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幼馴染に一万回フラれたので諦めたら急にモテ始めた  作者: 本町かまくら
終章 笑って、泣いて、また笑って
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83 最後の戦い

 遠くの山々が鮮明に見えるほどに、透き通った空気。

 見れば見るほど奥に引き込まれそうになる青空。


 紅葉の葉が散っている。

 確かにここに存在したんだと、生きた証を残すように。


 紅葉祭二日目、最終日がやってきた。

 

 野外ステージと屋内ステージに分かれて、名乗りを上げたグループが舞台発表を行っている。

 バンド、ダンス、漫才など多種多様。


 現在俺がいる屋内ステージでは、チアリーディング部がダンスを踊っていた。


「おぉ……」

 

 隣で目を輝かせる男は、もちろん上星。

 紅葉祭を通して俺と上星は意気投合し、こうして一緒にステージを見ていた。


 それに神カップルの親友としては、あの二人を二人っきりにしてやりたいという気持ちがある。

 翔と音羽は大丈夫だと言っていたが、あの二人も神とは言えど年頃のカップル。


 それに気づかないほど、空気が読めないわけじゃない。


「お、おぉ……!」


「お前目つきが性犯罪者のそれだぞ! もはや現行犯逮捕してもいいレベル」


「かくいう神之木も目、離せなくなってんじゃん!」


「それを言うでない」


 さっきから力入れないとドキドキな舞台から目が離せないんだよなぁ……。

 人間の欲とは、時に理性をも越える。

 すごいね、人類。


「ってか俺はチア部よりももっとドキドキなことが控えてんだっつーの!」


「なんだよ上星。お得意の裸踊りでも舞台でやるのか?」


「違うわ! ってか俺がいつ見せた?」


「んー……何となくお前、できそうじゃん?」


「誰でもできるわッ!」


 誰でもできるわけじゃない。

 

 第一裸踊りをするには勇気という重要なものが必要だ。

 あと、人の目を気にしない精神力な。


「そうじゃなくて! 俺は後夜祭で白幡さんに告白すんだっての!」


「あぁー」


 そういえばそんなこと言ってたな。


「成功するといいんだけど……って、弱気になるな俺!」


「俺が一発殴ろうか?」


「なぜ⁈」


「いや、緊張解れるかなと思って」


「その前に俺とお前の関係が解れるわ!」


「……上手いと思ってる?」


「少し」


 少し、と控えめに言うあたり実に上星らしい。

 俺は密かに上星にエールを送った。


 ……俺はひしひしと、今日という日が始まったことを実感していた。





 座れる、という理由からずっと屋内ステージにいて来るべき時間を待つ。

 ちなみに、気づかないうちに上星は席を外していて、俺は一人ぼーっとステージ上を見ていた。


 目がとてつもなく冴えていた。

 今まであった眠気や倦怠感は一切なく、魔法でもかかったんじゃないかと思うくらいに調子がいい。


 だが脳内は、ずっと昔の記憶をたどってる。


 今なんてそっちのけで、アルバムを丁寧に一枚一枚めくるように、俺は過去に遡っていた。

 おかげで退屈な時間はなく、あっという間に時間が過ぎていく。


 はっと今に目が向いたとき、気づけば俺は一人だった。

 周りに人一人としておらず、外から熱狂する声が聞こえてくる。


「もう屋内ステージは終わったのか……」


 夕方、紅葉祭のクライマックスになると野外ステージのみとなる。

 そんなことを思い出して、俺は外に出た。


 ――その刹那、観客の熱狂の中心にいる二人の人物の姿を捉えた。



「紅葉祭ミスコン、決勝戦――――――――――――――――――‼」



「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」」」


 うるさいほどの歓声。

 だが俺の心の中は至って静寂で、早まる鼓動の音しか聞こえない。


 ドクン、ドクンと脈を打つ。


 早く足を前に出せと。

 過去を置き去って今を追い越し、未来に手を伸ばせとそう言っているかのようだった。


「決勝進出者は、この二人だッ!」


 司会者の声を皮切りに、ステージに上がっている二人の少女にスポットライトが当たる。


 その二人は俺にとってなじみ深い二人で。


 ――学校で一二を争う、美少女だった。


「加恋、白幡さん……」


 紅葉祭のクライマックスの幕が今――下りる。

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 後輩ちゃんミスコン出てないの!?
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