慰めは天使から
勇者選別後ミスティコ城内にて二人の男が豪勢な椅子に腰かけ内密の話をしていた。
「今回のはどれほどの者だ?」
ある男は片手にワインを回しながら優雅に甘い匂いを嗅いでいる。
「ええ、十分に使えるものかと」
もう一人の男も同様に酒とつまみを食している。
「今度こそは成功させなければならん、あの忌々しい悪魔に制裁を下さねば」
男は強く拳を握りしめ窓の外を見つめた。
「もちろんわかっております」
「頼んだぞ」
一方その頃城から追い出された者は…………。
「ああああああああああああああああああああああああ」
「もうまじでむかつく!なんなんだよあの仕打ちは!大体俺は呼ばれた方だぞ」
頭の沸点が最高値まで上がっていた俺は毒を吐きながら街を歩いていた。
街の人は外に出てはおらず家の中に引き篭もってる。
ニートになってしまった民衆からの視線は鋭く空想のマシンガンを全方向から撃たれているようだ。
追い出された後のメンタルにここまで痛いものはない。
これはあれだ一種の死体撃ちだ。
オーバーキルをされていた俺だが何となく見当はつく。多分この腕が民衆を怖がらせてしまっているのだろう。
「誰か俺に慈悲を‼」
「よし、あいつだ」
フードを被った二人の男が街中で叫びだした勇者を建物の陰に隠れながら見物している。
「あんなパットしないのが勇者ですか?」
間抜けな顔をしたぽっちゃりは目の前の叫び魔を馬鹿にして言う。
「上の命令だ。黙って仕事しろ」
「へいへい」
「いくぞ!俺が合図したらだ」
「いいか一・二・三だ」
「よし、一……二……さッちょっと待った‼」
「もうなんすか⁉」
勇者の前から誰かが来るのが分かった男は隣の男に足をかけ行動を躊躇させる。
「まだだ、まだその時ではない」
男は勇者を捕らえることやめその場で待機することにした。
「……あのー大丈夫でしょうか?何かお困りですか?」
うなだれていた俺の頭の方から聞こえてくるのは女の子の声だった。
その囁きは精神崩壊を起こしていた俺にとって恵みの雨のように曇り切った心を照らしてくれるそんな声色。
俺は一目散に顔を上げるそこにいたのは天使だ。
白いフードローブ越しからでもわかる二つの巨峰、ローブの隙間から見える足は黒く光沢があり薄っすらと肌色が窺える。フードのせいで目元までは見えないが白く透き通った きれいな肌。はみ出る金色の髪はどこぞの染めた金髪とは大違い。
「あー神様、ありがとうございます……!」
俺は再度拝むようにしてその場で土下座をした。
「ええー………………⁉」
(まさかこの人……ばれた……?)
はっ!っと俺は我に返る。
「すみません。ちょっと色々あったもので物思いにふけっていました」
はー‼何をやってるんだ。いくら天使みたいだとはいえその人の前で拝むやつがあるかー!
「あっそうだったんですか……。悩みがあるなら教会に行くことをお勧めします!」
取り合えず女の子は納得してくれたみたいだ。
それと教会?そうか異世界だからあるよな。特に行くとこもないし行くかー。
「ありがとうございます。ではそうさせて頂くことにします」
「では待っていますよ」
彼女は優しく微笑みながらペコリと一礼して向かいの道に進んだ。
「ありがとうございます!ん?待っていますよ?」
(はーーーー‼間違えた‼)
「いいえっ!なんでもありません!忘れてください」
はぁー……。何だったんだ今の人。
でも元気が湧いてきた、あんなに可愛い人と話せるなんてこの世界も捨てたもんじゃないな。
あっ……。教会までの道聞けばよかった…………。
こうして俺はまた迷子になってしまった。
ここか? ガチャ!
「誰だてめー出てけ!」
「あー⁉すみません!」
こっちか!……くっさ!これは便所。
……にしても人が少ない。もうどこにあるんだよーーーーーーーーーーーー。
「兄ちゃん、教会に行きたいのか?」
声の方から三十代くらいのおっさんがこちらに歩いて来る。
やっと外で二人目の人に会えた‼
これはラッキーだ。このチャンスを逃さないようにしよう。
「道おしえてくれるんですか?」
「いいってもんよー。丁度俺も暇してたからな」
いい人そうだったので俺はついてくことにした。
なんだ意外と良心的な人多いじゃん、街は見かけによらないな。
「よーし、ここだ」
「ここってどれが教会ですか?」
おっさんに付いて来たはいいが周りには集合住宅しかない。
ほんとにあってるんだろうな?
「えっと確かあの家だっけな」
男が指を差した方を向くがどう考えてもただの家だ。
やけに家庭的な教会だなと俺がドアを開けた瞬間。
カアアアアアン!!!
っと俺の頭に固くて黒い主婦たちご愛用の鉄の板がぶち当たる。
三秒前の自分に言いたい。
お前はまたしくじるぞと。
目の焦点は右往左往に揺れ次第に意識も遠のいき…………。
「よーし、早いとこずらかるぞ」
「へい!またお金がたくさん……ニヒヒヒヒヒ!!」
男たち二人は勇者を連れてどこかへ行ってしまった。
「痛てててて……」
本日二度目の起床。
今回は頭痛が酷い。
辺りは湿った土に赤黒く濡れた石の壁、錆び付いても尚壊れそうにない厚い鉄格子。
どうやら俺はお縄にされてしまったらしい。
俺は本当についてないな。
「誰かいるんだろ?まず話し合わないか?」
………………返事がない。
「あいつ起きましたね。どうしやすか?」
「まぁ放っとけ。その内おとなしくなる」
俺は寿命があとわずかしかないっていうのにこんな所で足止めか……。
――何もできないまま時間が過ぎひび割れた壁からは夕陽が差し込んできた。
一応試せることは試してみた。例えば鉄格子を石で叩いたり、脆くなっていた壁を掘ってみたりと……。
だがどう試行錯誤しても一か月いや半年掛けても無理だろう。
どうしよう。
カサカサカサカサ……。
ん?なんか今動いた気が。
恐る恐る音が鳴る石を退ける。
「うげええええええええええええええええ!」
人骨らしき物に黒光りした大きな虫が群がっていた。
俺はあまりの気持ち悪さに腰を抜かし転倒してしまう。
その時ズボンのポケットからなにか落ちる感覚を抱いた。
「確かここら辺に」
ってこれ指輪?
それは輝く銀色のリングにエメラルド色のエレガントな宝石が埋め込まれている。
元の世界では一生買えそうにない代物であった。
こんなもの持ってたっけ?俺はその指輪を何の気なしに填める。
「うわっ!」
……一瞬のことだった指輪を填めた途端、宝石の部分から城で武器を選んだ時と同じ感触がした。
特に変わった様子はない……。っと思ったのだが、あれ?おかしい。
左手は悪魔の呪いだかで異質な物になっていたがなぜか右手も同然になっていた。
俺は不安になり体中を触る。
なんか固いんですけど…………。
慌てて腐敗臭のする水たまりに顔面を向け……………………。
「あっ、これもう悪魔じゃん…………」
そう――俺は左腕だけでなく全身が悪魔になっていた。
「嘘だあああああああああああああああああああああ」
面白いと思ってくれた方はブックマーク、高評価よろしくお願いします‼