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超現実的な魔導書  作者: 如月 蓮
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第7話:修行

「っあ!?」


意識を取り戻した俺は辺りを見回した。


「ここは……」

「起きた?」


その声がするほうを振り返ると、


「グニト……」


そこには俺の仲間の1人、グニトが居た。


「ここはどこだ!?奴はどうなった!!」

「落ち着いて。順番に話すから」


そしてグニトは一息置いてから話し始める。


「僕が君を見つけた時、君は意識を失っていたが、心臓や脈拍はちゃんと動いていたから僕たちが君をここまで運んだんだ」

「それで、ここはどこなんだ?」


窓から外を見てみると、現実に居た頃よりも遥かに近未来感のある街並みが広がっていた。村や町に居た時は異世界かと思っていたから、目の前の光景に俺は息を飲んだ。


「ここは神の加護によって護られている王国だよ。近代兵器はこの世界にある全40ヶ国すべての国が保有しているけど、この国以上の兵力や戦力を持っている国はない」

「どうしてだ?神の加護によって護られているって事が関係してるのか?」

「察しが良いね。そう。この国は『神界』と呼ばれる場所に居る最高神の1人。『全能神』がこの国を気に入ってるからなんだよ」

「よく知ってるな」

「君が出かけてる間リタースと一緒に調べてた」

「そういえば、リタースは今どうしてる?」

「ギルド内で待機中。すぐに動ける奴が必要だって言って」

「そうか」


俺はベットから起き上がり、テーブルの上に置かれていた朝食を食べた。


「君が作るとロクなことがないからね」

「うっせえ!」


痛い所を突かれた俺はご飯を口の中に掻っ込む。

皿洗いを終えたグニトは俺に聞いてきた。


「これからどうするつもり?」

「勿論あの野郎をぶっ倒す」

「勝算は?」

「分からない」

「ならまず力を付ける所から始めないと」


そう言ってグニトは立ち上がり、


「着いて来て。君に紹介したい人が居る」


俺がグニトに着いて行くと、


「やあ、連れて来たよ」

「この人は?」

「君に会いたいと言ってた人だよ」

「グニトさん、すみませんが叶世さんと2人きりにさせてくれませんか?」


黒くて長い髪にロングコートを羽織っている女性がグニトに向けて頼む。


「分かったよ。それじゃあ僕は先に戻ってるから」

「お、おい!グニト!」


引き止める時にはグニトはもう居なかった。

あいつ、ほんとに走るの速いな。

だが今はそれよりも──


「俺になんの用だ?」

「貴方を鍛えようと思いまして。倒したいのでしょう?奴を」

「ああ。アイツだけは俺が絶対に倒さなちゃいけない」

「その為に今から貴方の能力を研鑽します」


そこから苦痛の連続だった。停止と加速を繰り返し、肉体や精神に負荷がかかり始めると、ご自慢の再生で元に戻り、再生が間に合わず死んでもリセットされた状態で復元される…… 。


彼女に何度文句を言っても、『この方法が時間操作と特異体質を同時に磨き上がるのに適しています』の一点張りだった。

悔しいことに実際その通りで、時間停止の範囲は変わらないものの、自分でも分かるくらい長く止められるようになり、加速に関しても最大3倍まで加速することができるようになった。


そして再生・復元能力のほうはと言うと、傷が軽傷であれば痛みを感じない程になった。それでも死んだ痛みはまだ慣れないが。


「上出来です。最後はその『眼』、ですね」

「え?この眼が?」

「はい。今はどのくらい情報が見れるのですか?」


俺は『情報閲覧』を使い、辺りを見回してから。


「名前と能力だけ」

「ならやはりそれも鍛えましょう」

「ええ……」


俺はうんざりした声で応えた。またあれだけの苦しみが待っているのかと思うと、やる気も活力も失う。だがこの人が俺の事を本気で鍛えようとしてるのだけは分かる。だから。


「さっさと済ますぞ」

「おっ、珍しくやる気ですね」

「これで最後なんだろ?」

「ええ」

「この能力を鍛えるコツは?」

「これを解き続けてください」


満面の笑みで渡してきたのは四則計算の計算ドリルだった……。


「……一応聞くけど、これは?」

「見ての通り計算ドリルです」

「俺の事を馬鹿にしてんのか!?四則計算ぐらいできるつーの!!」

「なら私はいいと言うまで解き続けられますよね?」

「……………………は?」


訳も分からず素っ頓狂な声を出す俺を放っておいて、目の前の悪女は続けて言った。


「勿論その眼を使って問題を解き続けてください。その能力は情報を視覚化する能力です。つまり大量の情報が貴方の脳内に流れ込んで来るはず。それをてきぱきと処理できるようになれば更なる情報量にも耐えられる。早速始めてください」

「いやっ、おい待て──!」


そんな俺の言葉に耳を傾けることなくスタートの合図を出した。こいつ、本当は俺の事なんかどうでもよくて、ただただおちょくる為にしているんのではないか?としえ思ってしまう。


俺は『情報閲覧』と脳内演算をフルスロットルにして問題を解き続けた。


「はあ、はあ……はあ!」

「このくらい解ければ十分でしょう。特訓はこれでお終いです」

「やっっっっと終わったァァァァ!!!!」


身体中がボキボキと音を立てるが、それだけ俺が問題に集中していたと言うことだろう。

俺はどれだけ計算ドリルを解いたのかと思い、ふと横を見ると42冊の計算ドリルが積み上げられていた。


「これだけ解いていたのか……」


疲れきった俺は急な眠気に襲われ、その場で眠ってしまった。

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