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遥か彼方の浮遊都市  作者: 神羅
【農業都市】
7/181

<聖夜の異変>

クリスマス...か。

――現在深夜2:30、さっきようやくアルフにじゃんけんを覚えさせ、始めようとしたのだが...


「なあ?やっぱ聞き間違いじゃないのか?」

「誰か屋敷に入ってきたんだよ!!」

「こんな深夜に?」

「そうだよ」


こんな深夜に屋敷に入り込むとか、変態さんかな?

アルフ狙ってんなら、ぶっ飛ばす!!


「ほら!!また聞こえたよー?」


今度はアカツキにもハッキリと聞こえた廊下が僅かに軋んだ音を....

そして理解する。


これ幽霊だわ...


「お迎えに行かなきゃー」

「待て待てアルフ」

「どうしたの?」

「俺の感が言ってるんだけど、多分幽霊じゃね?」

「幽霊...さん?」

「そう。まずこんな深夜に何も言わずに何故屋敷に入ってこれた?鍵はかけてるのに」

「アルフ....やだ。幽霊さん怖い」

「大丈夫だって、俺も怖いから絶対にこの部屋からは出ないぞ!!」


二人はその場でじゃんけんを続ける。

ルールはようやく理解したようだ。


「最初はグー」

「じゃーんけん」

「「ポイッ!!」」


結果

アカツキ パー

アルフ グー


「残念だったなロリよ。我が神の左手には敵うまい」

「また負けたー...。またお菓子取るの?」

「何言ってんだ。ほらお菓子あげるから」


今まで7回じゃんけんをしてアカツキが全勝という奇跡を起こしている。

しかしアルフの可愛さに負け、ちゃくちゃくとアカツキのお菓子は消えていく。


「はっ!!いつの間に!!ロリ...恐ろしい子...」

「次で終わりにするよー!!」

「お前負けてるんだからな!!?」

「ナニヲイッテルノカワカリマセン」

「とぼてんじゃねええええええ!!」


アカツキはアルフの頭をぐりぐりする。


「あぁぁぁ...。?...気持ちいいかも..?」

「怖っ!!?」


ロリにMときたか...

異世界万歳だな。


「お前の性癖が知れて俺は嬉しいよ」

「せーへき?」

「別に気に病む必要はねえよ、性癖なんて人それぞれなんだからな」

「じゃあアルフは凄いの?」

「うん。もうスッゴい!!」

「やたー!!」


マジで何にも知らねえんだな...


アカツキはぐりぐりしていた手を止め、ソファーに座り直す。


「さて勝負を続けようぜ」

「アルフは強いぞー!」

「可愛さでたぶらかしてるだけだろ?」

「可愛さも実力の内ってアルフが言ってた」

「要はお前が勝手に決めたんだよな!!?」

「ごちゃごちゃうるさいんだよ!!」

「お前何なの!!?」

「え...?こう言うんじゃないの?」

「は...い...?」


そうか...。

奴隷の生活環境は最悪で、ウズリカみたいに博識なのは以外と少ないのかもな...

それに小さい頃から奴隷生活に浸かってたら、覚える言葉は罵声とかか...


「アルフ、もし分かんなかった事があったら俺に聞いてもいいんだぞ?」

「分かんない事?」

「そうだ。さっきの言葉はちょっとあれだからな」

「やっぱり...ダメ?」


アルフはアカツキを上目遣いで見て、悲しそうに呟く。


上目遣いで俺を見ないでくれ!!

だんだんこの雰囲気がヤバくなってくる...


「俺は自宅警備員のプロだかんな。ずっと部屋に引きこもってるから暇な時来れば話し相手にはなれるぞ」

「学校みたいに教えてくれるの?」

「学校...?」


驚いたな...。

異世界にも学校はあるものなのか?

てっきり戦いばかりの生活だと思ってたな...


「学校ってどんな場所なんだ?」

「お兄ちゃん聞いた話だと、勉強が駄目だと奴隷にされちゃうんだって」

「は..?いや...おかしくね?」

「だって学校ってそんな場所なんでしょ?」

「そういうことか...」


大分この都市はイカれてるみたいだな...

勉強が出来なかったら、退学とかじゃなく奴隷になんのかよ。


「お兄ちゃんもそのせいで奴隷になっちゃったんだって」

「ええ?ウズリカが?」

「そうだよ。お兄ちゃん悲しそうにしてた」

「じゃあアル...」

「違うよ、アルフはお母さんが売女って仕事で、生んだんだって」


.....アルフ、何でそんな年で意味を知ってるんだよ...

いや...教えさせられたのか...


アカツキは少しずつこの都市のイカれ具合が分かってくる。

人身売買に、奴隷の扱いの非道さなどまだまだ調べれば出てくるだろう。


「ごめんな、アルフ」

「もう気にしてないから良いの」


つらそうにアルフは笑顔を見せる。


もう...か。

ならそんな風に笑うなよ...ばか。


ギシッ!!


「!!!!!!!!」


突如扉の前で音がして、二人は同時にビクッ!!となる。

そして扉を見る...


まじか?

本当に幽霊さんなの!!?

怖いから!!それヤンデレの次に怖いからぁ!!


ギシッ!!


ごめんなさい!!ヤンデレこよなく愛します!!

だけど...


ギシッ!!


すいませんっしたぁ!!

口答えしてすんませんした!!


この状況でアカツキはパニックになり、心でよく分からない事を言っている。

音のタイミングも相まってさらにパニックに陥る。

しかしそんな頼りないアカツキの裾をぎゅっと握るアルフ。


「アルフ?」

「アルフ幽霊さん...怖い。けどアカツキはお客様だから守るの」

「ッ――!!」


全く...。

こんな子供が頑張ってんのに俺がパニックなってどうするんだよ。

今すぐドアを蹴破ってこの刃で斬ってみるか?


アカツキは近くにある刃を握る。


もし幽霊に物理的攻撃は効かなかったらおしまいだけどやるしかねえか...


ギシッ!!


「バタン!!」


すいません。俺はマジで幽霊怖いっす...


アカツキは先ほどまでとは真逆の方法で切り抜けようとする。

タンスの中にアルフと共に身を隠す。

音は扉の前で何やら足踏みしてるように聞こえるがそれが逆に恐怖心を増大させる。


「アカツキ...きつい」

「我慢しろって、俺だって幽霊怖いの!!」

「お兄ちゃん置きっぱなしだよ?」

「.....」


ああ、くそ...。

時には犠牲も必要だ、あいつはもう...


「お兄ちゃんはな、高い場所で見守ってくれるから...」

「高いところ?」

「ウズリカ...か。いいやつだったよ」

「ねえまだ死んでないよ?」


何と!!

ここでツッコミか...

だけど、幽霊なんかと会った日には風呂も一人で入れない、一人で寝れないから!!

そのためにこれは致し方ないということで...


「ねえ...アカツキ」

「俺は出ないぞ?」

「トイレ」

「え?」

「漏れちゃう...」


# ######

【屋敷 深夜3:40】


「ばかやろーーーーー!!」


只今後ろを振り向かずに走ってます。

何か扉を開けた時何か見えたけど、走ってます。

アルフは今つらそうですね...。

でも半分喜んでます...怖いです(アルフが)


「我慢って気持ち良いんだね」

「お前さぁ!!何でちょっと喜んでるの!!?」


アルフをお姫様だっこする形でトイレに向かっている訳ですが、ちょくちょく後ろから音が聞こえるのは幻聴ですかね。そうじゃなかったら俺はここで倒れますよ。

見るくらいなら、気を失った方が俺はマシです。


ギシ!!


「アカツキ...後ろ」

「言うなよ?幽霊何か見たら俺がどうなるか自分でも分かんないぞ?」

「....かあ....」

「何をカラスの真似なんかしてんだよ!!」

「お母...さん」

「は...い?」

「お母さんな...の」

「お前の母さん生きてんのか?」

「ずーっと前に死んじゃった」

「なら多分それ幽霊だな!!だから...」

「じゃあアルフ下ろして」

「駄目だ」

「まだ...話した事ないの」

「....駄目だろ。俺の知ってる幽霊はあの世に引きずりこむとかそんな奴ばっかだからな?」

「でも...」

「じゃあお前はトイレ行ってろよ?俺が話してみて話が通じたら紹介してやる」

「分かった」


アルフを下ろして音のする方に歩いていく。

真っ暗な空間に響く足音はそれだけでもかなり精神にぐりぐり来る。


「あなた...は?」


....!!?

たしか音がしたのは俺が走ってる時の後ろの方で、今は前にいると思ったんだけどな...

音のする方とは反対の場所からの出てくるとか...。


「これ以上アルフに...!!」

「アルフなのね!!」


突然肩を掴まれ、揺さぶられる。


「俺...ここでさよならだ...。じいちゃん...今いくよ」

「何で死に台詞みたいなの言ってるのよ!!」

「さあ覚悟は出来た!!抵抗はしないから痛いようにしないでください...」

「何か最初かっこよかったのに後の言葉がものすごくカッコ悪いわよ!!」

「何ですか!!焦らしプレイですか!!アルフのお母様も趣味がよろしいですね!!」

「私が悪いのかしら!!?」


そんなくだらない漫才みたいなのをしてるとまたも異変が起こる。


ギシ!!


「は...い?」


また聞こえたのは廊下を歩く足音。

しかもウズリカが眠ってる部屋のところから!!


「どういう事だ?二人幽霊がいるのか?」

「多分私よりも先客みたいね」

「てことはさっきから聞こえてた足音はその幽霊の足音か?」

「私の目が覚めたらあなたがアルフを持って、走ってるから、それを追いかけてたの」


ということはアルフのお母さんはついさっき目を覚ましたばかりで、足音の犯人はまだ扉の前に居るのか...


「アルフのお母さんなんですよね?」

「そうよ」

「何でここに?」

「キレイな髪をした女の人が送ってくれたの」

「特徴は?」

「白いローブに紫の髪の可愛い女の人よ」

「女神じゃん!!」

「あら、そうだったの?」

「何で幽霊を送って来たんだ?」

「聖夜の夜くらい愛娘に会いたくないか?って言われて会いたいって言ったの」

「そんな事できるのか...」


俺でも分かるけど死者を送ってくるなんて結構やばいと思うぞ?


「後ほころびがあるから送れるとも言ってましたよ?」

「ほころび?」

「あんまり詳しい事は知らないの」

「うーん。聖夜ってのはクリスマスだよな?でもほころびって何だ?」

「そんな事よりアルフはどこなの!!」

「今トイレですよ」

「あの子が一人でトイレに...!!大きくなったのね!!」


何やら興奮したように話しているアルフのお母さんに若干引きつつ話を続ける。


「失礼ですけど、アルフのお母さんが亡くなったのいつですか?」

「そうねえ...。7年くらい前かしら?」

「じゃあアルフのその後の事を知ってますか?」

「ええ...。ただ見るだけってのはとてもつらいものなのね」

「そうですか。じゃあアルフ所行きますか?」

「そうね、早く愛娘に会いたいわ。後一つ聞いていいかしら?」

「どうぞ?」

「あなたはアルフの彼氏さんかしら?」

「ぶふぅ...!!」

「そ..っそそ、んな訳ないじゃない!!!」

「言葉おかしいわよ?でもかなりキレイに育ったと思うのだけれどねー」

「俺はロリコンじゃないんで」

「あら...見てたから嘘なのは分かるわよ?アルフと楽しそうに話してたじゃない」


たしかにロリは癒しだけども恋愛対象ではないんだよなぁ。


「あら...。やっぱり違うのかしら?」

「やっぱりって...。知ってるじゃないですか!!たしかにアルフは可愛いですけど、好きではないですよ」

「残念ね」


少し残念そうに肩をすくめながら、歩きだす。


「そっちトイレじゃなくてお風呂ですよ」

「.....」


アルフ母は少し耳を赤くしながら、その場で静止する。


「案内するのでついて来てください」

「お願いするわね」


うーん...。幽霊って何か薄くて足がないイメージだったけど実体なんだなぁ...

それにあんまし怖くないな。


「早く会いたいわぁ」

「はいはい。じゃあ行きましょうか」


# #######

【屋敷 4:10】


「お母さん?」

「アルフ!!」

「お...おはようございます」

「実のお母さんに戸惑っちゃうなんて!!そんなアルフも可愛い!!」

「お二人とも感動の再開の所悪いんですけど、ウズリカどうするんですか?」

「ウズリカ...?ああ、アルフの面倒を見てくれてるあの子ね!!」

「お兄ちゃん寝てるんじゃないの?」

「何と幽霊さんは二人居ましたー」

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