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遥か彼方の浮遊都市  作者: しんら
学院都市
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<行動開始>

この話は戦いの前の話なので、いつもより短めです。

「ねえ、何か人の気配が全然しないんだけど」


ガブィナと契約をし、補習プリントを無事終わらせた一同は荷物を持ち部屋を出たのだが、生徒が居ないのは分かるが、職員までもが居ないことに違和感を覚えていた。


「昼寝でもしてるんじゃないかな」

「アレット、相変わらず頭湧いてるね。仕事を放棄して昼まで寝てる奴がどこに...」


ナナが言い終わる前にサネラ、サラ、ララの三人を除いた全員がすっとナギサを見る。


「ね?あながち間違ってはないでしょ?」


アレットが自慢気に言うとナギサがその頭をガッと力を込めて掴む。


「誰のせいでそういう生活になったのか分かってないみたいだね」

「離せぇ!!教師が体罰を加えて良いと思ってるのかぁ!!」


アレットは必死に叫ぶがナギサは関係ないねと言わんばかりに涼しい顔をしている。


「私、教師じゃないし」

「殺される!!このままだと見たくない汁が飛び散る!!」

「お前は私を化け物か何かと勘違いしてないか?このまま、引きずってやろうか?」


これが冗談を言っている風に見えないから、ナギサは恐ろしいのだ。


「でも、確かに変じゃないかしら?ナギサさんがどうか分からないけれど、誰一人居ないのは、流石におかしいと言わざるを得ないわ」

「委員長まで...。どうしたん...」


アレットは言葉を途中で中断して、驚いた顔で外を見る。

サネラから見たその顔は驚きと同時に殺意があるようにも見えた。


「どうしたの?」

「いや、何でもないよ。ただ、トイレに行きたいから一旦休憩してから観光に行こうよ」

「....?休憩ならさっき取ったじゃな...」


『来てる。山の中に三十近い数の人が。それと少し離れた場所に副理事長と教頭らしき足音の二人』


サネラのすぐ耳元でアレットの声がはっきりと聞こえる。

アレットの特殊魔法によるものだろう。ミクとナナを除いた全員の反応から見て、まず間違いないだろう。


「そうね。じゃあクレアちゃんナナちゃん行きましょう?」


「ラルースっち~私達も行こー」

「そうね」


「姉さん」

「ええ、分かってるわ」


アレット、ガブィナの男子組を除いた寮組生徒全員が動き出す。

カレンは女子と一緒に移動を開始する。


「ガブィナ、準備はいいかい」

「任せて」


残ったガブィナとアレット、ナギサの三人。


「ナギサさんも、ついていって下さい。あの中で戦いに向いてるのは双子の姉妹とリナだけです。他の皆は援護向きなので、ナギサさんもついていった方が戦闘で負けることはないはず」

「あんたらはどうする」

「僕とアレットはここで足止めをしてから、予定通り集合場所に行きます」


そう、昨日のお菓子パーティーはただ遊んでいた訳ではない。

今日、副理事長達が動くであろうことを予測した緊急会議でもあったのだ。

都合良くナナはすぐ寝て、クレアはガブィナとお菓子に夢中になっていたおかげで、聞かれてまずいことを聞かれずに済んだ。


「委員長の話だと、アカっち達はあと3日は掛かるみたいなので、今日は絶対に捕まってはいけないんですよ」

「相手は三十人近いだろ」

「優秀な二人組で十分」


アレットはそう言って、ナギサとは反対側に動き出す。

ナギサは小さく舌打ちをして、女子組の方へ向かう。これが最善の行動だろう。

クレアとナナの二人を人質に取られればアカツキは必ず救出する為に動く。そうなれば、ガルナの作戦は失敗すると言ってもいい。


「アレット」

「ん?どうしたんだい?」

「相手は大人?子供?」

「そこまでは分からないよ。三十人は固まって動いてるから、足音が聞き取りづらい。けど、離れた場所に居る二人は副理事長と教頭で間違いは無いと思う」


ガブィナは珍しく運動前の準備体操なのか屈伸をする。


「最初にどっちを潰すの」

「数が多い方と言いたいけど、逆だね。二人組の方を潰す。私情だけじゃなく、記憶を操作する方が危険度で言えば一番だからね」


淡々と喋っているがアレットに掛かっている負荷は絶大なものだろう。

いつ、どこから敵が現れるか分からない状況で限定的な場所のみの音を聞いていたら、必ず穴が出来る。つまり、現在のアレットはこの山全ての音が何十、何百倍にも聞こえているのだ。


「武器は?」

「多分杖だね。それと剣とか斧みたいな音も聞こえる。これは馬車か何かに積んでるね」

「まさか殺しに来てる?」


ただ連れ去る為にこの人数に比べ、様々な武器、殺しに来てるとしか思えないのだろう。


「そうだね」

「じゃあ、どうするの」

「こっちは絶対に誰一人殺しちゃ駄目だよ。あの男もそう計算してると思う。もし、誰か一人でも殺せば、この都市での扱いは人殺し。相手は腐っても、現トップなんだから。政治的な発言には流石に逆らえないよ」


そう、この作戦は全てが不利な状況。


「ただ、もし一回でも殺せば、もう躊躇しなくても良いよ。どうせ人殺しには変わりないんだから」

「そうだね」


決心がついた二人は森の中へと姿を消した。


...一方。


「動いた。アレットから連絡だ。確定とは言い切れないが副理事長も移動をしているらしい」

「やっとかー」


ボロボロの宿で四人も動きだそうとしていた。


「作戦をもう一度言うぞ。屋敷に潜入して、悪事の証拠、または理事長に関係する資料を奪う。重要なものは表には出していないはずだ。屋敷中を二人一組で探せ」

「りょーかい!!」

「アレット達から連絡来たら撤退開始だ。良いな」


こうして、全ての場面がようやく動き出した。

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