属性検査1
記憶を取り戻してからいったん整理してみた。
前世の俺の名前は黒田凪。イケメン同僚にふりまわされたモブ。ウサギをよけようとして崖から落っこちおぼれ死んだわけだが。
そこでなぜか魔王の子供として異世界転生をしたらしい。池に落っこちた際に記憶がポーンと戻ってきたようだ。名前はノア・サタン。・・・サタン。サタンって名字だったということが分かった。
現魔王の子供は俺を合わせて5人。ちなみに5人中男が3人で女が2人。俺は2人の兄と姉と妹がいるわけで。
長男がネロ(9歳)、長女レイス(8歳)、次男ラース(6歳)、三男の俺ノア(5歳)、次女マリー(3歳)。母上・・・5人も生むなんてすごい。人間は大変らしいが魔族といわれる種族にとっては4人くらいが平均らしい。
現世では考えつかないな。
そしてこの世界には魔法が存在するらしい。属性は火、水、風、土、聖、闇の6属性。聖と闇は上位魔法ともいわれ使えるものは少ない。人間にも様々な国がある。魔族に友好な国や嫌悪する国。有効な国のほうが少ないわけだが。魔族は人間よりは少ない、しかし力はある。父である魔王が納める国しかないが広大な土地を所有している。
学校等の施設のも充実していてネロ兄さん、レイス姉さんはすでに寮制度のある魔族学校に通っているらしい。ラース兄さんは来年。つまり最小7歳からという決まりだ。おれが通うのは2年後。
そして属性魔法検査は年1回で実施されているらしく5歳から検査に参加できる。ちなみに次の属性魔法検査は1週間後だ。
父と母は仕事が忙しくなかなか会えない。そのかわり世話役の爺やがいる。食事はラース兄さんとマリーと一緒だ。長テーブルで静かに…ということは全くない。兄弟間、家族間の仲は悪くない。
さて、いろいろ整理してみたが。俺の目標というか大事にするのは前世のような人生を歩まないこと。前世よりはましな顔立ちだろう。(イケメンである。)トーク力というのかなるべく人とかかわってコミュ障を治す。ノア自体はコミュ力があるので大丈夫かな。
そして自分で生きていけるような力を手に入れる。魔法もいいけど剣もいいな。異世界転生ものが好きな俺にとっては魔法や剣は楽しみの1つである。
よし。当分の目標はコミュニケーション、鍛錬?かな。あ、あと知識。勉学は5歳になってから始まった。さすが英才教育。開始がはやい。魔王の子供は魔王になるか政治の柱となるから知識が必要だ。…前世の5歳はぽやーっと生きていたはずなのにな。
属性魔法検査までの1週間、とりあえず屋敷(魔王城)を探検しまくった。家庭教師がこない時間帯に探検して様々な人としゃべる。そこで1人の少年と仲良くなった。炊事の人の子供らしい。名前はウィル。ファミリーネームはない。ファミリーネームがあるのは貴族階級以上のようだ。
暇な時間に魔王城の庭で遊んでいるらしく出会いもそこ。黒髪でとても落ち着いた雰囲気。前世の兄の雰囲気と似ていて仲良くなった。
「いよいよ明日だな!ウィルは何属性だと思う?」
「…無属性じゃない?貴族以上ぐらいしか属性持ちいないし。」
普通の人は簡単な生活魔法しか使えない。魔族だからといって人間とは変わらないらしい。違うことは角が魔族にとって重要な役割をしていること、体が人間の数倍丈夫。だから普通は属性魔王検査は一般民は受けないようだ。
ウィルの場合は、父が俺に友達ができたことを喜び一緒に行くことになったからだ。
「いや、ウィルは絶対属性持ちだと思うな。」
「なにそれ。」
「勘だけど!」
「ノアは2属性ぐらいもってそうだね。」
「父様ですら2属性だから無理むり。持つなら火がいいな~。」
「なんで?」
「ボワっとたくさん燃やしてみたい!」
「なにそれ。…じゃあ僕が水魔法もってたら鎮火できるね。」
「おおっ!いいねー。」
たわいのない話をしていたらそろそろ家庭教師がくる時間帯になっていた。魔族学校の入学条件は属性魔法を所持していること。属性魔法を持っていたら貴族ではなくても入学できる。成績が良ければ援助も。
自分勝手だが、ウィルと学校へ一緒に行きたかったのだ。
「そろそろ行かなくちゃ。」
「うん、頑張って。」
「明日、9時半に城門前で集合な。」
「うん。またね。」
「おう!」
そして属性魔法検査当日。時刻は9時半。城門前に爺やを連れていくとウィルが母親といた。えっと、確か。
「おはようございます。マインさん。今日はウィルをかりますね。」
「いえ、こちらこそありがとうございます。検査場まで馬車も出してもらい…恐縮です。」
「マイン様、ご安心なさってください。ウィル様はわたくしめが守ります故。」
検査場は魔族が支配する地域の真ん中にある。魔王城は北に存在し馬車で行くのにも一時間はかかるのだ。これこそ、貴族以下が検査は無料でも検査を受けられない最大の理由だろう。
いや、最も最大の理由は違うか。
「そろそろ時間なので乗りましょう坊ちゃま。」
「ウィル頑張ってきてね。」
「…うん。いってきます。」
ウィルが母親に撫でられているのを微笑んでみる。前世で28歳だったのだから、精神年齢は30代。お兄さんと言い難い年齢。おじさんのような気分である。
馬車に乗り込む。馬車は広く三面座るところがあり俺、ウィル、爺やの順番で乗り込む。俺の右はウィルで左が爺や。
「それでは動きますね。」
馬車の運転手が声をかけ、馬車が進み始める。爺やは会話の引き出しが豊富であり様々な話をしてくれた。過去の魔王様の話や、逸話、伝説など。
「・・・それでその男性は伝説の神龍を倒したのです。おや、もう着いたようですね。おりましょうか。」
馬車を降りるととても町は栄えていた。政治の中心らしい。魔王である父もよくここにきていると聞いた。魔王城も栄えているがこちらはお祭りのようだ。出店もたくさんある。うわ、おいしそう。
「検査が11時からで終わり次第、こちらを観光して帰りましょうか。爺やは中には入れませんのでしっかりしてくださいね。待っておきますので。」
「わかった。終わったら二人ででてくるから。行ってきます。」
「行ってきます。」
ウィルと一緒に検査場の中に入る。検査は有望な若者発掘の場でもあるので黒騎士(魔族の軍隊の上位層)などが見に来るらしく魔王の子としてのふるまいが必要であると爺やから口うるさく言われている。
「ウィルは一応、俺のそば付きで回りに通すから。俺のそばから離れんなよ。」
「うん。」
案内されると中には150人ほどいた。机といすが並べてある。大半はまだ席についていないようだ。服をみると貴族以下もいるようだ。ちなみにウィルには俺の服を貸している。俺に気づいた奴らがひそひそと話し始める。
「あれって。ノア様じゃない?」
「魔王様の三男の?」
「確かそうよ。わたくし写真で見たことありますわ。」
ちょっぴり有名人になった気分だ。いや、魔王の息子の時点で有名人か。同じぐらいの年の少年が近づいてくる。なんかニヤニヤしてるな…。嫌な感じ。
「初めまして、ノア様。わたくし第2級貴族のワルーラ家のシンシャと申します。」
ワルーラ家。たしか最近力をつけていってるところか。…なぜわかるって?勉学のたまものです!まずは貴族の名前、つまり関わりそうな人たちの名前を覚えさせられた。
「初めまして。ノア・サタンです。ワルーラ家は最近勢いがある貴族と有名でよく聞きます。」
「いえいえ、まだまだですよ。」
これ5歳児の会話かな.....。
「それにしてもノア様。横の方は?」
「あぁ、彼は私のそば付きでね。シャイだからいじめないでおくれよ?」
「いじめるなんてとんでもないです。」
「それじゃあ、失礼するよ。」
ウィルの手を引き、一番後ろの端っこの椅子に座る。自由席らしい。ウィルの顔を見るとむっとしていた。
「シャイじゃない・・・・。」
「ごめんって。貴族は平民だとわかったら突っかかってくる奴らも多いんだ。特にワルーラ家みたいな最近勢いをもった貴族はね。」
「めんどうだね。」
「まぁ、仲良くなる気はないし。」
「たまにノアはすごく大人に見える。」
「…そうかな?」
「うん。」
まぁこちとら前世の年齢+5歳で30代だからなぁ。そのとき、見るからに偉そうな魔族が入ってきた。神官的な?
「自由に席に座ってください。・・・これで全員ですね。それでは皆さん良く来ました。いまから属性魔法検査を行います。右前の席から順に検査します。特別な紙に血をたらし私が鑑定します。魔法で痛みはないので安心してください。」
そういうと右前から検査が始まる。