12.元神童vsジオドラゴン
俺の切り払いで踏みつけを阻止されたジャイアント・リザードだが――
諦めていないらしい。
再び巨大な足を振り上げて俺を踏み潰そうとしてくる。
「同じだ」
またしても俺の一閃が巨大トカゲの足を払いのけた。ジャイアント・リザードがバランスを崩してよろめく。
その瞬間、俺は走り出した。
「エンチャント――鋭刃!」
俺は『鋭刃』を展開、巨大トカゲの前脚へと斬りかかる。俺の刃は軽々と巨大トカゲを覆う鋼鉄のような鱗を切り裂いた。切り開かれた肉から血が流れる。
痛みにトカゲの巨体がびくりと震えた。
おっと、まだ出し物は終わっていないぞ?
「エンチャント――爆撃!」
突き出した木の枝がトカゲの傷口に深々と刺さる。
直後、仕込んでいた『爆撃』が発動した。
「爆ぜろっ!」
爆音が響き渡る。巨大トカゲの左足、その内部に突き刺さった枝が見事に爆ぜた。
さすがにたまらなかったのだろう。
ジャイアント・リザードが悲鳴を上げた。
その悲鳴はそのまま魔力となってほとばしる。いきなり中空に無数の魔術陣が浮かび上がった。
……なんだ!?
現れた魔術陣のひとつひとつから、巨大な石柱が飛び出してきた。俺めがけて――!
ちぃっ!
最近のジャイアント・リザードは魔力まで展開するのか!
爆破攻撃で使っていた木の枝を失った俺は、地面に転がっている別の木の枝へと飛びついた。
そして、振り向きざま――
すぐ目の前に石柱が迫ってきている!
だが!
「エンチャント――硬化!」
俺の一振りでとんできた石柱のすべては四方に弾け飛んだ。
……ふぅ、相手がジャイアント・リザードでよかった。もし強大なドラゴンの魔力が相手だったら、こううまくはいかないだろう。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
巨大トカゲが吠えた。
その瞬間、さっきと同じ無数の魔術陣が一斉に展開された。
中空ではなく――俺の足元を中心とした地面に。
俺は瞬間、理解した。
次に何が起こるのか。
「くそっ!」
いきなり地面から石柱が飛び出した。足元に展開した防御魔術のおかげで致命傷は避けられたが、圧倒的な質量による勢いまでは殺しきれない。
俺の身体は石柱に突かれて高く跳ね飛ばされた。
空中で体勢が整っていない俺に怒り狂ったトカゲの顔が下方から迫ってくる。
俺を丸呑みしようと大口を開けて。
俺は左手を差し出した。
「ウィンド・バースト!」
その瞬間、俺とトカゲの間に膨大な『風』が爆発した。それは巨大なトカゲの動きを少しだけ止めて、俺の小さな身体を上空へと弾き飛ばした。
よし、距離が置けた――仕切り直しだ!
俺は吹っ飛びながら体勢を整えて『空気』を蹴る。
エア・ラダーを発動したのだ。この魔術は空中に足場を作る。連続発動で次々と足場を生成、それらを順に蹴りつけながらジャイアント・リザードへと近づいていく。
その途上、前方から木の枝が飛んできた。
俺のウィンド・バーストの余波が巻き上げたのだろう。無視しても良かったが――俺は左手でそれを受け取った。
双剣スタイル。
ちょうどいい、火力が足りないと思っていたところだ。悪くない選択じゃないか。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
空から迫る俺に向かって巨大トカゲが咆哮、またしても無数の魔術陣を展開する。
次々と石柱が撃ち放たれた。
俺の装備は布の服。直撃を受ければただではすまない。だが、何も問題ない――
当たらなければどうということはない!
俺はエア・ラダーを機敏に飛び移りながら石柱をかわしつつ肉薄する。かわせないタイミングのものでも――
ぎぃん!
俺のひと振りが容赦なくはたき落とす。
あっという間に俺はトカゲの巨大な頭に近づいた。
「エンチャント――鋭刃、鋭刃!」
2本の木の枝に万物を切り裂くを魔力を込める。落下速度を殺さないまま、左右の斬撃を叩き込んだ。
トカゲの、右の目玉へと。
巨大トカゲが悲鳴を上げる。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
片目を鮮血に染めたまま、身体を伸び上がらせた巨大トカゲが悲鳴を上げた。
俺は巨大トカゲの側面を落下――落ちながら両手の獲物でトカゲの長く伸ばした首を斬りつける。俺の強化された斬撃はトカゲの巨大な鱗を容赦なく削り、その下にある柔らかい肉を切り刻む。
俺が着地した直後、半身をずたずたに切り裂かれた巨大トカゲは痛みに耐えきれず、起こしていた上半身を地面に倒した。
地面が揺れて、土ぼこりが舞い上がる。
瞬間的な大ダメージのせいか、巨大トカゲの動きはとても緩慢だった。うまく動けない――それは俺が待っていたチャンスだった。
巨大トカゲによってへし折られた木に近づく。角度と距離を計算して――俺は木に乗ると地面に向かって魔術をうち放った。
「ウィンド・バースト!」
風が爆ぜた。その勢いに押されて、俺を乗せたまま倒木が中空へと飛ぶ。そして、それは俺の計算どおり巨大トカゲの頭上へと向かっていった。
弾道計算――ただの計算ならば学生時代の成績でも充分に胸を張れる。
そして、そのままそれは巨大トカゲの頭へと落ちていった。木の枝に手を当てて俺は叫ぶ。
「エンチャント――鋭刃!」
空を飛ぶ倒木に魔力の輝きが灯る。木の枝が武器になるのだ。木そのものだって同じはず。
だが、質量の桁が違う。
こいつならどうだ!?
巨大トカゲは飛来してくる木にようやく気がついたようだ。確認しようとその顔を上げようとするが――
遅い!
鈍い音ともに俺の魔力によって鋭さを付与された木の根元が巨大トカゲの眉間に突き刺さる。それは深々と、その大きな幹の半ばまでを巨大トカゲの頭へと叩き込んだ!
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