表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/57

21 トイレの妖精



「良かったですっ なんにもなくって」

 いや、何もなく無かったぞセト。

 胸を撫で下ろすセトに反して、俺は未だ変な汗をかきながら個室の壁に張りついていた。

 彼女の視線の先にある、便器の中にいた無数のモノ。


『アーアアー』

 まだ歌ってんのかよ、お前ら。


「なんなんだよ? コレ」

「水玉さまです。もしかして、レン様の世界では水玉さまがいらっしゃらないのですか?」


 水玉さま!?


 恐る恐る覗き込むと、小さな玉達は一斉に俺を見つめてきた。

 なんだろう、これは。パッと見ただけだと芳香剤の透明の玉みたいだけど……

 目と口がついてるのが普通にこえぇよ。


「その水玉さまが、どうなるんだ? これ」

「えっと……ここに座って頂きまして、んーってした後に、この(ひも)を引きます。

ふきふきするのは、この容器に入っているものを使って下さいね」

 こういう所、ほんと素直だよなセトは。

 一生懸命に実践しながら説明してくれる。

 特に目を閉じて「んーっ」するセトが可愛かったです、どーぞ。

 しかし、可愛い子に一体何をさせているのだろう、俺は。


チリンチリン


 セトが(ひも)を引くと、吊るされていた鈴が鳴った。

 するとどうだろう。俺の世界のトイレの水流の様に水玉さま達が変化し、流れていったではないか。


「すげー。マジか」 

「水の種族の妖精さまは、こうして不浄を浄化して下さるのですよ~」

 セトはまるで自分の手柄の様に(ひも)を手にしながら「えっへん」としている。


 一端便器の奥に消えてしまった水は、徐々にまた綺麗な水が溜まりはじめ、それはまた水玉さま達に形を成していったのだった。

 異世界『カデッシーナ』のトイレ事情を目の当たりにし、俺は驚きを隠せない。

 てっきり外でするのかと思っていたのだ。だが予想に反して個室、それも俺の世界に近いもので、動力がまさかの妖精だなんてさ。

 

 ザザザッと水玉さま達の視線が俺に集まる。

 こっち見んな。

 

『ラン ラララララン』『ルン ルルルルルン』『アーアアー』


「綺麗なお歌も聞けますし、とっても素敵ですよねっ」

 引きつる表情の俺と、微笑むセト。


「では、わたしはお食事の準備をして来ますので、レンさまはごゆっくりなのです」

「あ、うん」

 セトが実践までしてくれたんだ。

(って、トイレを頑張るなんて可笑しいけどさ)

 未だ俺を見つめている水玉さまに、俺は溜息1つ。

「わーかったよ! 俺も男だ」

 心を無にしながらトイレしたのなんて初めてだわ、俺。

 

「これからカデッシーナでの生活、大丈夫なのかな? 俺」


『ラン ラララララン』『ルン ルルルルルン』『アーアアー』

 ふきふきする紙代わりのモノに、また一悶着(ひともんちゃく)

 なんなんだよこのヌルヌルしたスライムみたいなやつは……。

 とりあえずこれに関しては自分一人で解決しよう。何事もチャレンジだ、うん。


→『斎藤 蓮』は水玉さまとの友好関係を結んだ!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ