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遥か彼方の浮遊都市  作者: しんら
学院都市

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52/189

<真実とは>

「もう、俺帰っていいかな」

「無理だろうな」

「てか、お前は飽きないのかよ?」


かれこれ一時間は学級裁判が続いている。

十分に一回の割合で喧嘩が勃発し、それを止めること以外はほとんど何もせずに心を無にして、裁判の成り行きを見ているという状況だ。


「先生も若干乗り気だから、止めようにも止められないし...」

「お前たちも勉強時間が減るから良いだろ」


俺がここに臨時入学したのは勉強する為なんですが...。


「どんくらいで終わるのかねえ...」

「あの双子が本当のことを言ったらだろうな」


隠蔽の為に学級裁判まで発展させた元凶である双子はと言えば、ずっと傍観を決め込んでいる。


「姉さん...」

「駄目、言ったら怒られるわ」


といった感じで妹は罪悪感を感じて早く本当のことを言って終わらせたいのだが、姉の方がなかなか認めてくれない。

過去にも一度これと似た問題が発生したときも双子が関わっており、姉であるララは当時風邪をひいてしまっていた妹の分も怒られたからだ。三時間にも及ぶ説教の恐ろしさを知ってしまったララはどうにかしてこの状況を打破したいと考えている。


「ガルナー、お腹へったー」

「バッグに持ってきてある、勝手に持っていけ」

「やったー!!」


ガブィナは流石に飽きてきたのか、ずっとお菓子を食べている。


「何で持ってきてんだよ...」

「うるさいからだ」


毎日の様に頼られているガルナは、一番手っ取り早い方法が常にガブィナに何かを食べさせておくことだった。他の人から見ればお人好しに見えるだろうが、これは楽するための方法であり、優しいわけではない。と言っている。


そして他にも飽きている生徒がいる。


「ふっふっふ...。フルハウス!!」

「うわああああああ!!また負けたよー!」

「ふふ...。残念ね、私もフルハウスよ」

「もしかして私の一人負け!?ミクちーだけでなく、ラルースっちにまで負けたの!!?」


こちらもずっとトランプで時間を潰している。

先程からずっと連勝をしているミクに、強くもなく弱くもないラルース、これで十四回目になるのに一度も勝利出来ないリナの三人は学級裁判が始まって二十分位は楽しそうに話を聞いていたのだが、三十分経つ頃には

ミクが持ってきたトランプで遊んでいた。


「自由にも程があるだろ」

「そんなことを言ってたら3ヶ月も過ごせないな。こいつらのモットーは聞いてるはずだ」

「ナギサさんから聞いてるよ」


「だからー!!僕は壊してない!」

「リナちゃんが物を壊すはずがないじゃない!!」

「委員長がそう思ってるだけだって!!ねえ相棒!」


遂に来たか。ここで本当のことを言ってこんな無意味なことを終わらせよう。


「そう...」


シウンが真実を言い出そうとした時だった。

教室のドアが大きな音を立てて、乱暴に開けられる。


「また貴様らか!!1組から苦情があったから来てみたら次はなんだ!!底辺どもが!!」


5組共通の豚野郎こと、副理事長が教室に乗り込んでくる。


「アイナス!説明しろ!これで何度目だ!?ワシの学院に蔓延るゴミ虫どもの担任はお前だろう!!」


副理事長はアイナスにどんどんと音を立てながら近寄り、その頬に思いっきりビンタをする。

バチーン!と大きな音が教室に鳴り響く。


「この...!」


もう一度手を上げる副理事長。

それを止めようとシウンが立ち上がるよりも早く、飽きてトランプをしていたミクがその手を掴む。


「副理事長、一応この都市の主導者だけど女性に手を上げるのは駄目ですよね?」

「何を小娘が...!!」


副理事長の周りに一瞬炎が出現する。

無詠唱で魔法を発動する際に発生する予備動作のようなものだ。

しかし副理事長の魔法が発動するよりも早く、今まで言い争っていたアレットとサネラが若干怒りを含んだ声で魔法を唱える。


「「ウルファルト!!」」


無数の鎖が副理事長の振り上げた腕は縛られ、口は塞がれる。

しかし無詠唱で発動させる場合動きを封じようと意味が無い。


口は塞がれていて見えないが、目で笑っていることが分かる。


「無理だな」


シウンの側でガルナがボソッと呟く。


「何がだよ」

「そのままの意味だ」


...何も起きなかった。

確かに無詠唱の予備動作である炎が目視出来た。なのに何も起きない。


「副理事長、突然の無礼をお許し下さい。ですが先生と生徒に危害を加えるのはよろしくないかと」

「今回の騒ぎの原因は僕達二人です。指導を受けた後に各先生方に謝ります、今回は申し訳ありませんでした」


鎖が副理事長から離れて消えていく。

副理事長はそんなことよりも何故魔法が発動しなかったのかという意味で驚きを見せている。


「どういうことだ...!ワシに何をした!!」

「...?」

「アレット、とぼけたって無駄だぞ!!どうやった!」

「僕はウルファルトを唱えただけですが?」


アレットの表情からして嘘を言っている様には見えない。

ということは...。


「ガルナ、お前は無詠唱の魔法を知っていたのか?」

「情報を商売にしているんでな。それくらいの情報なら簡単だ」


ユグド達、一部の人間でしか知れない情報をガルナはどうやって知ったのか、と聞いてもどうせ意味が無いだろう。それくらいのことならシウンにも分かった。


このクラスの奴らは...。

一癖も二癖もある厄介な奴ばっかだ。


「知りたいのはそれだけか?」

「今のところはな」


ということはいち早く危機を察知出来たこいつがキャンセルで魔法を無効にしたのか。


「貴様ら、どこで知った!!」

「授業で習いましたよ?」

「ふざけるのも...」


副理事長がもう一度声を荒げようとした時、次は後ろのドアがガラッと開く。


「シウンは居るかしら」


来訪者はシーナ、三人の専門家の一人が突如5組の教室に入ってくる。

それにはシウンも驚きを見せる。


「何でここに?」

「あなたに至急会って貰いたい人物が居るの」


しかし驚きを見せたのはシウンだけではない。


「どうしてバーサーカーの奴がここに居る」

「あら副理事長、久しぶりね」

「貴様らの入国は禁止したはずだ」

「ある魔獣の捜査に来てたのよ。ちゃんと理事長にも話は通してあるわ」


今はこの都市での絶対的権限を持っている副理事長もその権限を与えられているに過ぎない。

その権限を与えている理事長の言葉には逆らうことは出来ない。それもこれだけ大勢の生徒が居るのでは尚更だ。理事長から許可を貰った、その言葉に苦虫を噛み潰した様な顔の副理事長。


「どいつもこいつもワシをバカにしよって...!」


副理事長はそう吐き捨てて5組の教室を後にする。


「シウン、急いで」

「あ、ああ」


シウンはもう何が何だか良く分からない。

それほどまでにこの短時間で分からないことが増えたのだ。

だが、今は優先すべきことを済ませることにした。


「よぉ、待ってたぜぇ。中に入りな、外は俺とワーティで見てるからよぉ」


着いたのは校内の端にある小さな部屋、外から見られないように暗幕で隠されていた。

その部屋の中には水晶の玉がポツンと置かれていた。


「連れてきたわよ」

「あ...ありが..と..う、ししs...な」


水晶玉からはザザザとノイズが入ったような音と一緒に小さく声が聞こえた。


「アカツ...キ...と..たね?」


きっとアカツキと言ったねだろう。


「そうだけど?」

「君..にに..たの...みたい...こ...ある」

「何で俺なんかに?」

「り...りr..まで...は...話せ...そう...な..い」


もう既に半分近くがノイズによって聞き取れなくなってきている。

あと数分もすれば完全にノイズによって聞き取れなくなってしなうだろう。


「分かった、じゃあ頼みたいことだけを」

「そそs...れ...は...助...る。...ぼ...ぼぼぼぼ....。くの...つく...つく...え...の...な...か...」


プツンと音を立てて、水晶から聞こえた声が途絶える。


「おい!!早すぎだ!!何を言いたいんだ!!」


ザザザザザザザザザザザザ。

ノイズだけが部屋の中に響き渡る。


「俺なんか呼ばなくて、シーナさん達が聞いた方が良かったんじゃないか?」

「無理ね。これはあなたしか聞き取れないもの」

「...は?」


ここでも状況が上手く掴めないシウン。


「それは未来を映す神器によって造り出された物よ。本来なら私達にも聞き取れるのだけれど、今は微弱な音しか聞き取れないわ。それも神器に関係している人物しか聞き取れないの」

「どこで手に入れたとかは聞かないでおくけど、じゃあどうして連絡が来たと分かったんだ?」

「渡されたのよ、ほんの数分前にある老人にね」


ある老人、その言葉はシウン...いや、農業都市でアカツキがナナを連れていってくれと頼まれた時に聞いた話に出てきた予言者のことではないか?と心の中でそう思う。


「あの老人が何者か分からないけれど、ようやく連絡が取れるのだから、急いでここまで来たの」

「さっきのはこの都市の理事長だろ?」

「そうね」

「じゃあアズーリにでも聞いとけよ」


そうであろう。この都市に来れるように手配したのはアズーリだ、ならはその理事長とも連絡を取る手段が有るのはずだ。


「無理ね。ここにあなた達を入れるように頼んだのも、私達が入れるように手配してくれたのもアズーリだけど、彼女もあいつも大体考えていることは同じ、常に私達には分からない何かを見て、考えているの」

「そんな回りくどい言い方じゃなくて、もっと分かりやすくお願いしたい」

「そうね...。考えていることが分からないのよ。アズーリには勿論頼んだ、だけど断られた。理由も教えてくれない、ただ手続きだけはちゃんと済ませてくれた。あの案内人さんにも聞いたわ、この都市のことを教えてやってくれとあいつに頼まれたのだから」


何でこの都市にそこまで関わってくるのだろう。言い方からして古い友人といった感じだが、魔獣専門の傭兵部隊であるこの人達が、この都市にずっと留まっている、それだけでもおかしいのではないか?魔獣の調査ならばたった三人で来るはずがない、本物の魔獣を見たシウンが抱くごく普通考えだ。



「あんたらは何がしたいんだ?」

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