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Y04 暁の景色

眠い。


酷く眠い。


眠いんだ。


俺は眠っているのに。


俺は寝たいのに、眠れない。


これはアレだ。


無期限開発延期でデスマーチから解放された朝、擦り切れた足取りでアパートに凱旋し、そのまま気絶するようにベッドに倒れ込んだのに、半覚醒した意識が俺を悩ませる。


やめてくれ、休ませてくれ。


俺はこのまま眠りの沼に堕ちていきたいんだ。


なのに。


なのに、何だろう。


熱いモノが俺の意識を浮上させていく。


微かな刺激。


温かな熱。


それが繰り返される雫だと気づいたとき、俺は瞳を開けていた。










「………………………………………………女神様がそんな泣いてはいけませんよ」



開口一番、俺はそう、うそぶく。


視界いっぱいに映る女神様は俺のつぶやきに瞳を見開くと、更に大粒の涙をこぼしながら微笑んでいた。


夜は明けていた。


死の大地の果てから昇る、暁の太陽に照らされた女神様は実にきらびやかで幻想的な後光がさしている。


そんな女神様に膝枕をされながら、男として見上げる眼福の光景を静かに堪能していた。


そのまま、ぽつぽつと取り止めもなく会話を始める。


それは脈絡のない会話、明日には忘れていそうな、ただの雑談。


本来、聞くべきことは腐るほどあるはずなのに、ただそうしたかったのだ……。



「俺、膝枕してもらうのって初めてなんですよ」


「奇遇ですね、私もです」


「なんか、温かいですね」


「はい、私もそう思います」


「正直、お顔を見たとき、お迎えの天使かと思いました」


「それは酷く、心外です。あんな、最低バトルマニアの人たちと一緒にしないでください」


「へぇ〜」



少し意外だった。


この女神様が口に出して他人の悪口を言うなんて。


どういった心境の変化なのかわからないが、少し好ましい。


てか、天使ってそうなんだ。


面白いな。



「女神様の好きなモノって何ですか?」


「読書です。特に民俗学文献が大好きです。古代伝承から今まで移り行く営みと景色を想像するのは楽しいですね」


「実際に人々と触れ合ったことは?」


「ほぼないです。幼いときはありましたが、進路が決まってからはほぼ天界で過ごしましたから」


「そうですか…………他に好きなモノは?」


「え〜と、…………あ、お茶は好きですね。密かに茶器には拘っています」


「なるほど、あとは?」


「え? あとって…………てか、なんで私の好きなモノばかり聞くのですか?」


「ただ、俺が知りたかったから。まあ、少し困る顔も見てみたかった、てのもありますが」


「何ですかそれは。……もう、知りません」



ふいっ、とふてくされる表情も好ましく、俺はニヤニヤと見つめる。


そんな、やりとりを俺が満足するまで付き合ってくれた女神様に俺は心から感謝していた。






十分に癒された俺は起き上がり、女神様と向き合って話し合う……のだが、少し頬を膨らませた女神様に、若干ジト目で睨まれている。


まあ、その理由が明らかに俺なのはわかっている。



「さて、個人的に聞きたいことは尽きませんが、少し真面目な話をしましょう。……どうしました?」


「……結局、貴方の好きなモノが何なのか教えてくれませんでした」


「まあ、その内教えますよ。アップルパイの好きな女神様」


「何ですかそれは」


「いえいえ、ただ女神様と呼ぶと、他の女神様と区別がつかないじゃないですか。俺はこうして助けに来てくださった女神様に愛と親しみを込めて呼んでいるのですよ。犬派の女神様」


「も〜、恥ずかしいからやめて下さい! 私を呼ぶなら、ミルキーウェイと呼んでください」


「わかりました、では私のことも名前で呼んでください」


「えっ?」


「ん?」



ここで、しばし沈黙が流れる。


ミルキーウェイ様はあれだけ睨んでいた視線を、つついっと外す。


俺が身体を傾けて、視線を合わせようとすると、反らし逸らす。


もう、慣れない仕草が滲み出てて、あからさまに動揺しているのが伝わってくる。



「ミルキーウェイ様? ま、さ、かと思いますが、私の名前がわからないとか言いませんよね?」


「も、もちろんでしゅ」



早口で語尾を噛む女神様、てか可愛いな。


まあ、可愛いが追求の手は緩めない。



「さあ、さあ、私の名前を言ってみなさい」



圧倒的不審者ばりに、両手をワキワキしながら、岩を背にした女神様を逃さないようにジリジリと圧をかけていく。



「さあ、さあ。今ならまだ余地がありますよ」



何の余地? とは教えず、観念するように誘導すると、しどろもどろに女神様は口を動かした。



「う、え、え〜〜〜〜〜〜とですね、…………さ、サトーーーー」


「サトー、何です?」


「サトー………………………………コタツ? かな(笑)」



はい、ギルティ! 俺は全力で突っ込む。



「今日一番の笑顔で誤魔化さないでください。いや、可愛いけどっ! じゃなくて、俺はどこの暖房器具ですかッ! 名前を知らないって、書類見ましたよね、ってか俺の転生者IDカード見せてください!!」



観念したのか、しぶしぶ取り出したIDカードを俺は確認する。


すると、俺の名前は『サトー』しか記されてなかった。



「………………ひとつ聞きますが、登録内容の修正ってできます?」


「えっと、転生してから12時間の猶予はあります。ですが、先程過ぎました」


「つまり、俺の転生で、ミルキーウェイ様の手続きに問題があったとしても一切変えられない?」


「はい…………ごめんなさいです」


「おふぅ……」



覆せぬ決定事項に俺は本気でめまいを覚えた。





数分後、何とか気分を落ち着けた俺は改めて、ミルキーウェイ様と俺の認識の差をすりあわせ、正しい情報と問題点を共有することにした。


まあ、いい加減、現実逃避するのは辞めようと思った訳でした。


とりあえず、思考を俺が意識を失った後に戻して話すことにした。



「まず、ミルキーウェイ様は、いつ、どんな状態の俺を発見したのですか?」


「はい、私が下界に降りてサトーさんの元に駆けつけたときは空が白みはじめていました。貴方はここで、瀕死の状態で倒れてました」


「俺が負った傷は?」


「凄まじいの一言に尽きます。細かな欠損部分は修復し、私が時間をかけて回復させました。蘇生に近い処置でしたよ」


「なるほど、…………周辺に死霊はいませんでした?」


「ええ、死霊は一体すら見ていません。そもそも、ここは忘却の世界と呼ばれていて、魔物の存在に必要な大気の魔素も薄く、死霊すら存在しない本当に虚無の大地のはずなんです。…………サトーさん、貴方はいったい何を見て、何と戦っていたのですか?」



その真剣な眼差しで問いかける女神様に俺は言葉をつまらせる。


あの、死闘は嘘ではない。


死にかけていた俺自身がその証拠だ。


しかし、辺りには戦後の残骸が存在してない。


死霊なので、死体がないのは仕方ないが、俺が使い荒らした武具の残滓すら綺麗さっぱり消えている。


そして、この場所は何も存在しないという一般常識がある。


存在しない死霊が存在しないと死霊から受けた傷の立証できない、という矛盾に俺は頭を悩ませる。


結論が出ず、ガリガリと頭を掻く俺に女神様は更におかしなことを告げる。



「それと、サトーさんは独身でしたよね」


「ん? ああ、そうですよ」


「その指輪はどうされたのです?」


「指輪? そんなのあるわけ…………えっ!?」



指摘された左手を確認する。


すると、左手第4指、つまり左薬指に金の指輪が嵌められていた。


瞬間、記憶がフラッシュバックされる。


瀕死の俺の姿。


その時、間違いなく、この指輪は嵌めることができず、俺が捨てたモノであった。


それが、なぜここにある!?


例えようのない不安に駆られ、慌てて外そうとするも、掴もうとする指が虚空を切る。



「どうなってるんだ!?」



指輪自体が掴めない。


視認できるのに存在がない指輪。


それはまるで、指輪の立体映像を指に投影しているかのようだった。



「…………かつて、夢幻アーティファクトと呼ばれるモノが異世界創世記の文献に記されています。最古の研究所である天界遺産登録機関でも存在は確認できず、夢幻アーティファクトはただの御伽噺とも空想産物とも言われています。その特徴としては、何者にも犯されず触れられない神器であるとあり、そのアーティファクトはコネクターである、とだけ記されています。その指輪がそうであるかはわかりませんが、少なくとも天界でも未知のモノではありますね」



女神様はただ事実だけを告げていく。


それを俺は静かに受け止めていた。




長い沈黙…………、




そして…………。





「ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜。まあ、いいや」



と、重苦しい問題を放棄した。


その言葉に驚いたのか女神様は瞼をぱちくりさせている。



「よろしいのですか!? もしかしたら、呪い以上に取り返しのつかないことになるかもしれませんよ」


「そうですね。でも、分からないことは分からない。分からないから先送りにする。大変な事態になったらなったで考える。それでも良いのではないでしょうか?」



未解決、先送り、現状維持。


以前の俺ならありえない考え方。


そんなことを俺はすんなり口に出せるようになっていた。



「…………サトーさん、なんか変わりました? 出会ったときと雰囲気が全然違います」


「そうですね、体感としては本当に生まれ変わった気分です。だから、俺は俺の変化を楽しんでいこうと思います」


「…………そうですね、今のサトーさんの方がずっと良いと思います」


「ありがとうございます。さて、ミルキーウェイ様のお墨付きをもらい気持ちも持ち直したので、それでは本日のメインディッシュと逝きましょう。俺のIDカード〜!!」



気分をガラリと変えて、テッテレ〜、と脳内BGMを流しつつ、転生者IDカードを取り出す。



「さて、ミルキーウェイ様、お仕事の時間です」


「は、はい……」


「このIDカードを確認し、全ての問題点をチェックしてください」


「え”!?」


「いずれ分かる、問題なのですから、早い方が良いでしょう。ミルキーウェイ様自らのお口で告げてください」



若干上目遣いでイヤイヤを訴える女神様を華麗にスルーする俺。


対して女神様は少し足掻く。



「さ、先ほど問題を先送りにしても良いかな〜、とか言いませんでした?」


「それは解決策がない場合です。大丈夫です、私はミルキーウェイ様を信じています。ミルキーウェイ様ならどんな問題でも解決できると信じています」


「うっ、……わ、わかりました」



女神様はうなだれつつも、IDカードを受け取った。


そして、手慣れた様子でIDカードのチェックをしていく。


IDカードはどうやら最新スマホ以上のスペックがあるらしく、空間パネルを複数起動させつつ、高速で色々確認している。


出会った時から思ってはいたが、この女神様は基本能力は凄い高いと思われる。


その証拠に滑らかな指の動きでカードを操作しながらものの10分で全作業を終わらせたようだった。


女神様を見つめつつ、ここまで、お世話になったのだから、いずれ何らかの形で恩を返さないとな、と俺は心に留めておく。



「終わりました」


「はい、お疲れ様です。それで、問題点はありましたか?」


「はい、大きな問題がひとつだけ。ですが、これは問題点として扱えるモノなのかどうか……」



ひどく悩ましい表情をしつつ、女神様は俺に見えるようにIDカードを操作する。


拡大された空間パネルに表示された、俺のステータス。


俺にも分かる文字で表記されているのはスキル恩恵だろう。


そして、ステータス表記の種属性を女神様は指摘した。



「ヒューマンゴースト?」


「はい、これがサトーさんの特異性を表しています」



女神様はゆっくり解説していく。


この世界にはヒューマン、つまり人間は存在しありふれている。


亜人、デミヒューマンの獣人、魔人、エルフ等も個々対立はあるも存在する。


それに対して、ゴースト。


これは魔物、モンスターに属する種族で、一般的には討伐対象として見られている。


というのも、人間と亜人に対してモンスターは明確に区別されているからだ。


例えば、人間が死んで死霊にモンスター化した場合、人間である魂の構成要素から変質しモンスターへ再構築される。


これは、世界の大賢者が解明した定説であり、一般に流布された常識とされている。


つまり、人間とゴーストは魂レベルで異なる存在なのが、この世界では認知されているのだ。


そこに現れた俺のヒューマンゴーストという例外。


正直、バグとしか言いようのない存在。


そんな、存在が人間世界でやっていけるのかという話になる。


よくて無視、最悪討伐対象になってしまうだろう。


どうするべきか、俺が考えていると、女神様が調べながら答える。



「もしかしたら、上手く誤魔化せるかもしれません」


「と、いうと?」


「ヒューマンゴースト、というのはどうやらヒューマンとゴーストの二つの全属性を兼ねているようです。つまりーーーー」


「ヒューマンの属性だけを強く表現すれば、誤魔化せる訳か」


「はい、後の問題はサトーさんがステータス開示した時に登録属性でバレてしまう可能性です」



身分登録やギルド登録、鑑定スキルなどで盗み見られたらどうしようもない。



「…………私の力で種属性封印しておきます。こうすれば、よほどの高レベルの鑑定スキルでなければ見られる心配はありません」


「よろしいので?」


「はい、ただし、私が解除しないと上位属性への昇格再臨もできなくなりますが。サトーさんは現在、レベル70でカンストしていますね」


「ほうほう、そこを少し詳しくお願いします」



この世界の強さは単純レベルと種族、属性の強さ、そしてそのモノのスキル能力に左右されている。


上位種や上位属性なら下位種属性に対して基本能力値から違い高水準なので比較的表面に現れる種属性でそのものの強さが測れる。


対して、強いスキルである固有、ユニーク、特殊スキル持ちは外見の強さでは測れない力を持つ。


ゆえに、そのふたつを持つ存在をあえて測ろうとするのなら単純レベルから測るしかないのだった。


人間、亜人、魔物のどの存在もレベルは基本1から始まり70でカンストする。


通常、普通にいきて普通に死んでいくならば70カンストで寿命を全うすると思えばいい。


それよりも強くなるには条件を満たし、中位種への昇格再臨という限界突破しなければならない。


限界突破したモノは中位種になり、レベルを1に戻され、能力も70%近く減退してしまう。


まあ、減退したとはいえ、下位種のレベル1と強さは雲泥の差があるのだが。


そしてこの恩恵が一番強いだろうが、レベルの上限も80まで解放され、中位種特有のレアスキルも取得できるようになる。


ここに至るのが大抵の冒険者の生涯である。


選ばれた者たちは更にここから上位種への昇格再臨する道を選ぶ。


基本は同じで、レベル1からだが、レベルは上限90まで解放され、獲得できるスキルも特殊固有スキルが多くなっていく。


ここまで至ればどの仕事でも大抵有名人として名を馳せている。


そして、世界に一握りの英雄たちはその上をいく。


更に最上種への昇格再臨し、レベル99の上限解放させ、ユニークスキルを保有していく。


その凄さは国宝級とされ、世界中でその存在を認知されているのだった。



「……なるほど、その下位種属性で俺のレベルはカンストしていたと?」


「はい、私が祝福すれば今すぐ上位種属性への昇格再臨できますがどうします?」


「ふむ、……辞めておきましょう。いくら上位種とはいえ、レベル1になるには少し怖いですね。それならある程度落ち着くまで70レベルでいた方が生き残る確率が高くなりそうです」


「わかりました。では、このまま、サトーさんの種属性を封印固定します」



女神様がIDカードの文字をなぞりながら呪いの言葉を紡いでいる。


かなり特殊な天界特有の言葉なのか、解読スキル持ち? の俺でも理解できない言語だった。


そして、女神様が唱え終わると、俺の身体が一瞬淡い蒼光に包まれた。


どうやら成功したようだ。



「終わりました、当面はこれで大丈夫です」


「ありがとうございます」


「ええ、あとは、確認するだけですからテキパキ進めましょう」


「わかりました、では私の保有スキルをお願いします。あ、その前にそのIDカードの操作方法を教えて頂けますか?」


「もちろんです。ではサトーさん、こちらに来てください」


「はい、……ではお願いします」


「それでは、まず指でカードをですね…………」



と、俺は女神様に手早くIDカードの操作方法とスキルの使い方などのレクチャーを受けたのだった。







「以上です。他に何かありますか?


「…………大丈夫ですね。これで何とかなりそうです」


「それは良かったです。では、そろそろ私は天界に戻ります。色々仕事が詰まってますので。……サトーさん、最後に何かありますか?」



そんな、別れの一言に俺は少し考える。


正直、俺が見たい姿は見られた。


こうして、生き延びて女神様の正装姿を拝むこともできた。


だからこそ、俺はこの言葉を残そうと思う。



「ミルキーウェイ様?」


「何ですか、サトーさん」


「私は女神様の姿が見られてとても嬉しかったです。駆けつけてくれるとは思いもよりませんでした。…………ですが、流石にその、いろいろ攻めすぎでは?いや、私にはわからないのですが、天界ではこれが標準でしょうか?」



途端に、茹で上がるほど頬を紅潮させる女神様。


降臨女神の神々しい微笑みから、ガラガラと崩れ落ち、途端に親しみ深い涙目になる女神様。



「え〜と、気づいてました?」


「そりゃもう、なるべく視線を送らないようにするのにかなり神経を使いました」



際どい胸元というか溢れそうなボリュームで背中はほぼ無防備で解放的であり、裾元は限界ラインを少しオーバーしてないかと思われるきわっぷりだ。


まあ、上の言葉を端的にいうと実にエチエチである。



そう婉曲的に俺が伝えると、女神様は伏せ目がちにモジモジと色々

隠そうとしながら弁明する。



「違うんです、私はえっちくありません。あの、えっとね、サトーさんが転送された後、慌てて事務手続き済ませて追いかけようとしたのです。だけど、自宅のタンスをひっくり返しても、下界に降りる正装がなかったから、急遽レンタルしたんです。ですが、慌てて借りたら以前と体型が違ってて、その、試着してサイズを合わせている時間もなくて…………」



あー、ここに来るまでの空白の時間はそのせいなのですね。


ひどく慌てていたのはとても伝わってくる。


女神様の行動全てが俺の為というにはひどくおこがましいが、それでもあえて伝えよう。



「ありがとうございます。私のためにそこまでしてくれて嬉しいです。私の担当が貴女で本当に良かった」


「え? 本当ですか? 私のせいであんなに待たせて、あんなに傷ついたのに、…………本当に?」


「はい、私の本心です」


「…………ありがとうございます」



ポロリ、と溢れる一雫の涙。


そこにどんな意味が込められているのか不明だが、俺には何となくわかるような気がした。









落ち着いた女神様と見つめ合う。


お互い既に告げることは済ませた。


あとは別れの言葉だけ。



「ミルキーウェイ様、また会えますか?」


「はい、サトーさんが本当に私を必要とした時に私は姿を現しましょう。サトーさん、これから色々あると思いますが、私は貴方をいつも見守っています。それでは、……汝の魂に祝福があらんことを」



そう言葉を残し、しゃらんと姿を消失させる。


残ったのは無機質な世界の風だった。


そのまましばらく見送っていた。


が、やがてひとつ、息を吐くと、



「さて、そろそろ始めますか」



と、俺はようやく人生を始めたのだった。


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