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35 五分前に集合している男子高校生

夏休み本格始動デス!

 午前十時前。

 駅前にて翔を待っていた。


 誘った側が遅れていくのはどうなんだ? ということで十分前からコーヒーを片手に駅前で待機。コーヒーは完全に雰囲気で飲んでいる。うまうま。

 

 しかし翔という男は皆の想像以上にできた男であるため、待ち合わせ時刻の五分前にやってきた。

 男同士の待ち合わせなら時間ジャスト、もしくは数分の遅刻が当たり前なのに、五分前には揃うという意外な展開。そういう物語じゃないよ?


「待った?」


 しかしこの男、これを日ごろから彼女に言いなれているのか男である俺に対してもそんなことを聞きやがる。そういう物語だと勘違いされたらどうすんだよ。読者離れるぞ。


「結構待ったな。五分くらい」


 だかららしからぬ言葉を吐いておいた。

 まぁあれだ。自分よりも物語を優先した俺の健気さを評価してほしい。クズとか思わないでね?


「いやぁすまんすまん。案外支度に手間がかかっちまってよ」


 だからそういう展開に持ってこうとするのやめて! 俺の好感度献上した意味なくなるからやめて!


「まぁ気にすんな。俺は心の広い人間だからな」


「心の広い人間は五分前に来た奴に『結構待った』なんて言わねーと思うけどなぁ」


「そこんとこはこの身に変えても守りたいものがあったんだよ」


「……それを真顔で言えちゃうとこほんと律だよな」


「ほっとけ!」


 そんな会話をしていたら待ち合わせ時刻の十時になっていたので改札をくぐった。

 向かうは大きなショッピングモール。夏服のセールをやっていると翔に教えてもらった。


 なんでお前そんなこと知ってんだよって聞いたら、「音羽が行きたいってねだってきてさー」と急にのろけ話をし始めたので、本気でにらんでやった。


 さすがは真のリア充だ。




   ***




 二十分くらい電車に揺られ、駅から少し歩いた後。

 ついたのはクソ混んでいるここら辺では一番大きいショッピングモール。

 カップルから家族連れ、さらにはおひとり様にも愛されている、誰もが一度は聞いたことがあるような人気ショッピングモールだ。


 俺は人混みが苦手なのでそこまで来ないのだが、翔は余裕そうな表情。


「お前よくこういうとこくんの?」


「そうだな。俺も人混み得意じゃないからそんなに頻繁に来るわけじゃないけど、放課後に音羽とは来たことあるぞ」


「ふーん」


 放課後に彼女とショッピングモールデートですか。

 くそうらやましいです。


「なんだよお前から聞いといてその反応ー」

「いや別に」


「……さては俺が音羽に取られてることを嫉妬してるな?」


「なぜおまえなんだよ! 余計にそういう展開になるだろうが‼」


「俺は同性愛ってのは否定しないぜ?」


「俺も否定しないが俺は違うんだ!」


 皆さんに言っておきます。

 俺と翔はただの友人です。それ以上でも、それ以下でもございません。ご了承ください。

 ぺこり。


「でもお前最近白幡さんとも仲いいらしいじゃん? それにあの一年生の可愛い子とも仲いいらしいし……いくらでもここ誘えばこれんだろ」


「あいつらとはそういう関係じゃねぇーんだよ。こういうのは好きな人と来るのがいいんだよ」


「じゃあ加恋とくればいいんじゃね? 多分お前の頼みなら断らねーだろ」


 さりげなく放たれたその言葉が、ぐさりと心に刺さって取れない。

 「俺何もおかしいこと言ってねーだろ?」みたいな表情で俺のことを見てくる。


 俺にとってはその発言すべて添削したいところだ。


「なわけねーだろ? それに、俺は別に加恋のこと好きじゃないから。諦めたって言ったろ?」


「一万回も告ったのに、簡単に諦められるわけねーだろ」


 少し真面目な面持ちで翔はそう言った。

 いつもならギャグ乗りで返していたところだけど、それはためらわれて、口を結ぶ。


「まぁでもそれは本人にしかわかんないから俺がどうこう言えないけどさ。ただ、本人にもわからないことでもあるけどさ」


 依然として真面目な面持ちで、しかしどこか柔らかかった。

 それは翔の優しさであり、空気を読んだ結果だと思う。


「さっ、真面目な話は後にして、今は服選ぶか!」


「……そ、そうだな。よしっ。おしゃれ番長翔大先生。オネシャス!」


「おうよ。任せとけ」


 たくましい胸をトンと叩いて、冷房の効いた店内へと先導してくれる。

 

 先ほどの言葉は確かに気になるが……今深く考えることでもないよな。

 それに、前々からこの答えは出しているし、確定しているのだから。


 そう思って、翔の後を追った。


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この物語なかなかの長編作品になりそうです。百話超えるかも

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