<まだ、生きている>
多方向から襲いかかる数の暴力と、見えない何かの攻撃、全てを捌ききることなど不可能に近く、少しずつ傷も増えてきている。
「随分と粘るものだな」
義足の男は未だその場所から一歩も動かず、余裕を見せている。
ぼんやり見える何かを避けることは容易いが、それに合わせて黒服の集団が退路を塞いでくる。
作戦と攻撃も完璧、どこも崩せるところなど見当たらない。
だが、ここで諦めてはいけないのだ。
「っ!」
突然サティーナが膝から崩れ、その場で吐血する。
何事かと近寄るよりも早く、それを見た義足の男はルナを無視して、サティーナに全力攻撃を仕掛ける。
ルナが近寄れないように黒服の集団が壁となり、サティーナの下へ向かうことを許さない。
ルナは唇を強く噛みながら自分の心臓を掴む。
常に心臓にある違和感を無理矢理表面に出すため、大きく深呼吸をする。
体が少しずつ軽くなっていく。だけど、同時に心臓が緩やかに止まっていく。
三秒、それが限界だ。
「どいて!」
ルナが地面に剣を突き立てると無数の闇が広がり、黒服の集団の足をからめとっていく。
身動きの取れない黒服の集団の上をジャンプして乗り越えたルナは勢いそのままにサティーナの下へ向かう。
―――間に合わない。
最善の手段を取ったけれど、義足の男の見えない何かは既にサティーナを捉えている。
あと一秒、遅れた。
「サティーナ!!」
ルナがサティーナへと手を伸ばし、その名前を呼ぶ。
―――やだ。失いたくない。
まだ、恩を返してないのに、バカな自分の目を覚ましてくれたあの日のお礼をまだしていない。
ありがとう、とそれだけじゃ足りない程サティーナに救われた。
一緒に寝てくれたこと。何度も助けてくれたこと。
たくさんあるのだ。だから―――
ドクン、と心臓が大きな音を立てる。
まるで何かを主張するように心臓が音を立てると、何かがルナに語りかけてくる。
『守るんだろう?』
ああ、そうだ。
『もう失いたくないんだろう?』
誰も失わないと、そう決めたから。
『なら、どうする?』
世界から色が抜け落ち、時間が止まる。
自分の時間は動いているのに、周りの世界は止まっている。
答えを出す時間は無限にあると言わんばかりの異常な出来事だ。
『今の君には彼女を救えない。なら、どうする?』
再度問うてくるその正体が屋敷の襲撃で自分の体を奪い、暴れたあいつだと気づく。
『どうしようもないだろう?』
どうしようもない。そんなの自分が一番知っている。
『力を貸そうか?』
自分の前に球体の闇が現れ、問いかけてくる。
これに手を伸ばせば、絶大な力を手に入れられる。
圧倒的な力でこの場を支配して、サティーナを救い、義足の男を難なく倒せる。
知っている。これがどれだけ多くの人を救えるか知っているのに。
「やだ」
いつの間にか声は出ていた。
だけど、そんなのは関係ない。
今の自分には自分の為に泣いてくれる人達がいる。
自分だけが苦しんで、それで救えるのに、その人達は泣いてしまう。
「私は、貴方に体を貸さない。もう、二度と!」
『だけど、そうしなきゃ君の為に泣いてくれるその人達を助けられないよ。君は弱い。そんなの君が一番知っているだろう?』
知っていても、誰かを守るために誰かが傷つくのはもう嫌なのだ。我が身可愛さと言われるかもしれない。
傷つきたくないと本心は思ってるのだから、それも正解だと言える。それ以上にまた人を傷つけてしまうという恐怖がある。
「貴方に体は貸さない!それでも皆は助けるよ。それが―――私の覚悟だから」
『僕としては大外れもいいとこだけど、神器からしたら正解なのだろうね。本当に、君はバカだ』
世界に色が戻り始め、目の前には浮かぶ球体は少しずつ薄れていく。
『―――覚悟は君に力を与えくれるだろう。だが、それは呪いだ。よく覚えておくといい』
散り際にヤミはそう言い残すと完全に消滅し、世界の時は動き出す。
体は自分のものとは思えないほど異常に軽い。
心臓は最早動いているのかさえ怪しい。
―――だが、今なら届く。
ルナの体から無数の闇が伸び、サティーナを捉えていた義足の男から伸びる何かを圧倒的な量の闇が包み込み無力化する。
「やっ...!」
ルナが達成感を得るより早く、その体を義足の男のから伸びる何かによって不自然に浮かび上がり、四肢を鋭利な何かで貫かれる。
輪郭しか見えないが今まで腕の形をしていた何かは槍のように鋭くなっており、そのまま地面にルナの体を固定するように突き刺さる。
「未熟だな。強大な力を持っていたとしても、それを持つ者が弱ければ使いこなせるはずがなかろう」
義足の男はようやく足を動かし、声にならない声で痛みに耐えているルナの下へ向かう。
既に誰の目から見ても勝敗は決していた。
一時的であれ限界を超えた力を使用したルナも敗北し、敗者らしい醜い姿を晒していた。
「痛いか。俺が憎いか。弱い自分に嫌気が差してくるだろう。所詮は異界からの使者、どうしてこの世界で自分が強いなどと思い上がった。先程の攻撃も避けることは容易かったはずだ。今まで平凡な生活を過ごしていた貴様でなければな」
男は地で醜く呻いている出来損ないの人間を見下す。
確かにサティーナを救えたことは称賛に値する、実際のところあの攻撃を防がれるとは思ってもいなかったのだ。
しかし、一時の達成感に浸っていたルナは背後を疎かにした。
長く戦ってきた人間であれば背後を気にするのは当然だ。
男の言うように何年も平凡な日常を送っていた人間と、数々の戦いを乗り越えてきた人間とでは実力は天と地の差だ。
「神器とは関係なしに多少は動けるようになったが、それでもまだまだ弱いな」
ルナの腹部に足を置き力を込めるとうめき声が漏れ、苦しそうに悶えようとするが、痛みに体を動かすことさえ封じられているルナはただ痛みに耐えることしか出来ない。
「どうして、そのように醜い姿を晒しながら息が出来る。仲間を守るなどと言っておきながら結果はこれだ。仲間に忘れ去られ、己に好意を抱く者でさえ守れなかった。弱い自分に呆れ、強い者を羨むのだろう?人などその程度の生き物だ」
―――ただ、守る為の力を願った。
最初は力を手に入れて、この世界ならやり直せると思った。
相手は本気ではないのに、キュウス達を救えたことに優越感を感じ、自身を最強だと思い込み―――失った。
何でも上手くいくと思っていた。
結果、大事な人達を失ったことにより自暴自棄になり自身を呪いながら死んだ。
もう一度与えられたチャンスを自分で捨てたのに、今もこうして当たり前のように生を謳歌している。
それを醜いと言わずして何と呼べばいいのだろう。
「死にたいのなら抗うな」
男が右腕を上げると、無数の腕のようなものが空から降り注いでくる。このまま、ここにいれば押し潰され、この醜いだけの人生に終止符を打てる。
「―――駄目ですよ、アカツキさん」
―――抗うことをやめ、諦めかけていた一人の人間がいた。
私はこんなにもその人を愛しているのに、その人は当たり前のように死を受け入れようとしている。
最初は嫌いだったのかもしれない。良かれと思ってやったことを全て否定され、拒絶された。
だけど、それはこんな事態を引き起こした人間の側近として生きてきた自分であれば当然の扱いだと思い込ませ、無理矢理納得させた。
「サティ...ナ?」
「そうですよ」
義足の男は突然目の前に現れたサティーナに何の躊躇もなく短剣を取り出し、その額に突き刺そうとするが体に触れられると反発しあう磁石のように弾かれる。
空から降り注いでくる腕はサティーナが見つめると、一瞬で砕け散り霧散する。
―――ようやく、何かを思い出せそうな気がする。
それは酷く血にまみれた記憶で、常にその少女には死が付きまとっていた。
目は闇だけを映し、希望など微塵も感じられない。体は骨ばかりで痩せ細り、毎日は生きた心地のしない生活だった。
過程はどうであれ、両親からの贈り物である力は生きることを邪魔する奴等を殺すことだけに振るわれた。
人に触れれば死を与え、魔法、魔力を帯びた物を全てを無力化する圧倒的な力を自分のことだけに使い生きてきた。
人生が何のために有るのか考えることすら時間に余裕はなく、子供は食料を奪ってくる害獣、老人は欺瞞の笑顔を振り撒き翌日には食料と金を持ち去っていく盗人、大人は子供や老人以上に汚れており、何千人も殺した。
ただ目標もなく生きてきた人生は、一人の女によって崩され屈服させられた。
生まれて初めて力で負けた少女に与えられた選択肢はここで死ぬか、その女に付いていき多少良くなった暮らしを与えられる代わりに今以上に人を殺すかの二択。
敗者は頭を垂れ、感情を捨ててただ一人の人間の為に尽くしていた。恐怖は忠誠心に変わり、人形のように持ち主に愛想を振り撒き、言われるがままに人を殺す。
この男もそんな人間なのだろうな、と思っていた。
けれどその人は変わることを選び、従者である人間に頭を下げた。主は絶対的なもので、その従者に頭を下げることなどあり得ないのに。
「私はアカツキさんから多くのものを貰えました」
付き従う人が変わった、ただそれだけなのにサティーナの世界は変わった。
与えられた寝床は立派で、毎日のご飯は温かくて美味しい。
こう言っては何だが少しだけバカな執事がいて、優しい主がいた。
1日が終われば不思議と充実した感じがして、安心して眠りにつける。
いつの間にか友達と呼べる人達が出来て、私は何時からかその輪の中に当たり前に居た。
充実感と満足感に満たされるのが当たり前になってしまったのだ。
ただ主が変わっただけなのに、私は何故か救われていた。
その人の笑顔は最初は酷く歪な笑顔だったけれど、1日、また1日と過ぎる度にその笑顔は明るくて、眩しいものになっていった。
そんな日々のなかで暮らしていたせいだろうか。
―――私もいつの間にか笑うようになっていた。
「アカツキさん、私は貴方に感謝してるんですよ。だから、これは私のワガママです」
サティーナが頬に手を置くと手足を貫いていた何かはボロボロと崩れ、不思議と倦怠感に包まれ、眠気が襲ってくる。
「貴方だけでも、救われてください」
愛しいその人に最後に告げた言葉は酷いものだった。
私はこれから私じゃなくなる。この人はそんなこと望むはず無いのに私は私はの身勝手な思いで、この人を悲しませてしまう。
「魔力の流れが緩やかになっている...?調整が出来るのか、ということは...」
「―――記憶が戻ってきてるな?」
サティーナには記憶と共に経験と力の使い方も思い出してきている。だから、その記憶を完全に思い出せば、力をフル活用出来る。
しかし、その結果サティーナは怪物に戻ってしまうかもしれない。それは今のサティーナの死を表す。
正直に言えばそれはとても怖いことで、出来ることならあんな傷だらけの記憶なんて思い出したくもない。
「どうして、でしょうね」
守る人が、心の底から守りたいと思える人が出来てしまった。
少しだけ幼くて、一人で抱え込みすぎてないてしまうこともあるひとだけれど、私はたくさんのものを貰った。
罪人たるこの身には抱え込めないほどに優しさと、思い出と、平凡な日常、たくさん、たくさん貰った。
「ミクさん、頼みました」
「―――!!黒服共!そこの人間を殺せ!」
「―――もう、遅いよ」
ルナ目掛けて飛び込んできた黒服の集団は巨大な腕に凪ぎ飛ばされ、ルナを抱えて逃げ出そうとしている裏切り者の姿が確認できる。
「いいのか、貴様の姉は我々の手に...!」
「残念でした。アカツキ君はもう先手を打ってるんだよ。貴方達が総動員してくることは看守の目が多少なりとも弱まること、その気を逃さない人に頼んだ、てね」
ミクはそれだけ告げるとルナを背負って寮の門をくぐって、逃げていく。
最後に残ったのはサティーナと、黒服の集団を率いる義足の男。
既にターゲットを逃し、この場に残っているのはサティーナただ一人。やることは決まっていた。
「総員、目の前にいるこの女を殺せ。時間は掛けるな。躊躇もするな。生かすことなど考えるな。殺せ」
ゆらりと多方向から百を優に越えるその人影はサティーナに明確な殺意を向ける。
「ちゃんと逃げてくださいね、ミクさん」
その中心に立つ義足の男を見つめて、サティーナは記憶を取り戻すこと今も尚拒んでいる頭を押さえながら、あの愛しい日々を思い出しながら、言葉にする。
「もう、いいよ」
あの日々が私に勇気をくれる。あの愛しい人の顔を思い出すだけで、体に力が溢れてくる。
私はサティーナに戻る。ただそれだけだ。
当たり前の日々を当たり前に生きる優しい私はもう終わり。
これからは―――
「あ...!」
思い出すことを肯定した瞬間心臓の鼓動が早まり、頭の中に無数の記憶が流れ込んでくる。
―――家を焼き払った。
何の接点もなく、正しいことをしてきて、何の罪もないはずの家族が住む家を。
心が少しだけ痛かったけど、これはしょうがないことだと割り切った。
―――幼い孤児の住む孤児院を焼き払い、命からがらに生き延びた子供も、例がいなくこの手で殺した。
―――殺して、殺して、殺した。
数えきれない人の屍を踏み、私は、サティーナはこの世界に存在している。
その女には常に死が付きまとい、希望など微塵も感じず、平和などとは程遠い場所で常に死を与え続けた。
ああそうか。
暗い部屋で下を見れば―――無数の死体が私を見ていた。
罪もない人を、淡々と殺してきた私はその人達の屍の上に、死神として立っていた。
「は、あ、ははは」
何だ、こんな人間だったのか、私は、サティーナは。
人を殺すことに何の思いも抱かず、その人を殺すための正当な理由も、言い訳すら考えておらず、言われたことをただ機械的にこなしていく。
『おやすみ、私』
頭の中に私の声が響くと体の感覚は消えていき、視界はぼんやりと輪郭だけが見える状態になっている。
軽い。軽い。
私は、サティーナは軽すぎる。
空っぽだ。何にも入っていない小さな器。
おやすみなさい。
そして、―――ただいま。
「な...!」
サティーナの目から光が消えていき、口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。
覚えている。この男はその人間をよく覚えている。
「戻ってきた、のか?」
「そうですよ。お久しぶりですね、ヘキルさん」
その顔は確かに笑っている。笑っているはずなのに、その笑顔からは明確な敵意が向けられている。
「記憶が戻ったのなら、戦う必要はないのだがな」
「貴方からしたらそうでしょうね。ですが、状況が大きく変わりました。前の私からしたら、あの方は守らねばいけない存在らしいので」
ヘキルがサティーナと会話することによって、最も気配を消すことに長けていた黒服の女がその背後に近寄っていく。
気づかれていない、そう思ったのだろう。
ナイフを持った右腕を振り上げたその瞬間―――ターゲットが振り返った。
気づかれていた、と思うよりも早く黒服の女の右腕はメシャリと音を立てて潰される。
その被害は右腕だけに留まらず、体を潰し、目が陥没し、足がバキバキに折れていく。
「あ、が、びゃ」
小さい断末魔を残して、黒服の女は見るも無惨な死体を野に晒す。
「化け物が...」
罵るような声を発したヘキルは右腕を空に掲げる。
すると、巨大な黒い塊が雲を突き破り、地上の人間を見下ろすようにその巨体を見せる。
「多少強引な召喚だが、貴様を殺すには十分だろう」
「魔獣というよりは、人の悪意、呪い、嫉妬などの負の感情を出鱈目に合成させた異形の存在ですね。あの方がぼんやりとしか見えなかったのはそういった負の感情に疎いから。人を許せないとか言っていながら心の奥底で自分が悪いのを知っている、そんな悪人になりきれない人なんですよ」
ですが、と前置きをしたサティーナは異形の権現と同時に剣、斧、弓、槍など様々な武器を持ちながら襲い掛かる黒服の集団の姿を全て捉えていた。
「人の醜さは私もよく知っていますので、見えますよ」
黒服の集団はサティーナに攻撃をすることはおろか、触れることすら出来ずにメシャリと鈍い音を立てて圧縮され、何かに押し潰される。
「雑兵では相手にならないことは知っているはずです。なら、私に対抗出来るのは貴方しかいませんよ」
「ほざいてろ」
化け物同士のぶつかり合いが始まり、学院都市での戦いは更に鮮烈なものになっていく。
その中、一人の女は狭苦しい牢で何も出来ずに空を見ていた。
外では常に人の悲鳴が聞こえ、家屋が崩れていく音が勝手に耳に入り込んでくる。
「......」
しかし、自分が出来ることなど何一つない。
また、大事な妹の足枷にしかなれなかったこの身を呪うことしか許されない孤独な存在。
その一人の人間に、歩み寄る者が居た。
全身がボロボロになりながらも地に足をつき、笑顔で迎えにくる一人の親友の姿が。
「カレン、遅くなってごめん」
その大事な親友の姿を見て、カレンは大粒の涙を溢す。
来てほしくなかった。誰も助けにきて欲しくなかったのだ。
この屋敷には五十近い衛兵に、三十ばかりの黒服の男と女、そんな警備を中を邪魔にしかならない人間を連れて逃げられるはずがない。ここに辿り着くまでにこんなに怪我をしていれば尚更だ。
「どうして...来たん...です」
「バカな親友を迎えに来たんだよ。いつまでも狭い部屋じゃ寝たくても寝れねえだろ?それにな...」
「―――ミクの奴があんたを待ってるよ。姉貴なんだろ?なら、可愛い妹に顔くらい見せなって」
昔から女の子らしからぬ雑な言葉遣いだった。
それは今も変わらない。両親を無くしても、大事な人達の居場所を守る為に憧れていた先生ではなく、一つの寮母として収まった。
強くて、自分のワガママに振り回されてくれて、大事な子供達をいつも見守っている。
自分には出来すぎた親友だ。
そんな人だから、こんな所に来てしまったのだろう。
この人は優しすぎるが故に、自分のしたいことをやめて、人の為に役立てる何かを選ぶ。
牢の鉄格子を破壊し、ナギサがその手を差し伸べる。
今からでもナギサ一人なら逃げ切れるだろう。自分は足枷にしかならない、それを知っていても―――
―――助けてほしかった。
1ヶ月以上もこんな暗い牢屋で過ごし、窮屈な地面の上で眠りにつき、空腹に耐えてきた。
いつの間にかカレンは泣いていた。
安堵感に大粒の涙が溢れ、ボロボロになった体は震えていた。
「皆が待ってるから急ごうぜ、カレン」
無謀かもしれない。ここで死んでしまうなんてことをナギサは微塵も思っていない。諦めるのは簡単だ、けれど挑むことで大事な親友を守れれば、それでいい。
絶対にここから逃げたして、また皆で笑い会える日を夢見て、ナギサは進む。その先に百を越える敵が居たとしても、もう止まらない。
そう、心の底で決心したのだから。