7 主人公、「運命」の画数を数える
食後のお茶を出してくれたセトは、たどたどしいながら事の詳細を話してくれた。
もちろん、その内容は俺がどうしてこの世界に来たのか!? ということについてだ。
「……」
しかし、その内容は俺の想像を遥かに超えていて、暫くの間沈黙が続いているのである。
手元に視線を落とすと、湯気を上げるカップが目に入る。
ほうじ茶の味とそっくりの液体が注がれたカップは恐らく陶器。
オシャレなカフェで出てきそうな渋めの焼き色で、俺好みのカップ。
(もしかしなくても手作りだよな、この世界だし)
などと、どう考えても現実逃避なクラフト脳な俺の心の声。
出されていたお茶請けのクッキーをかじるも、その堅焼き煎餅並みの耐久力を持つクッキーは俺を苦戦させる。
「旨いな、このクッキー」
だが、味は悪くない。
「あ、ありがとうございますっ」
しーん。
沈黙が、重い。
俺はともかく、どうしてお前の方が居たたまれなくなってるんだよ!
文句の1つもセトに言いたくなるのが普通だろう。だが俺は俺で絶賛混乱中だった。
先程セトから聞いた内容が、俺には到底理解出来ないものだったからだ。
「いや、まぁ、その、いきなりそんなこと言われても……っていう」
「レン様が、運命の相手と思ったのですううぅー……」
やっとで俺が言葉を紡ぐと、待っていたかのようにセトが声を絞り出した。
女の子に目の前で泣かれそうになる経験なんて初めてだ。
机に突っ伏しているセトは、それはもうひどい顔になっていることだろう。
彼女が俺をこの世界に召喚した理由。
それは、自分の『結婚相手』を探しているからだったのだ。
自分の相手なのだから、そんな大切な人間を召喚で探すなと言ったのだが、そこには並々ならぬ理由が存在していた。
本来ならここで「何を勝手に呼び出してるんだ」とか「すぐ元の世界へ帰せ」だとか。
まずそっちを思い浮かべる人のが多いんじゃないかって思う。
俺自身、思い浮かべなかったわけじゃない。
でも……。
さっき、ちらっと話したセトのこと。種族っていうのかな。
エルフの中でも、他種族との間に生まれた子、ハーフエルフはどうやらこの世界では忌み嫌われている存在というのは、中々に根深く重いものらしい。
ハーフエルフというだけで定職にも付けず、理由も無く白い目で見られるそうなのだ。
それはエルフ、人間双方から『半端者』として意味嫌われる事をも意味していた。
どちらでもないから、ということなのだろうか? 俺にははっきり言って理解出来なかった。
でももしも、自身が幼い事からずっと『そう』されてきたとしたら。
(悪い方の擦りこみなのかもしれないな)
こんなに綺麗で可愛く、性格も悪くないのに自信もへったくれもあったもんじゃないセト。
こんな所でずっと隠れるようにして生きてきたのだろうか。
「ずっと、1人でここに?」
「いえ、少し前までは、おばあ様と一緒に暮らしていました」
今は1人ということは、最近に亡くなったのか。
「そうか。それは、お気の毒に……」
「……レン様は、やっぱりお優しいかたです」
淋しげに、セトは笑う。
俺は思わず、眼をそらしてしまった。
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