期間限定の“おにいさま”
頭を空っぽにしてお読みください。
私には同い年の婚約者がいる。彼の名前はダニエル・ロビンソン。公爵家の次男だ。
今日は彼の18歳の誕生日。各界の著名人を呼んだパーティは既にお開きとなり、私は改めて彼の部屋を訪れた。
「ダニー“おにいさま”、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。ねぇ、エレン。そんなところに立って居ないで隣へおいで」
彼の甘い響きに私は身悶える。
私は今日から一月、無条件で彼に甘えられるの。
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私には同い年の婚約者がいる。彼女の名前はエレン・ワーグナー。
今日から期間限定の“いもうと”だ。
彼女は公爵家の長女で次期当主。その重圧に耐える為なのか、彼女は甘える事を良しとしていない。
でも、私としては何とかして可愛い婚約者を甘やかしたい。
「今日からダニーは私より一つ歳上ですね」
私の10歳の誕生日に、彼女がぽろりと口にした。
「じゃあエレンは一月だけ私の“いもうと”ですね。“いもうと”は兄に甘えるものですよ。エレンの妹達はエレンに甘えるでしょう?」
我ながら無茶苦茶な理論だと思う。でも彼女は目を丸くした後、へにゃりと笑った。
「ダニー“おにいさま”」
可愛い彼女に“おにいさま”と呼ばれて心の中で悶絶した。
この調子で結婚してからも甘えてくれるだろうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。
2019.11.16