにお話を聞こうと思ってるんですけど、アメリアさんがいらっしゃるなら丁度いいです。色々と詳しく聞かせていただきますね」


サーシリア嬢の言葉には、角どころか棘が立ちまくっている。


ああ、みぞおちのあたりがまた悲鳴を……。






二日後、俺たちは再びロンネスクの城門前に集まった。


メンバーには事前に協力者が増える旨、そして今回のダンジョン調査で最終攻略を行う旨はすでに伝えてある。


実は思う所があり、全員に食糧などが入った背嚢を背負ってもらっている。メンバーは通常のモンスターならすでに相手にならないため、そこまで邪魔にはならないだろう。


出発に先立って、俺がボナハ青年ら3人の紹介を行った。


「こちらが今回から行動を共にすることになる方たちだ。こちらはケルネイン子爵のご子息でいらっしゃる、ボナハ・ケルネイン卿。剣術に優れていらっしゃるとのことで、前衛をお任せすることになる。ケルネイン卿、一言お願いします」


「うむ」


集合早々不機嫌を隠そうともせず俺と目も合わせようとしないボナハ青年だったが、さすがにここでゴネることはなかった。


軽鎧に長剣を下げた剣士の格好が違和感なく決まっている。アメリア団長の言う通り剣の腕そのものは悪くないのだろう。


「あ~、それがしはボナハ・ケルネインである。紹介の通り剣術を少々たしなんでおるので、前衛は安心して任されたい。見れば見目麗しい女性ばかりのようだが、もし何か困りごとがあれば相談していただければ力になれることもあると思う。よろしく頼む」


「困りごと」のところで俺を(にら)んだのには意図があるのだろうが、俺は別に彼女らには手を出したりしていないので無駄である。


「ありがとうございます。では次にキース・ホルツ卿。剣術と盾術に優れているとのことで、やはり前衛をお任せすることになる。一言お願いします」


ボナハ青年お付きの男性武官であるキース氏は、30歳代のベテラン戦士といった感じの人物である。先日ちょっとだけ話をした限りでは苦労人っぽい感じで、シンパシーをビシビシ感じる方であった。


「キース・ホルツだ。守りはお任せいただきたい」


「ありがとうございます。次はマリアン・ホルツ卿、魔導師ということで後衛をお任せすることになる。一言お願いします」


「マリアン・ホルツです。キースの妻です。魔法が得意なのでそちらで力になれるかと思います。女の子が多いみたいなので、仲良くしてくださいね」


マリアン女史は20歳後半の女性である。やはり夫婦揃って苦労をされているようで、身分制社会の悲哀を感じさせる方たちである。


その後は元のメンバーに簡単に自己紹介をしてもらい、俺たちは一路ダンジョンへと向かった。

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