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遥か彼方の浮遊都市  作者: 神羅
学院都市
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<平和な日々>

今日は早く仕上がったので、いつもより早めの投稿。

シウン達が寮を去ってから、あっという間に一週間が過ぎた。

その間に起こった事件と言えば四組のある女子生徒が姿を消したことと、シウン達が学院に来なくなったことで、先生が不良になったー!!と叫んだことぐらいである

理由は分からないが、副理事長も少し焦っているようでクレア達の周りでおかしなことが起こることは無く平和な日常が続いていた。


シウン達が寮を去ってから丁度一週間の夜、女子部屋はある話題で盛り上がっていた。


「ラルースっちは髪を切った方が良いと思うんだよね!!」

「嫌ね。リナならともかく、他人と目を合わせたくないもの」


そう、突然リナがラルースの髪についての話題を上げたのである。


「確かに、せっかくの美人が台無しじゃん」

「ナナちゃんまで変なことを言わないでくれるかしら」


ラルースが前髪を結ぶのは心を覗く時のみで、普段はずっと目を隠している。

実は結構な人見知りだったりするのである。


「クレアはどう思う?」


少しだけ悩んだ素振りを見せたクレア。


「ちゃんと前を見えてるんですか?」

「ええ、髪の隙間から見えるわ。それに元々私はあまり動かないもの、運動もあまりしないわ」


ラルースがしていることと言えばホラー系の本を読んでることぐらいだ。

それに移動するときは大抵リナがついてくるので、あまり前が見えなくても音で分かる。


「私はうるさいからね」

「自分でそれを言うの?」


えっへんとよく分からない威張りを見せたリナ。

自分のことは自分がよく知っている、がリナなりの考え方である。


この後も様々な話題で盛り上がりを見せた女子部屋。

しかし夕飯が近くなったので、一旦話題を置いて、部屋から出てくる。


「アレット達はもう先に行ってるみたいだね。さ、私達も行こう!!」


勢い良く階段を降りていくリナに続き、他のは三人もそのうるさい後ろを追いかけていく。

食堂につくと、ぐったりとしたアレットと今日も元気良く夕飯を食べているガブィナが居た。


「アレット、どうしたの?あんたがそんなにテンションが低いなんて珍しい」

「いや...ね。明日どうしようか悩んでるんだよ」

「....なんかあったけ?」


学校で何をしていたと言わんばかりに驚きの顔を見せるアレット。

そんなことを言われてもシウンの為についてきただけで、学院の授業のほとんど全部をグルキスに教えられているナナにとって、授業というのは休憩時間としか思っていない。


「明日から三日間林間合宿があるんですよ。そのことですよね?アレットさん」

「そう、地獄の三日間になる!!僕達補習組にとって!!」


アレット達は見ての通りバカなことしかしてないので、魔法のことぐらいしか覚えている知識はない。歴史など今の自分達には関係ないねという謎の考え方のせいで、まともに知っているのは大昔に起きた魔獣の大規模襲撃くらいだ。


「良いじゃないですか?皆さんもちょっとした気分転換になると思います」


クレアとナナは入学してまだ1週間程しか経っていないので強制的に補習である。


「ふーん...。林間合宿かー」

「それに補習を終えれば、残りは観光なども出来ると聞いていますね。勿論先生方も同行するようですが」

「そうだね。それは深刻な問題だと思うよ」


リナまで神妙な顔つきをして、アレットと話し込み始めた。

ラルースはそこそこ成績が良いので、あまり気にしていないようだ。


「クレア、あいつらは放っておいて私達は先に夕食済ませない?」

「そうですね」


話についていく気の無いクレアとナナは料理を選びに行く。

その間も5組専用と化したテーブルで四苦八苦するアレットとリナ。

ガブィナは大量に盛られたポテトをとても幸せそうに食べ、ラルースはホラー本を読んでいた。

ここでも自由な5組、その中に割って入って来る人物が居た。


「お前ら、食堂を会議室か何かと勘違いしてるのか」

「あ、ナギサさんおはようございます」


リナだけがちゃんと挨拶をする。

ナギサは相変わらずパジャマ姿での登場だ。


「ああ、おはよう」

「そ、それで今回は何の罰を?」


アレットが若干上ずった声で問いかける。

それもそうだろう、こうしてナギサが話しかけてくる時は寮の禁止事項を破った時だからだ。


「いやな。お前らに言いたいことがあってな」


アレットとリナはごくんと生唾を飲む。


「明日の林間合宿でお前らの担当に私とカルナになったから」


その言葉に幸せそうに食べていたガブィナと本を読んでいたラルースまでもが青ざめる。


「僕達が何をしたって言うんだぁ!!」

「アレット、僕は明日から学院休むよ」

「リナ、私も合宿には行かないわ」

「やだよぉ!!行かないでよラルースっち!!ついてきて、友達なんだから!!」


阿鼻叫喚となる5組のテーブル。

そこにナナとクレアが不思議そうに戻ってくる。


「あ、ナギサ。って今起きたの?」


ナギサは激しく拒絶を見せるアレット達を苦笑をしながら見ていた。

まさか、ここまで自分の評判が落ちているとは思わなかったのだろう。


「ああ、おはよう二人とも。そう、さっき起きたばっかだよ」

「あんたの生活どうなってんの...?」


まさに昼夜逆転生活、しかしこういう生活習慣になってしなったのは夜な夜な問題事を起こしてきたアレット達が原因であるのを二人は知らない。


「皆さんどうしたんですか?」


叫んでいるアレット達にクレアは質問をする。

それにアレットが恐怖混じりの声で答える。


「僕達が悪いことをしたから...。明日の林間合宿は地獄に...!!神様ああああああああ!!」


精神崩壊しつつあるアレットに流石のクレアの引いている。

ナギサの心情はどうしてここまで私怖がれてるんだろう、と疑問を抱いている。

本人は普通と思っているが鉈を持って遅いくるナギサから夜の町を逃走する。

アレット達にとっては恐怖以外の感情を抱けるはずがない。


「本当に大丈夫なの...あんたら」


大丈夫じゃないです。


...数時間後


しかし決まってしまったものは仕方ない、アレット達はまるで戦争にでも行くかのような顔つきで自室に戻り、明日に備えての作戦及び武装の準備をしている。

女子組のリナとラルースの二人は最初は怯えていいたが、リナの「何事も前を向いて考えよう!!これは挑戦だよ!!この壁を乗り越えて私は強くなれる!!」とカッコ良く前向きな言葉で元気を取り戻した。


「クレア、お風呂行かない?明日早いなら、出来るだけ早く寝たいからさ」

「良いですよ。待ってて下さいね」

「はいはーい」


現在は夜の21:30分、一般生徒なら既に消灯時間だが、自由な5組にとってそんなの関係ない。

お風呂は魔力さえ注げばいつでも入れるので、問題はない。


「ラルースっち、私達も行こー」

「そうね。明日の為に体力を残しておきたいもの」


各々自分のパジャマを用意する。

ここで必要無いかもしれないが、四人のパジャマを説明したいと思う。

クレアは農業都市の一件後にアズーリに買い物を手伝って貰い買ったもので、ピンク色の可愛らしいパジャマである。ただ、難点があるとすれば目のやり場に困ることだ。

ナナは昔からお気に入りの青いパジャマで、猫の模様があり子供っぽい感じだ。

リナは運動好きという性格がそのまま反映されたような、スポーツ用品の模様だらけのパジャマだ。

ラルースも同様で、不気味なお化けの刺繍などが施されているパジャマである。


「湯船に突撃だー!!」


タオルを巻いて勢い良く飛び込むリナ。

浴場の大きさは副理事長によってクラス分けされる前までは、寮の全員で使用していた為、とても大きい。

しかし新政策によって、5組の差別化が始まり寮にまでその影響は届き、副理事長の強行により、各クラスごとの浴場が造られた。

昔からあるものなので、若干古臭く感じるが、それ以外の性能や設備は別段変わったところはない。


「リナ、あまりうるさくしないで頂戴。皆はもう寝ているのよ」

「そうだったね。ごめんごめん」


ラルースは一応周りへの気遣いが出来るが、リナは自由奔放な性格なので、こういうやり取りも日課に近い。


「ナナちゃん、それじゃあお願いします」

「目、開けないでよ」

「わ、分かりました」


二人のやり取りに疑問を抱いたラルースが何の話をしているのか質問する。


「あまり気にして無かったけれど、クレアちゃんは自分で髪を洗えなかったりするのかしら?」

「ま、まあ色々とあるので」


そう、農業都市では奴隷にとってお風呂に入るということすら出来なかった。

クレアの場合、ヴァレクの奴隷だったおかげと言っては失礼だが、外出時に水浴びをすることが出来た。

しかし、髪を洗ったり服装を整えるのは大抵メイドに任せられていたせいで、長い間自分で髪を洗うことが出来なかった。

長い間の奴隷生活で基本的な雑務はこなせるが、自分のこととなるとからっきしになってしまう。


「一応練習はしてたんですが、自分の髪を乾かすのも難しいんですよね」

「そうなの。失礼なことを聞いちゃったわね」

「いいんですよ。もう慣れましたから」


今までその話のやり取りを聞いていただけのリナがその言葉に反応を示して、クレアに近づいて行く。


「クレアちゃん」

「どうかしましたか?」


リナはクレアの前につくと、暗そうな顔で屈む。


「クレアちゃん、そう言うのは慣れちゃ駄目だよ。辛い時は辛いって言わないと分かんないよ?」


リナが優しい声でそうクレアに言い聞かせる。


「辛いことに慣れるのは悲しいことだよ。クレアちゃんはたまに暗い顔をするよね。私はバカだからクレアちゃんのことがまだあんまり分からないけど、クラスメイトだよ。自分でこれで良いやなんて思わないで。辛かったり悲しい時はそっと私の所に来てくれても良いし、自分でどうしようもない障害があるなら、一緒に乗り越えてあげるからね」


似ている、そう一瞬思ってしまった。

アカツキと似ている優しさをリナから感じた。


「そうですね。ありがとうございます。そう言ってくれるのが、とても嬉しいです」

「あんたがまともなことを言うなんて...。変な物でも食べた?」


ひどいよー!!とまたいつものやかましいリナに戻る。

ラルースが微笑んでいたように見えたが、きっと見間違いだろう。


「クレアちゃん、リナはいつもうるさくて大変だけれど、ちゃんと周りが見えてるわ。それでも、やっぱり分からないことがあるわ。もし何かあったら相談するのよ」

「ラルースさん...。ありがとうございます」


クレアは5組の皆に会えたことを感謝した。

この都市に来る前は不安だったのだ。

都市と都市の違いだけで差別されることもあるのではないかとも思っていたが、違っていた。

5組のクラスの皆は快く受け入れてくれ、寮での生活は少し煩いけれど楽しくて、幸せだ。


「クレア、そんな顔してどうしたの?」

「いえ、こういうのが幸せなんだなって思ったんですよ」

「幸せね。クレアがそう思ってくれるならあのバカも喜ぶだろうね」


今はどこで何をしているか分からないが、きっと誰かの為に頑張っているはずだ。

そう思っていても寂しいのだろう。

あんなにいがみ合っていたナナも最近はどこか悲しそうに遠くを見ていることが増えた気がする。


「もう!!ナナちゃんまで暗くなってるよー!!」


後ろかナナを抱き締めるリナ。

いきなりのことにナナはビックリして逃げ出そうとするが、リナの力の方が上だったようで逃げ出せずにいる。


「ちょ..!!話しなって!」

「どうしたのー?そんな顔を真っ赤にしてー」


じたばたと抵抗して抜け出そうとするが、徐々に抵抗力が落ちていく。


「...ん?どうしたの?疲れちゃったー?」

「お願い...離して」

「もう!ナナちゃんは可愛いなー!!」


頬擦りまでしてくるものだから、ナナは恥ずかしくて顔がずっと真っ赤だ。


「もう...好きにして...」


「「!!?」」


ナナの妥協にラルースとクレアが何故か驚いた。


...風呂を上がった一同はぽかぽかした体を冷やさないようにすぐ布団に入る。


「まさか、ナナちゃんがあんな簡単に諦めてしまうなんて、ビックリだったわ」

「そうですね。シウンさんと喧嘩する時はもっと抵抗してたはずですが...」


あの後リナの思うがままにされたナナは、とても怠そうにベッドの上に倒れる。


「リナ、あれは普通だったら痴漢と思われても仕方ないと思うわ」

「私は可愛いものを愛でてただけだよ」


何をされたまでは言えないが、ナナにとって恥ずかしいことだったのは確かだ。


「ナナちゃん、大丈夫ですか?」

「これが大丈夫そうに見える...?」


ベッドから動きたくないナナは「もう寝るから、準備お願い」と言い残して眠りについた。


「クレアちゃん、忙しそうだからナナちゃんのは準備手伝おっか?」

「いいんですか?」

「私はもう準備終わったからね」


それならお願いしますと言うことで、ナナの衣服を入れているタンスから下着などを取り出して合宿準備を手伝うリナ。そこに準備を終えたラルースも手伝う。手伝うと言ってもリナが変なことをしないか監視するためだが。


「よし、これでオッケーだね」

「そうね。タオルとかは貸してもらえるそうだから、これで準備は完璧ね」


「リナさん、ラルースさん、電気を消しますよ」


「良いよー」


クレアが部屋の明かりを消すと、今日は誰も騒がずに静かに眠りにつく。

オマケ


<アレット、ガブィナの密談>


「ねえ、どうするの?」

「ガブィナ、覚悟を決めるしかない。明日の林間合宿での秘密パーティーの主催者として、行かない訳には行かないんだ...!!」


そう、明日から三日間は寮での監視は無いはずだった。

しかしナギサもついてくるという事態になってしまい、こうして作戦を練っていた。


「僕達男子組は問題は無いけど、問題は女子部屋だよ。ガルナから得ていた事前情報では教員の分まで部屋を確保出来なかったみたいなんだ。だから、各教師は自分の担当クラスと相部屋らしい。先生の場合はナルフリドを飲むとすぐ寝ちゃうから大丈夫と思っていたのに...!!」


現実はとても厳しいものだ。

ここまで予定通りに進まないとは思ってもいなかった。


「あんなに悩んでたけど、クレアちゃんとナナちゃんが行くんだから、結局行くんでしょ?」

「アカっちとの約束だからね」


しかしあの話を聞いた直前は恐怖で頭が一杯でそんなに考えれなかったことは秘密だ。


「作戦は本当にこれで良いんだね?」

「ガブィナ、準備は頼んだ」

「任せて~」



【アレットの作戦】

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