37 幼少期語りだす年かよ
その後、服は選び終えていたのだが帰るには半端な時間だったので、適当にショッピングモール内をぶらついた。
普段人の多いこういう場所なら用事が終われば即帰宅だったのだが、翔はそれでは物足りないらしい。
でも実際久しぶりに色々と見れたし、楽しかったと言われれば楽しかった。
ただ足の疲労はとてつもなく、さすがに運動しなきゃなと思ったのだけど。
大体五時ぐらいになって、俺の足がそろそろピークを迎えそうなのでここらで帰宅することにした。
翔はぴんぴんしているので、さすがバスケ部エースというしかない。
「まぁとりあえず今日買った服で何とか夏休みは乗り切れんだろ」
「そうだな。マジ助かった」
帰りの電車の中、俺の両手にさがった二つの大きな紙袋を見ながらそう言う。
思ったよりも多く買わされたよ。翔には多分訪問販売とかのセンスある。それかアパレル店員。なんか板についてるな。容易に想像できる。
「まぁあまり言いたくはないけど律は何気に顔いいとこあるからなぁ」
「何気にってなんだよ。普通にほめやがれ」
「うーん、何気に」
「おい。そこプッシュすな」
そういう俺だが実は照れ隠しで、実際顔がいいなんて言われたことなかった。
てっきり没個性の平平凡凡主人公だと……いや待てよ。
大体ごく普通の高校生! とか言っときながら顔いいもんな。
つまり……やっぱ俺普通じゃん。
ショッキング。
「でもしょうがないよ。周りが強すぎるんだ」
「お前そこに自分含めてるな?」
「俺はちゃんと自己評価できるタイプなんだ」
「くそ……何も言い返せねー」
「だろ?」
「だろじゃねーよ……って言いたいけどほんと返す言葉がありませんはい」
誰がどう見たって翔はイケメンだし、完璧だ。
しいて言えばこの「俺世界見透かしてまぁーす」みたいな余裕そうな表情が鼻につくくらい。
それ以外は……困った困った。
「でも自信を持て。律は何気にいいやつだ」
「なんでお前は何気にをつけだがるんだよ」
「まぁいわゆる照れ隠しってやつだよ」
「……お前男に言うセリフじゃねーよ。勘違い生まれる」
「勘違いじゃないかもよ?」
「彼女持ち怖い! この余裕怖い!」
ちなみに何度も言いますが、俺と翔はそういう関係ではないのでご了承ください。
感想欄に「翔ルート希望‼」とか書かないでくださいやめてください‼
最寄り駅に降りてから自宅へ向かう。
翔とは途中まで道が同じなので、並んで歩いていた。
割と大きな公園の前を通る。
すると翔は足を止めて、その公園の方に視線を向けた。
「久しぶりに、公園でもいかね?」
「どうしたんだよ急に」
「うーん……まぁ、初心に帰りたいなって」
「……まっ、それくらい付き合ってやるか」
「さっすがー」
このおちゃらけた、フッ軽な感じはまさに男子高校生。
俺たちはノリで生きているのだ(偏見)。
公園の中に足を踏み入れる。
公園なんて高校生になってからほとんど入っていないので、懐かしい感覚があった。
珍しく翔がはしゃいでいる。
今は六時くらいで小さい子供たちが遊ぶ時間ではないので、公園には誰もいない。
まるで公園が大きい子供用にジョブチェンジしたかのようだ。
「って、大体の遊具俺たちの体の大きさじゃあ無理じゃん」
「まぁ高校生用の遊具なんてないからな。高校生はス〇ッチャ行っとけ、みたいな感じ?」
「うーん、まぁ否定はできないな」
最寄り駅の近くにはス〇ッチャあるし、まぁ遊ぶ場所、体を動かす場所には困らないのだが、体動かすのって実際面倒だ。そしてこの怠慢ボディーが生まれたのだ。
だが光さんの食事あってか太っていない。
光さんに感謝。
俺たちはしょうがなく、公園内にあるベンチに腰を掛けた。
わざわざ公園にいる必要はないと思うが、どうやら翔はじじくさく、この公園を見ていたいらしい。お前もう高校生じゃねぇ。
「いやぁ俺の子供のころはずっと外いたなぁ」
「幼少期をさかのぼるほど俺たち年取ってねーよ!」
「まぁまぁたまにはいいじゃんかー。初心忘れるべからずだよ」
「そ、そういう意味なのか?」
「まぁ細かいこと気にすんな」
しかし、翔が急にこんな話をするとはおかしい。
というのも今日の翔の様子から察するに、俺と加恋のことなんだろうなということは薄々わかった。
そしてその予想は的中し、急に疑問を投げかけてきた。
「でさ、お前ほんとに加恋のこと諦めたのか?」
案の定その質問で、今日で何回そんなセリフを聞いたんだろうかと思う。
ただその言葉の重みは回数を重ねるごとに重くなっていって、この質問が、俺に重くのしかかった。
ほんとに諦めたのか。
……俺の答えは、もう出ている。
夏休み早々真面目な展開ですみません_(_^_)_
それに加えてヒロイン(笑)が翔になっていてほんとに申し訳ない……このカップリングだけは避けてぇ……




