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35 種族の架け橋



「っていう話なんだけどさ。皆、どうかな?」


 あの後、領主の館の1室で話し合いの場が持たれた。


 善は急げ! 俺はグノムの里を訪れた時から考えていたことを、思い切って告白してみたのだ。

 まだ全然日にちは経っていないけど、見てきたカデッシーナでの現状と、道具や材料達。

 この世界の発展具合だったら十分に製作可能と思ったんだよな。


 クラウスをはじめ、マヘスもアドルフも言葉を失っている。

 あれっ? もしかして駄目そうなのかな。


「それは、素晴らしい案だな。私は賛成だ。いやしかし、驚いた」


 まずクラウスさんが賛成してくれた。

 この人の領地の事だから、知っておいてもらいたかったというのがあったんだけど、まさかこんな早々にいい返事をもらえるなんて思ってもみなかった。

 一歩前進だな。


1、採掘と鍛冶師を生業とするグノム族の装備強化を革細工であるマヘスが支援

2、グノム族は対価として採れた鉱石や加工した部品をマヘスへ納品

3、クルミアの衛兵がグノム族の炭鉱の警備、対価として衛兵の装備の整備、補強


「まずアドルフんとこの炭鉱だけど、採掘の時に出る粉塵は長期間吸い込むと身体に良くないんだ。また家族や仲間に咳が出るようになったら嫌だろう?」


 アドルフは家族の事を思い出したのか、うんうんと激しく頷いている。

 俺はマヘスに体の向きを変える。


「そこで作業の時に顔に付けるマスクの製作をマヘスに頼みたいんだ。デザインとか、型を決めたり、結構時間はかかると思うけど、俺も、その……口挟むからさ」


 やべ、緊張のあまり選ぶ言葉を間違えたっ。

 ちらっとマヘスの方を見ると「きょとん」とした顔が一転、ふはっと盛大に吹き出した。


「手伝うから、だろう?」


 なおも笑うマヘスに、俺は口を尖らす。


「……そうだけど。腕が無い俺に言われるのも、アレかなーって」


 すると、ポンッと頭に手を置かれた。


「お前は俺には無い考えを持っている。そこで役に立ってもらうさ」


 筋肉質な褐色の身体に、赤毛の長髪。おまけに眼に傷まであるけど、ワイルドな風貌に似合わず、マヘスは結構気遣いの人だと思う。

 要は優しい人間なのだ。

 何かと俺を気にかけてくれているのは感じていたし。


 だから、大丈夫かなって。ええい、この際だし今言ってしまおうっ!


「あと、アドルフんとこで採れる鉱石とか加工した部品を、マヘスの革細工の商品に加えるのは、すごくいいと思うんだ。絶対かっこよくなるからさ!」


「ああ、判っている。俺も楽しみだ」


 これは賛成をもらえたって事でいいよな?

 マヘスとアドルフの様子に俺も胸を撫で下ろす。


「それで、今回の騒ぎもありましたし、一定期間でいいのでグノム族の炭鉱の周辺を警備してほしいんです。あの魔物騒ぎを里の人達も見ていたんで、クルミアの街の衛兵が見回りに来てくれれば安心出来ると思って」


 ……と、これはほとんど建前だ。


 いまいちくたびれた装備をしているクルミアの衛兵。

 クルミア付近は平和なのかもしれないが、ほとんど軽装に近いし見ていて不安になったんだよな。

 ちょっとした箇所でもグノム族に装備強化をしてもらっておくべきだ。


 俺の言葉にクラウスは大きく頷いている。

 彼の隣に控えていた爺ちゃん執事も嬉しそうだ。

 そうして爺ちゃん執事は頃合いを見計らって、ある巻き紙を机の上に広げたのだった。


(なんて書いてあるんだろう?)


「今回の、お前が考えた計画の同意書だな。ここにお前の名を書く」


 俺がこの世界の字が判らないことを知っているマヘスが教えてくれた。

 クラウスとアドルフが進めている隙に、試し書きをするよう促される。


「これが、俺の名前?」


「そうだ、レン」


「今、名前初めて……」


「俺は文字を読んだだけだが?」


 マヘスがわざとらしくすっとぼける。なんだよ、もー。



 こうして、俺達の計画は書面も交わされ、動き出す事となったのだった。




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