第1話:転生したその先で
次に目を覚ました時、俺は明るい森の中に居た。色素を作る細胞が無い俺にとって、今居る場所は日陰になっていて、日光もさほど差し掛からない所で少し安心した。
皮膚に痛みがないといっても、日光に弱いのは事実だ。それにしてもここはどこだろう?俺は確かあの時──"義父の手によって殺されたはず"。
「……っ」
殴られた痛みがまだ残っていてすごく痛い。吐き気までしてきた。
「…………」
気持ちが悪い感覚を抑えている時──
「……え?」
突如として目の前にデジタル画面のようなものが出現した。そこに書かれていたものは──
「……神無月叶世、経験値1。能力は『特異能力』情報閲覧……なんだこれ?」
おそらく俺に関する情報が表示されているのだろう。
俺は表示を消そうと両手を目の前でヒラヒラしてみるがまったく消えない。
俺は幻覚でも見ているのだろうか?経験値や能力といった概念が存在するのはそれこそファンタジーやメルヘンでしか聞かない。
「どうなっているんだ……?」
ここが死後の世界なのか、それとも異世界なのか。俺には検討もつかない。
「とりあえず歩くか」
そうして歩いていると、昼寝をしているゴブリンらしき群れを発見する。
(……異世界ファンタジーしか見ない存在がなんでこんな所に居るんだ)
そんな事を思っている時、水溜まりの塊がゴブリンの群れに近付いていた。
その時俺は確信した。あれはただの水溜まりじゃないと。じゃああれはなんだ?と疑問を抱いていると、それに答えるかのように俺の目の前に水溜まりの塊の情報が表れた。
俺はその内容を淡々と告げる。
「スライム、レベル300。全身が酸で構成されているため、一瞬でも触れてしまえばその部分が溶ける……」
なんだこれは?つまり水溜まり状態になっていたのは、その酸の特性を活かす為に、あえて液状化して移動する事で酸の面積を拡張する為だったのか!?
そんな常識外れな存在に度肝を抜かれているとなんとそのスライムが"ゴブリンの群れを丸ごと呑み込み、酸でそのゴブリン達をドロドロに溶かしていたのだ"。
「!?」
目の前で起きている光景に俺は背筋が凍りそうだった。あのスライムに目を付けられたら同じ未来を辿ることになる。と、悟った俺はスライムがゴブリン達を消化しているうちにその場所から離れる。
「なんだったんだ。あのスライムは……」
なんとか液状化スライムに見つからずにその場から離脱できたのは良かったのだが、その先でまたもや奇々怪々な光景を目にした。
それはゴブリンと見た目は13歳くらいの少女が腕相撲をしていたのだ。普通に考えればゴブリンが勝つのは火を見るより明らかのはずなのだが、結果はその真逆。勝ったのは13歳の少女だった。そしてその少女はと言うと、ゴブリンに勝った事で鼻が高くなり誇らしげに(ありもしない)胸を張っていた。
「ほんとなんなんだ、ここは……」
そんな言葉を呟いていると、木々の隙間から小さな田舎村のような場所を見つけた。
読者の皆様おはこんにちは、蓮です。
今回は主人公の叶世が死んで、異世界の森に転生した所から始まりました。後々行間でも出てきた男についても書いていくのでお楽しみに!
主人公が目撃したゴブリンを圧倒したスライムと13歳の少女にご注目して下さると嬉しいです