<ハチャメチャなクラス>
ぎりぎりセーフ!!
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明日は早めに投稿します!
「「おぼろろろろろr....」」
「お前らは飲み過ぎだ」
シウン歓迎会では全員が集まり、深夜4時まで宴が行われていた。
途中参加でクレアとナナも加わり、最高潮に達した3時にはナルフリドまで振る舞われた。
当然の如くシウンは吐くまで飲み続け、アレットも相棒には負けられない!!と息巻いて飲み競べをした結果二人とも吐いた。
人気の無い路地で吐いてはいるが、いつ警備ロボットが出てくるか分からない。本来なら急ぎたいところなのだがバカ二人のせいで一向に前に進んでいない。
「クレアちゃん、シウン君はいつもああなの?」
「そうですね。ナルフリドが出てきたら吐くと思ってます」
「学習しないからね」
辛辣な言葉をシウンに浴びせる三人。
「アレットも飲み過ぎだよ」
「ガブィナ、これは相棒との戦い...。う...」
アレットは口を押さえて路地裏の隅でまた吐き出す。
「アレット!!走れば大丈夫だよ!!」
「僕を殺す気か!!」
腕を引っ張ってくるリナを払い、シウンの下に移動する。
「ねえアカっち、どうしてこうも皆は分かってくれないんだろう」
「そうだな。俺の仲間もだ」
下らない事で愚痴を溢す二人。
それを見ていた他の5組は何も言わずに移動を開始する。
「待って!!僕達を置いていくのかあ!!?」
「お前らは鬼か!!?悪魔か!!」
するとナナとガルナが振り返る。
「だってあんたら遅いから」
「時間が無いんだ、早くしろ」
その言葉にシウンとアレットは顔を合わせる。
「おい、聞いたか?俺達は大切じゃないってよ」
「何て奴らだ...。何で僕はあんな奴らと同じクラスに...」
二人の話し合いを無視した二人は何も言わずに歩き出した。
「おい!!」
「待つんだ!!」
必死に叫びながら二人を止めようとするが、歩みを止めようとはしない。
そこである異変に気付く。
「...おい、この機械音って...」
「あ...終わった」
シウンとアレットの後ろから店に向かう時に追いかけてきたロボットの移動する音が近付いてくる。
きっと二人が叫んだ事により音を感知されてしまったのだろう。
ガルナとナナは既に姿を消しており、シウンとアレットの二人だけが取り残される。
「走れ!!」
シウンの手を引っ張り全速力で駆け出すアレット。
「やめ...。揺らすな...」
酔いに対して耐性があるこちらの世界の住人であるアレットは少し休んだおかげで、走れるまでに回復したがシウンは現在も酔っているため、急に走り出すと吐き出してしまいそうだ。
「我慢しなって!!」
「駄目だ...。吐きそう...」
我慢だ...!!我慢しろ俺!!
必死に逃走をしているが、シウンという足枷のせいで移動速度は遅い。
走っているのに少しずつ機械音が近付いてくる。
もう駄目だ...。そう二人が諦めた時だった。
「とあああーー!!」
前方から凄まじいスピードでリナが走ってくる。
「やば!!アカっち伏せるよ!!」
アレットは歩みを止めて、その場でシウンと一緒に伏せる。
その瞬間、シウンの頭の上をひゅうん!!と風を切る音が聞こえた。
同時に後ろで何かが砕ける様な音が聞こえる。
「二人とも逃げるよ!!」
遅れてミクもやって来た。
「無理...僕も動けそうにない」
「全く仕方ないな~。ミクはシウン君を、私がアレットを背負うよ!!」
「分かった!」
自分より体重もあり背も高いシウンを普通に背負ったミクは爆走しているリナの後を追う。
「ショートカットーー!!」
民家の屋根にJUMP!!
ミクも同様に屋根へとジャンプすると、少し先に寮があり、手を掲げながら待っているクレア達が居た。
「シウン君、しっかり掴まっててね!!」
ようやくリナ追い付いたミクは、リナがジャンプすると同時に伸ばした手を掴む。
ぐいっと引っ張られながら空中に舞った四人。
やっと戻ってきた...と安堵した瞬間にミクが背負っていたシウンを三階の窓に思いっきり投げ込む。
「えい!!」
「ちょ...!!?」
続きを言う前に体を投げ出される。
寮を抜け出す時に使用したシウンとアレットの部屋のドアは開けっ放しだからガラスに激突するということは無いが、少しでもコントロールを出来なかったら壁に激突してしまう。それにも関わらず一切の躊躇もなく投げ込んだミクはストライク!!と小さくガッツポーズをする。
ミクの言った通りに見事にダイナミック帰宅に成功したが、恐怖感が部屋に到着しても消えない。
「怖い...。まじであいつの考えてることが分かんないよぉ...」
ミクに対してだが。
その後も何の問題もなく戻ってきた5組の生徒。
「今回は本当に危なかったね」
「俺の命がな」
「だけど誰もケガしなくて良かったよ」
「俺は心に大きな傷を負ったけどな」
シウンの言葉を無視して、アレットは今後の予定について話し出す。
「次は一週間後に開くけど、警備ロボットの対策も練らなきゃいけないね」
「ねえ聞いてる?俺の話を聞いてるかな?」
「本来なら簡単に逃げれたろ。お前らがナルフリドを飲み過ぎただけで」
このパターンは誰も俺の話を聞いていない→叫び散らす→怒られるだな。
何でこんな奴らが同じ組なんだろう?神様が居たら一発どころか百発殴ってやりたい。
「正論を言うね。だけど人生何事も息抜きが必要なんだよ」
「お前らは人生が息抜きだろう」
「....」
ガルナの返しに静まり返るアレット。
しかし何事も無かったかのようにこほんと咳払いをして話を続ける。
「今度は道を変えてみようか」
「おい。アレットの奴がガルナの話を無視したぞ」
「シウンやめなって。何も言い返せないんだから、しょうがないでしょ」
ぼそぼそと小さい声でやり取りをするシウンとナナ。
「相棒、後で大事な話があるんだけど良いかな?」
ニコニコと笑顔を浮かべるアレットにシウンは背筋が凍りつく。
その笑顔とともにある言葉が浮かんできたからだ。
『後で復讐するんだけどね』という言葉が。
「いや、待て待て。お前も俺の話を無視したからこれでおあいこだろ?」
「何のこと?」
「てめえ悪い記憶だけ消してんじゃねえ!!」
ナンノコトダロウナーと棒読みで言うアレット。
「まじでこのクラスの奴ら何なんだよぉ...」
「まあまあシウン君、そんな落ち込まないで」
「言っとくけどお前もだからな?どうして常識人かと思った奴ばっかり頭がおかしいんだよ...」
ミクに下敷きにされたり窓に投げ込まれたりされたシウンは自分を取り巻く環境がどれだけおかしいか考える。都合通りにならないと彫刻刀を取りだし脅してくる同居人、自分のことを下敷きにしたり投げるクラスメイト、自分を置いてきぼりにして逃走をした旅の仲間、こんな状況は滅多に無いだろう。
「私は普通だよ。か弱い乙女だからシウン君に助けて貰ったり、助けるために窓に投げたりしただけだよ?」
「助けるために窓に投げた?それはおかしいよなぁ!!?」
「おかしくないもん、必死だっただけです~」
こめかみをヒクヒクさせながらシウンは大声...ではなく小さな叫び声を上げる。
「じゃあストライクってなんだ!!?完全に遊んでたろ!?」
「あ..あれは。ジョーク、そうジョークだよ!!」
「お前はジョークで人を殺そうとするのか!!」
「落ち着いて!!ほら、終わりよければ全て良しって言うでしょ!?今こうしてここに居るんだし」
こいつらは完全に頭がおかしいよな。本当に何でこんなとこに来ちゃったんだろう...俺。
「アカっち、そこまでにしてあげてよ。明日は学校なんだし早く寝ないと」
現在時刻は午前5時、登校時間は少し遅めの9時で下校時間が午後7時だ。
今から寝ても、2~3時間程しか休息を取れないだろう。そう言われてみると確かに早く寝た方が良いだろう。既にガブィナはお腹が満たされ、睡魔に襲われ眠りについていた。
「ち...。じゃあ早く寝るぞ」
「じゃあね~。リナにラールスちゃん部屋に戻ろー」
「了解」
「ふふふ...。私はこのまま起きてても平気なんだけどね...」
「駄目ですー」
最初にミク達が部屋を出て、自室に戻っていく。
「ガブィナ、起きろ。寝るなら部屋に戻ってから寝ろ」
「えー...」
ガブィナを引きずりながらガルナ達も部屋に戻っていく。
「じゃあ私達も戻るよ」
ナナも後に続き、部屋を後にした。
「僕はちょっとトイレに...。アカっちは先に寝てて良いよ」
「そうするわ、俺も眠いし」
布団に入れた人形を取りだし、寝るための準備を開始する。
そこでクレアがまだ部屋に戻らない事に気付く。
「どうした?ナナが心配するぞ?」
「いえ...。私がお昼に話したい事があると言っていたことを覚えていますか?」
そういえばずっと悩んでたな。
「良いよ、アレットも居ないし少しなら話が聞けるから」
「そうですか。実は...」
「たっだいまー!!相棒、待っててくれたかい?そうか、ありがとう!!」
なんと言うタイミングの悪さ。
「お前は早すぎだろ」
「いや、途中で引っ込んだから」
「途中で引っ込むもんなの?」
うん、なんか引っ込んだと言いながらベッドの上を整理しだすアレット。
クレアは何も言わずに下を向いている。
「ごめんな、明日はちゃんと時間取るからその時に言ってくれないか?」
「はい、じゃあおやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
バタンと扉が閉まり、アレットの方を見ると首を傾げていた。
「どうかした?」
「さあ、だけどお前のタイミングの悪さは極みがかってたよ」
「そんなー褒めないでよ~」
褒めてないんだよなぁ...。
「ほらさっさとしないと電気消すぞ」
「待って!本が散らかってるから、あと十分くらい頂戴!!」
シウンは呆れたまま、電気を消そうとしていた手を下げる。
何の本なんだろうな、とこっそりと覗きこむ。
『あの日僕と君は』
『ドM王子とドS王妃』
『小さい子は正義』
どれもこれも濃すぎる内容の本だった。
「お前の頭の中どうなってんの?」
「え?」
「いやその本のタイトルから察する結構上級者向けの本だな~っと」
「ああ、どれもこれも委員長から進められたんだよ。意外と面白いよ?」
マジでか...。やっぱりあの巨乳委員長も結構やばい系か...。
ああいうのは真面目系と決まってるのに、本当にどうかしてる。
「特にオススメするのはドM王子とドS王妃かな。よくわからないけどすんごいよ」
「お前は内容を理解出来てる?てかちゃんと読んでるのか?」
「最初は結構真面目に読んでたけど途中からは感じて読んでた」
うん。考えるな、感じろ的なことなんだろうけどその本の中身を読んでると色々と感じるの意味合いが変わっていくんだよな...。
「そうか、あんまり人前で読むことはオススメしないけど面白いなら良いんだ」
「あとはこの小さい子は正義って本はあんまり分かんないだよね。小さな女の子を眼鏡を掛けた中年の男性が話しかけてからストーリーが始まるんだけど...」
それは結構やばめの本だろ。中年の男性が小さな女の子に話し掛けたとか事案が発生するぞ。
「早く片付けろよー」
「大丈夫、この人妻任侠劇ってやつを仕舞えば...」
本当に大丈夫か?大分不適切な表現の本まで読んでるのか。
こいつはバカ故に純粋とかそういうことだろうか?だとしたらあの委員長は何を教え込もうとしてるんだ...
シウンの心の中でどんどん委員長への疑問が募っていく。
「はい!!準備オッケー、電気消して良いよ」
「じゃなー。おやすみー」
「おやすみアカっち」
部屋の灯りが消える。
疲れていたのかシウンは布団の中に入るとあっという間に睡魔に襲われて今日1日の事を振り返ることもなく
眠りについた。