表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か彼方の浮遊都市  作者: しんら
学院都市
53/187

<二つの出来事>

二話同時投稿無理だったよ...。

本当に申し訳ない

「あんたらは何がしたいんだ?」


小さな部屋の中でシウンは質問を投げ掛ける。


「私達がしているのは魔獣の調査、それだけよ」

「調査?それも嘘だろ、あんたらに最初会ったときに言ってたよな【専門】に任せるって。バーサーカーは魔獣の討伐だけを生業にしているなら、他にも居るはずだ。あんたらが攻撃なら敵を調査する奴等がな。じゃないと戦いは成り立たない、相手の情報を知り、どのように攻めるか。戦いの基本だろ?だからあんたらは調査なんかしないはずだ」


シウンが考えられたのはここまでだ。この予想は的外れかもしれないし、ちょっとは真実にかすってるかもしれない。

しかしシーナは何も言わない。それが言えないのか、言いたくないのかは分からない。今のシウンにとってこれが最後にできる質問だ。


「あんたらは俺よりもっと多くのことを考えてるかもしれない。だけど、ごめん。今の俺には本当に信じて良いのか分からない。これ以上話し合って、何も進まないなら、俺は教室に戻るよ」

「...」

「そうか...。じゃあな」


シウンは静かに扉を閉めて、小部屋を後にする。

それと同時に水晶は音もなく砕けちり、空気に溶けていく。


「シーナよぉ、確かにお前は間違っちゃいねぇよ」


廊下の外からユグドが中に入ってくる。


「そうね。だけど、あの子からしたらまた何かを隠されていると思うわ。農業都市の一件はそれほどまでに彼の心を追い詰めた。何も知らない、嫌なんでしょうね。また何かを失ってしまうのが怖い、もっと良い選択をしていたら助けれた、戦いの中でずっとそう思ってたはずよ」

「そうかねぇ」

「ええ、ただ表には出さなかった。いえ、状況がそうさせてはくれなかったわ。神器によって精神が不安定であるにも関わらず戦い続けた。あの子を助けるために立ち止まることは許されない。どんな思いだったんでしょうね。自分の嘘によって恩人は死に、自分を助けるために多くの犠牲が出た。自分の行動が全て裏目に出たのよ」


ユグドは小さくため息をこぼす。


「それは誰に言い聞かせてんのかねぇ」

「さあ、誰でしょうね」

「だけど今回はあいつと敵対することはねぇだろうよ。それに機密事項をちゃんと守ったんだ、お前は悪くねぇさ」

「...。戻るわよ、作戦に」

「了解したぜぇ」


...



「相棒、さっきの綺麗な人は誰?彼女?僕という男が居ながら?」


教室に戻ると、いつものようにアレットが話しかけてくる。


「お前は何なの?ふざけてるの?バカにしてるの?」

「どっちだと思う?」

「どっちもだろ?」

「正解!!」


シウンが教室に戻ると椅子や机は元通りになっており、今は休み時間なのか、各々好きなことをしている。


「んで?お前と委員長はどうすんの?」

「今回悪いのは間違いなく僕らだからね、アイナス先生から優しい説教を受けてちゃんと挨拶回りをしてくるよ」

「そういうのはちゃんと筋が通ってんのな」

「当たり前だよ、僕はごく普通の生徒だからね」


ごく普通?俺の知ってる普通とは随分違う気がするんだけど。


「ふざけた話はここまでにして、アカっち達は何の部活動に入る予定?」

「...え?やんなきゃ駄目なの?」


校庭を走る生徒や、~の部室などの部屋があったから部活動があるのは知ってたけど、まさか部活動にまで入らなきゃいけないのか...。


「臨時入学とはいえ、この学院の生徒であることに変わりはないからね」

「どうしよ、オススメの部活とかある?」

「普通の定番なら、陸上、挑戦するなら学院七不思議解明部とか?」


ここにも七不思議とかあるんだ。


「どういうのがあるんだ?」

「お、興味を持ったね。だけど七不思議は全部知ったら不幸な目に会うっていうから僕も詳しくは調べてないけど、知っている範囲なら教えれるよ」

「その言い方だと、お前はその部活に入ってんな?」


そうだ!!と言わんばかりに目を輝かせるアレット。


「そうだよ!!相棒も入ればきっと部活は盛り上がる!さあ、今すぐに入部を決断しようか!!」

「...まずは七不思議を教えてくれないか?」

「え?じゃあこの入部用紙に名前を...」

「おい、さっさと教えろ」


ここまで強要してくるからには何かしらあるにではないか?と考えたシウンは場の雰囲気に流されないように詳しいことを知ってから決めることにした。このクラスの生徒は絶対に何か企んでいるだからだ。


「大丈夫だよ、この部員はこのクラスの過半数だし、心細くはないよ?」

「それより七不思議」

「何でさ!!相棒は僕のことを信じられないって言うのか!!?」

「うん、だってお前ら頭おかしいもん」


その一言を聞いたアレットは大きく目を見開き、何てことを...と呟きながら床に倒れる。

すると、まるでそのタイミングを見計らったかのように、ガブィナが駆け付ける。


「アレット!!大丈夫かい!?誰がこんなことを...!!くそ...お菓子を一杯くれて、入部用紙に誰かが名前を書いてさえくれれば...」


内容も胡散臭いし、自分の欲望も混じってるし、もうめちゃくちゃだな...。


「「さあ今こそ学院七不思議解明部に!!」」

「おい、さっさと七不思議を言えよ」


ガッとアレットの胸元を掴み、多少強引に聞き出そうとする。


「やめるんだ!今、アレットは深く傷ついて...」

「よし、ガブィナ後で好きなお菓子を買ってやるからな。待ってろ」

「ワン!!」


お菓子に負けた友人ガブィナの裏切りにアレットは失望を隠しきれない。


「ガブィナ...」

「ごめんよ、アレット...。シウン伯爵によるお菓子の魔力で逆らえないんだ..!」


俺じゃなくても簡単に従えられそうな気もするが、今は放っておこう。


「アレット、七不思議を」

「この悪魔!!僕達の友情を壊してそんなに楽しいか!」

「ガブィナ、追加でお菓子を買ってやるから説得してやってくれ」

「ワンワン!!」


犬の真似をしながら、ガブィナはアレットの耳元で呟く。


「アレット、ごめんよ。お菓子が目の前にちらついてしょうが無いんだ...!真実を...言ってくれっ!!」

「くそ!!この悪魔め!ガブィナをお菓子依存症にするなんて!!」


なぜ七不思議を聞くのにここまで面倒なことをしなければならないんだろう。


「じゃあもういいや、ガブィナ、教えてくれ」

「お菓子追加で契約してやろう」

「良いよ」

「良かろう!我の契約者よ!真実を知るが良い!!」


悪魔の真似が気に入ったのか、結構ノリノリな様子のガブィナ。


学院七不思議その1:5組によく出没する謎の豚

学院七不思議その2:学院内に潜む謎の豚

学院七不思議その3:人間の言葉を喋る謎の豚


「我が教えれるのはこの3つのみだ。さあ、対価を支払え人間よ」

「じゃあ帰りにお菓子屋に寄るか」

「やったー!!」


ガブィナは喜びながら、教室中を走り回る。うるさすぎて委員長に叱られているが、俺は悪くないので放っておく。


「なあ、アレット」


シウンはニコニコしながらアレットの方に向き直る。


「あ、ああ、相棒!!大丈夫!まだ話し合えるから!!」

「俺らは相棒?だろ言葉は必要無いよな」


「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!」


アレットはシウンにこめかみを何度もグリグリとされ、叫ぶ。

十分程痛みが続き、解放される頃にはグンナリとしていた。



「痛い...痛いよぉ」

「また無理な勧誘をしてるからでしょ。ほらアイナス先生の所に行くわよ」

「委員長にはあの痛みが分からないんだ...」

「ほら立って、授業を潰してるんだから早くしなさい」


アレットは嫌々立ち上がり、ふらふらとした足取りで廊下に出ていく。


「さっきのはあんたの得意技?」


ナナが若干呆れた顔で問いかける。


「大丈夫だって、本当ならもうちょっと力強いから」

「もうちょっと...。じゃあさっきのは大体本気だったんだ」

「食らってみる?あるMっ子には好評のグリグリを」

「食らいたくないって...。あとMっ子て何?」


そうか、一応ナナは純粋枠だもんな。大分勘違いが多いけど。


「そうだな...。ナナなら痛いのって嫌だろ?」

「うん」

「それが気持ちいいとか感じる人をMって言うんだ」

「何それ...」


Sっ気のあるナナとは真逆の存在だからか、本気で気味悪がっているように見える。


っとまずは聞かないといけない事が。


「ナナは何か入りたい部活ってある?」

「部活?あんたが勝手に決めていいよ。私は大体何でも出来るし」


さらっと万能アピールをするナナ。しかし実際料理も出来て、運動もシウンよりは断然出来るので万能であることには変わりないだろう。


「じゃあ次はクレアか」


クレアはこういうのに憧れていたのか、学校の中を楽しそうに見ていたりクラスの人と楽しそうに話をしている。


「ナナ、クレアを呼んで来てくれないか?」

「あの中に入るのが怖いんだ」

「だって女子ばっかりの話し合いに男が入れるはずないじゃん。気軽に入っていったら間違いなく何こいつとか思われるって」


はあ...仕方ないと言いながらもちゃんとシウンの頼みを聞いて上げるナナ。

ミク達と楽しそうに話しているのを見ていて、シウンも悪い気持ちはしない。農業都市での生活が普通では無かったのだ。これが本来のクレアの姿だ。普通の女の子であることが農業都市では許されなかったのがおかしいのだ。


「連れてきて良かったかな」


さっきまでのイライラも今の光景を見ているだけで、だんだんと薄らいでいく。


「どうかしましたか?」

「あ、ああ。クレアは入りたい部活とかあるのかなって思ってさ」

「そうですね~。うーん...。私は皆さんと一緒ならどこでも良いですよ」


答える側では一番簡単な答えなのだけど、質問した側では困る答えだよな...。


「じゃあ放課後三人で色々な部活を見てから決めるのはどうだ?」

「私は良いよ」

「私も構いませんよ」


この話し合いが終わってからは特に何も無く普通に時間が過ぎていった。

だがこのクラスの普通を他のクラスの普通と比べてはいけない、給食の時に行われた牛乳早飲み大会という謎のイベントもこのクラスでは普通だ。参加者はアレット、ガブィナ、シウンの三人。結果はガブィナの圧倒的なタイムにより圧勝。その後、三人仲良く午後の授業の半分をトイレで過ごしたのも普通だろう。


「終わった~」


授業の終わりのチャイムとともに机の上でぐた~となるシウン。


「アカっち授業はどうだった?」

「今日は歴史ばっかだったな。聞いてる分には分かるけど、やっぱり教科書の字が読めないのはキツいな」

「何でアカっちは字が読めないのとか聞いちゃ駄目かな?」

「そこは聞かないでくれると助かる、色々と面倒な事情だし」


なら良いやと珍しく素直に言うことを聞いたアレット。

いつもなら、ねえ?何で?何で?とか聞いてくるはずだが、本人が本当に言いたくないことは無理に聞こうとはしないのだろう。

こういうところではしっかりとしているアレット、だがそれ以外がバカなことばかりで悪目立ちしてるのだ。


「アカっち達はこれから色々な部活を見て回るんでしょ?」

「そうだな、良い部活があれば良いけど...」

「沢山あるんだから、ゆっくりと決めると良いよ。あと、学院七不思議解明部の活動場所は5組の教室だよ。下らないという理由で部室を貰えなかったからね」


何があってもそんな部活には入らないと思うけどな。


「じゃあ一旦お別れだな」

「楽しんできてねー」


荷物を持ち、教室から出ると外ではナナとクレアが待っていた。


「よし行こうぜ」

「どこから見るの?」

「運動系は避けたいから学院内の部活から見てみようか」

「あんたは...。まあ勝手にしなよ」


ナナはあんまり乗り気じゃないが、クレアはずっとそわそわしていて楽しみにしている。


何か良い部活があれば良いな。



...どういうこった。


「君、5組何だって?やる気がない子を入れるのは...。ねー?」


「ごめん、うちらの部活に5組に奴らは要らないから」


「底辺が、よくここに来れたな」


予想以上にこの学院は腐っていた。

どの部活も5組であると理由で入れようとはしない。運動系の部活にも行ってみたが、やる気の無い奴は要らんなどの理由で見学すら許してくれなかった。


「はー...。駄目だ、これ以上何か言われたらキレそう」

「あの副理事長の考えがこの学院では一般常識なんだね。思った以上に腐ってんじゃん」

「二人とも、そんなこと言っちゃ駄目ですよ。ほら次に行きましょう?」


クレアもあまり心地よいものでは無いだろう。だが、どうにかしてこの学院に馴染むために頑張っている。

彼女がここまで我慢して頑張っているのだ。シウンもここで簡単に投げ出す訳にはいかない。


「誰か誘ってくんねーかな」


「なら良い部活を紹介しよっか?」


後ろから突然誰かに話しかけられる。

バッと振り向くとそこにはミクが仁王立ちをしていた。


「それ、恥ずかしくないか?」

「何事も慣れだよ」

「いや、そのポーズのことじゃなくて。そんな大きく足を開いてたらパンツ見えるぞ」

「あえて、見せようとしてるだよ。見えそうで見えない、ロマンなんでしょ?」


やっぱり何を考えてるのか分かんねぇ...。


「学院七不思議解明部なら却下な」

「いやいや、私もあれには入りたくないから」

「じゃあ何?」

「まあまあ、そんな焦らないで、来てみれば分かるよ」


どうせ行く場所も無いし、見てみるだけならいっか。


大分テンションが高めのミクに案内されてたどり着いた部室には『探偵部』という貼り紙が貼られた部屋だった。


「へえー、こんなのあったんだ」

「あんまり知られていないからね。だけど依頼は結構来るよ」

「たとえば?」

「彼氏が二股してるかもしれない。彼氏の性癖が知りたいとか?」


...。


「それはお前の願望じゃなくて?」

「半分おふざけだけど、半分本当だよ。そんな頻繁には来ないけど、たまにそういった依頼もあるのは事実だし」


とりあえず、中に入ってみよっかと言われ、流されるままに部室に入るシウン達。


「いらっしゃい、依頼は...。何だ、お前らか」


ガルナが堂々と中で足を組みながら構えていた。


「ミクが連れてきたのか」

「そうだよ。うちは部員が少なくて、シウン君達は部活を探してる。まるで神様が入れって言ってるみたいだよ」

「確かに人手は足りないが...。こいつらか...」


おっと、これはバカにされてるのか?確かに厄介事の種になってきているから、迷惑だろうけど。


「シウンはともかく、私達までそんな目で見ないでくれる?」

「俺は駄目なんだ」

「牛乳の飲み過ぎで一時間も時間を潰したからね。だんだん知能も低下してきてない?」


いつもの毒舌でシウンをバカにするナナ。


「おやおや、そうやって人を見下すんですかナナさんよ」

「当たり前でしょ?そもそも自分が普通だと思ってるのが笑えるよ」


いつもと変わらないパターンでお互い挑発しあう。この後の流れは喧嘩が始まり、クレアが止めるのだ。

だが、今回は5組ではまあまあ普通の部類に入るガルナが居る。


「喧嘩をするなら外でやれ、部室内では暴れるな」

「だって」

「お前がやるってんなら、良いぞ?今度こそ泣かせてやる」

「あんたが?無理だね」


ばちばちと火花を散らし合う二人をどうにか宥めるクレア。


「二人とも落ち着いて下さい。やっと良い部活を見つけたのに」

「運が良かったね、年下に泣かされるようばことにならなくて」

「お前こそ泣きべそをかかなくてすんだな」


「「ああ!!?」」


今にも取っ組み合いを始めそうな勢いの二人。


「クレアちゃんも大変だね」

「いえいえ、これが平常運転ですから」

「部室内で暴れたら追い出すぞ」


ガルナは面倒事は勘弁だと言わんばかりに大きくため息をつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ