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AFTER1 高校最後の年

スペシャル編、開幕!

 冬があっという間終わり。

 俺たちは三年生となった。


 高校三年生と言えば、高校生活最後の年。

 忘れられない青春の日々。思い出。

 感動あり涙ありの毎日……。


 ――の、はずだったんだけどなぁ。


「ちょっと律? こんな問題も解けないんじゃ受からないわよ」


「うっ……それを言われると苦しい」


「苦しみなさい」


「うぅ……」


 加恋と二人で図書館にこもる日々です。

 ……勉強したくねぇよぉ!


 花見しようと思ったのに、なんで図書館で参考書見なきゃいけねぇんだよ!

 俺の高校生活最後の年が……。


「全く……頑張りなさいよ」


「へ、へい……」


 目の前に座る加恋が呆れたようにため息を吐いて、ペンを走らせる。

 ……まぁ、実際図書館にこもって勉強する毎日だけど、楽しくはある。


 理由は明白。


「まっ、加恋と一緒に勉強できるなら、苦しさも紛れるか」


「なっ……!」


 その照れた顔が見たかったんだよなぁあはは。

 ほんと、俺の彼女は可愛すぎる。


「ふ、ふんっ! まぁせいぜい私と一緒の大学に行くために頑張ることね!」


「頑張りますよー愛の力で!」


「ドヤ顔で言うな!」


 そう、俺は加恋と同じ大学に行くためにこうしてデートを惜しんでまで勉強しているのだ。

 加恋は頭がいい。

 

 加えて俺は……普通。

 加恋は別に難関大じゃなくてもいいと言っていたが、わざわざ俺のレベルに落としてもらうのは男のプライドが廃るってもの。


 俺は加恋のレベルまで学力を上げるため、本当に愛のパワーだけでペンを走らせている。

 愛が地球を救うって、本当だったんだね!


「さっ、次はこの問題を五分以内に」


「はっ!」


 意気揚々と返事をして、ペンを力強く握りしめた。


 

 高校生活最後の年。

 それは同時に門出の準備の年でもあって……忙しない。


 俺が思い描いていたものとは少し違うけど、これはこれでいい。

 何せ俺は、加恋といられればいいからな。


「…………」


 加恋の照れた顔が見たくて、そう言ってしまおうと思ったがやめておく。

 今は集中しよう。


 恋に勉強。

 俺の高校生活最後の年は、それで決まりだった。




   ***




「終わったー」


「お疲れ様。もう日も暮れちゃったわね」


「だなー」


 図書館を出たところで、視界いっぱいに広がる温もり色の世界。

 ここ最近何度も見た景色だが、やはり何度見ても綺麗だ。


「肩凝ったなぁ」


「今日は珍しく頑張ってたものね」


「珍しくは余計だ」


「そう? 必須だと思うけどなぁ?」


「ぬっ……お、俺はいつだって本気だぞ?」


「ふっ、どうだか」


 そう言う加恋だが、顔は笑っている。 

 そんな近くて遠い、ひまわりのような笑顔が加恋のチャームポイント。


 心のアルバムに「本日のベストスマイル!」を写真記憶したこの笑顔を保存。

 ……勉強でもこれができたらいいんだけどなぁ。


「今日の夜ご飯、加恋が作るんだろ?」


「そうよ。昨日からカレーを寝かせてるの」


「おぉーそりゃいいな! 絶対うまいわ」


「当たり前じゃない。私が作るんだから」


「間違いないな」


 そう言いながら、手を絡ませる。

 いつしか帰り道は手を繋ぐという、ルーティンができていた。


 誠にありがたいルーティンである。


「隠し味も入れたのよ?」


「へぇーちなみにそれは何?」


「言っちゃ隠し味じゃないでしょ?」


「確かに」


 呼吸をするように自然に繰り広げられる会話に心地よさを感じながら。

 歩きなれた帰り道を歩く。


「腹減ったなぁ」


「じゃあいつもよりちょっと早めに歩く?」


「うーん……」


 考えるふりをして。

 でも実際、聞かれたときから答えは決まっていた。


「いや、いつも通りで歩こう。何なら遅めに歩いてもいいくらいだ」


「どうして?」


「……秘密だ」


「えぇー何それ」


「隠し味みたいなもんだよ」


「カッコつけちゃって……律は変わらないわね」


「あたりめーだろ? この先も変わる予定なし!」


「……合格判定は変わった方がいいわね」


「……それを言うでない」


 そんな会話をしながら、いつもより遅めに歩いた。


 ……ただ、あっという間の時間だったけど。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うおおおお! 続きがきたどぉぉ! [一言] 今すぐ新作見に行きます⭐
[良い点] おぉ!幸せそうだw でれっでれの加恋ちゃんが見たいものだ( *´艸`)
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