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遥か彼方の浮遊都市  作者: 神羅
【農業都市】
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<聖なる日を祝いましょう>

今日二回目の投稿

――俺がバカでした。

アルフのお母さんが居るって事は当然ウズリカのお母さんもいるという...


「ウズリカ!!危ない事はしちゃだめって言ったでしょう!!」

「母さん...ごめんなさい」

「それで何したの?」

「ねえ!!何で今、母さん怒ったの!!?」

「いや、お決まりの展開ってあの女の人が...」


どうやらあのバカ女神は色々な事を吹き込んでいるみたいだな。

あいつマジで女神辞めればいいのに。


「ねえお母さん、何で会いにこれたの?」

「それはね、お母さんがとーっても強いからなのよ」


「母さんは何で居るの?」

「それはね、母さんは神様だから」


「「ふぅーん」」


このバカ親どもは...。

アルフはともかくウズリカにそんな嘘分かるだろ...


「まあ別に良いけど、早く帰ったら?」


予想以上の仕打ち!!

これはさすがにきついだろ、かわいそうにウズリカのお母さん....


「これがツンデレ!!?女神様の言ってたのは本当だったのね!!」

「ツン....デレ?」


本当に何を教えてるんだ、あの女神...。

その内核とかの作り方教えないだろうな。

まじでバランスってもんが無くなるから、それはやめてほしいけど。


「じゃあ俺は買い出しに行ってくるかな...」

「何で?」

「多分だけど今日はクリスマスってやつで俺の国ではめでたい日なんだよ」

「へえー。変わった文化もあるものね」

「それは俺にも言えるぞ」

「じゃあアルフも一緒に行くー」


アルフはぴょんぴょんしながら手を挙げる。


「そうだな。このなかでは一番年下だし、好きな物買ってやるからな」

「じゃあ私も...」

「アルフのお母さんはもう死んでるって事なんだから、外に出たら駄目だな」

「僕もアカツキさんに同意です。二人は待っててください」

「...?お前も待ってるんだぞ?」

「ええ...」


ウズリカはいかにも嫌そうに戸惑う。

アルフの母も、後ろで項垂れている。

ウズリカの母はこそこそしながら、何かを探しているようだった。


「さあじゃあ行こうぜ」

「ねえあなた貨幣持ってるの?」


テンションが上がり、扉を開けていたアカツキは立ち止まる。


そうだった。

俺は無一文じゃないか...


「仕方ないですね。そこの引き出しに食費が入ってるので使っていいですよ」

「良いのか?」

「キュウス様が起きたら報告しておきますから」

「ありがとな。じゃあ子守り頼んだぞ」

「「任せて」」


いやお前らじゃない。

何故かテンションだけ高いアルフのお母さんにこそこそウズリカの私物を漁っているウズリカのお母さん。

この二人は絶対に誰か監視させなくちゃいけないしな。

俺がやればいいじゃないかって?

嫌だよ、めんどくさいし。


「行ってきまーす!!」


大きな声でアルフは挨拶をして、外に走っていく。


「おい!!一人で走るなって!!」


# ######

【農業都市大通り 5:00】


「朝早いのに結構人で賑わってるな」

「そうだよ。お仕事が始まるのは四時からだから、皆早起きなんだよ」


辺りは出店が並んでおり、人で賑わっていた。

ただ奴隷らしき人達が、奥で働かされているのがアカツキは不満だった。


「さてと...まずはケーキだな」

「ケーキ?」

「そっ、俺の国ではケーキっていう甘い食べ物があるんだ」


でも異世界でケーキを作れるかは分からないけどな。

何せ食材も全く分からないからな。


「なあ?アルフは食材に意外と詳しかったりする?」

「お菓子なら大体分かるけどご飯を作るのはお兄ちゃんだからあんまり分かんないの」

「そっかー。うーんどうすっかな」


バタッ...


「うん?」


突然俺の前で人が倒れる。


見た目は黒い髪を伸ばした少女だった。

アカツキはすぐに近寄る。


「あんた、大丈夫か?」


肩を揺さぶっても反応がない。


気を失ってるのか?

息はしてるみたいだし病院に連れてった方が良いのか...


そこでアカツキはふと気付く。

誰も倒れた少女を気にかけないことに...


「おい、アルフ頼みがある」

「どうしたの?」

「こいつは...奴隷か?」

「.....そうだよ。この肩の傷は奴隷つけられるものだからね」

「どうりで回りの奴らが気にしない訳だ」


全く感心を示さない回りの人達にアカツキは違和感よりも怒りを覚える。


「ありゃあ...。すいませんねぇ、奴隷が倒れてるって聞いたんで来てみたら、人様に迷惑かけてましたか」

「いや別に俺達は迷惑なんて...」

「おい!!さっさと起きろ!!ブス!!」


そう言って男は少女を蹴りつける。

少女は気を失い蹴られてる事すら気づかない。


「寝てんじゃ...!!」

「おい」

「どうしましたか?」


アカツキは拳を強く握る。

しかし男は少女をまたも蹴ろうとする。


「さっさと起きろって...!!」

「てめえが寝てろ、カス」


思い切り男を殴りつける。

男は突然殴られ後ろに倒れる。


「何すんだ!!」

「いやいや、てめえが何してんだよ」

「アカツキ...」


アルフは心配したようにアカツキの裾を掴む。

アルフも昔、何度か衛兵に殴られた事があり、トラウマである。


「大丈夫だって、アルフ」

「うん...」


アカツキはポンッとアルフの頭に手を置く。


「こっちは仕事してんだよ!!」


男はアカツキを持っている鉄らしき棒で殴りつけようとする。


「おい...。あの子ってキュウスさんとこの...」


そんなマンガにありがちな独り言で場が静まる。


「...キュウス様の...お連れの方?」

「そうだよ。キュウス様のお客様なの」


さらにアルフは追い討ちをかける。


「何故...。このような...奴隷を?」

「俺の国ではこういう時は助けるんだよ」

「しかし..!!」


尚も口答えをしようとする男の声に被さるように別の声が聞こえた。


「おい...!!あんたやめとけって!!キュウス様が怒るぞ」


ボソッと聞こえた男の声が決め手となったのか、衛兵は鉄らしき棒を納める。


「このたびはー、まことにーもうしわけございませーん」


適当に謝り衛兵は立ち去る。

そうするとまた周りの人達は何事もなかったかのように賑わい始める。


「おい、あんたまじで大丈夫か?」

「アカツキ、とりあえず移動させないと迷惑になっちゃうよ」

「そうだな...ったく」


少女を背負いアカツキは立ち上がる。

そのまま人通りのない場所に運ぶ。


「アルフ、どうやったら目を覚ますかな?」

「寝たい時は寝る!!」

「んじゃこのまま寝かせとくのか?」


どこが悪いのか分かんないからやっぱり病院に連れてった方が良いのか...?


そこで一人の青年が現れる。


「お困りのようだね」

「....誰?」


緑色の長い髪をしている青年が立っていた。


「僕はアズーリ、先程の声の正体と言えばいいかな?」

「あんたが...!!あんなありがちな台詞を言ってくれたのか。分かってんなー」

「....?」

「誉めてもらってるんだよね?」

「そうだよ、俺は今めちゃくちゃ感動してる」

「う...うん。ありがとう。それよりもこれを使って起こすと良いよ」


そう言って差し出したのは小さな球形の薬のような物だった。


「これは?」

「気付け用の丸薬だよ」

「アルフ、本物か?」

「うん。そうだよ」


アルフの確認を取ってから少女に飲ませる。


「信用して欲しいね」

「残念ながらこの国で信用しろは無茶だぜ?」


青年は肩をすくめる。


「まっ...そうか。それじゃあね」


去っていく青年をアカツキは止める。


「あんた、何であんな事した」


この国では奴隷は大したものではないのに、この男はわざわざ助けた。

俺としては何か企んでるとしか...


「何かあったら緑色屋根のある屋敷来るといい。いつでも歓迎するよ」


ただそれだけを言って去っていく。


「まじで何者だよ...」


そこで少女が目を覚ます。


「ケホ...」

「うん?」


少女は咳き込み始める。


「アルフ?」

「あの丸薬は苦いから、ちょっと大変なの」


まじか...。

でも目を覚ましたようで良かった。


「あなた方は?」


咳き込みも少し落ち着き少女は質問してくる。


おお...。

かなり綺麗だな...


「お..俺はアカツキ」

「私はアルフ!!」

「アルフにアカツキさんですね」

「何でアルフだけ呼び捨て?」


少女はアカツキにはさん付けしたのにアルフは普通に呼んだ。

それがアカツキには不思議だった。


「だってアルフさんは奴隷ですよね」

「.....分かるんだな」

「キュウス様の奴隷ですから、分かりますよ」

「そう....」


アルフの言葉を遮りアカツキは言う。


「アルフはただの女の子だ。奴隷じゃない」

「あなたは優しいんですね」

「おいおい。俺は鬼畜だの変態だの色々言われ続けたきたんだぜ?」

「それでも...。あなたは優しいです」

「そっか。なら良いや」

「お姉さんも一緒に来る?」


突然アルフは少女を誘う。

しかし少女は...


「いえ、ご主人様が待ってるので帰り...」


そんな少女のお腹からぐうーーーーっと音がなる。


「腹減ってるのか?」

「何でもありません」


しかしまたもぐうーーーーっとお腹が鳴る。


「ほら、行こうぜ」


アカツキは少女に手を伸ばす。


「迷惑じゃ...」

「別に良いよ。あとさ、食材に詳しい?」

「はい。大抵の食材なら分かりますよ」

「よし!!じゃあ買い物に付き合ってくれ」

「....はい」


少し食少女は悩むが、目の前の優しい少年に着いていく。


# ######

【農業都市大通り 8:40】


「さあ、色々あったけど買い物を始めっか」

「頑張るぞー!!」

「まずはケーキって知ってる?」

「アルフは知らない」

「私は本で読みました。遠い国の方々が伝えたものと」

「博識だな。じゃあ作り方は?」

「小さい頃試しに作ってみました」

「どうだった?」

「酸っぱかったです」


ええ...。

ケーキ酸っぱいの?

この展開として砂糖と塩を間違えましたー。みたいな?


「じゃあ作るのは俺がやるから、どういう物で生地とかホイップとかを作ったか教えてくれ」

「生地はアポタシの実で、ホイップっていう物はクルミカの実とワスカの母乳で」

「よし分からん!!買うのは頼んだ!!」

「全く...。面白い方ですね」

「俺を持ち上げるか、頭良いな。よし何かお菓子でも買うか!!」


しかし反応を示したのはアルフではなく少女の方だった。


「本当ですか!!」

「お..おう。本当だ、顔近いって!!」

「お菓子なんて6歳の頃に食べたのが最後で...」

「そうか。じゃあ泊まってけよ、どうせ奴隷一人帰って来なくても構わん!!とかいうバカ野郎だろ?」


「.....そうですね。どうせ最後になるんですから」


ボソッと少女呟く。

しかしアカツキは大通りの出店に夢中で気づかない。


「まずはあそこ行こうぜ!!」

「あそこね、団子っていうもちもちした食べ物を売ってるんだよ」

「まじか!!よし、行こう」


二人は店に向かう。


「おーい!!あんたも早く来いよー」

「はい!!」


まるで最後の晩餐のような辛い心情を少女は抱えている。

それでも最後くらいは楽しくしようと精一杯笑う。


それが今出来る少女の精一杯の事なのだから...

次回でクリスマス編は終わります

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