第5話:源流狩り《オリジンハンター》の噂
俺がエルフの里で依頼をこなしていると、エルフの里に住んでいる住人に話しかけられた。
「あんた、『源流狩り《オリジンハンター》』の噂を知っているか?」
「『源流狩り《オリジンハンター》』?知らないな。どんな噂なんだ?」
老人は重い腰を降ろしながら、言った。
「その前に、少し昔話をしよう。かつて、この世界は『源主』と呼ばれる神々が統治していた。その頃は正に『楽園』だったよ……争いや貧困がまったくなく、幸せそのものだった」
老人はどこか懐かしむように、思い出を振り返るかのように語る。しかし次の瞬間、その懐かしむ顔が訝しそうな顔へと変わる。
「だが、そんな幸せな時間は突如として終わりを告げた。その神々が住まわっていた場所……『神界』に新たな神と名乗る者共が占領した」
「別に良いんじゃないのか?そいつらが『楽園』を築く2代目の『源主』って事になったんだろ?」
その問いに老人はゆっくりと首を横に振った。
「儂らもそれを期待していたが、結果はその真逆。『源主』達が居なくなった事で争いや貧困が起き、『源主』が消え空席となった『神界』を無理矢理埋めた者共は『源主』達には遠く及ばん。言ってしまえば奴らは紛い物なのだよ」
その答えにどう反応するのが正解なのか、俺には分からなかった。この老人は、『源主』が居なくなったのは神の紛い物達が『源主』の居場所を奪って『神界』に君臨していたから。と言ってるが、はたしてそうなのかと思う。
確かに『楽園』時代が終わり、この時代に生きる人は常に戦争や争いをしているのは間違いない。その原因は『源主』達が居なくなった事に他ならないが、それを『神界』に突如として居座った者達のせいにすることがただの八つ当たりではないかと思う。
「言ってみるかね?『神界』へ」
「そんなに簡単に行けるものなのか?神が住まう所なんだろ?」
「我々も殺し合う時によく訪れているよ」
「そ、そうなんだ」
こんな老人が神と殺し合ってるとか。怖いなこの老人。
「話を『源流狩り《オリジンハンター》』に戻すが──」
「ああ、そういえばそんな話があったな。結局『源流狩り《オリジンハンター》』って何者なんだ?」
老人は紅茶を飲み、一息置いてから口を開けた。
「"さっきも話した『源主』の継承者達を狩る者の事さ"」
「なんでそんなことを?」
「理由までは分からない。だがろくな事にならないというのだけは確かだ」
それは俺も分かっている。『時の継承者』との戦いで毒を用いていなかったら倒すことは不可能だった。だがそんな巨大な力を束ねて行うことなんてこの老人のようにろくなことではない事は同感だ。
「その『源流狩り《オリジンハンター》』は今どこに居る?」
「会う気か?止めはしないが危険だぞ」
「単なる好奇心だよ」
そして老人に『源流狩り《オリジンハンター》』の居場所を聞き、奴が居るというユグドラシルへ向かった。
読者の皆様おはこんばんにちは、作者の蓮です。さて次回はいよいよ2人の邂逅です!お楽しみに!